Secret

くちづけ


その校舎がもう来年取り壊されてしまう。

いつも待ち合わせは学校の玄関だった。
覚えてる?
私は覚えてるよ。
あなたの話した言葉ひとつだって忘れることなんてない。


「 あの日、本当は2年待って欲しいと言うつもりだった。
 そしておそらく君は2年待ってくれたことだろう。
 でも、 俺は、あの時ここで君を抱きしめてしまいたかった。
 そうすれば君は俺のものになる。
 でもそうすることできみから離れられなくなる自分も怖かった。
 いろんな出会いがある中で、俺の存在があるというだけで、
 君のこれからの出会いを俺が縛り付けることで壊したくなかった。
 だから・・君を傷つけ置き去りにした。」


あの、浜辺で告白した時
まだ16歳と15歳だった2人は
めぐりめぐって
27歳と26歳でようやく
お互いの気持ちを確かめ合った


「俺、きみとは必ずまた会えると思ってた。
 絶対切れることはないと思ってた。 
 忘れないで、俺がお前をずっと愛していたこと。」


玄関の階段でふたりは並んで座って
お互いの手を握り
頭を寄せて
耳元にくちづけをした
まるでおさないふたりがするような
ふるえるようなくちづけだった


あの日からやりなおす
遠回りしたふたりの恋











© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: