ショート5 5



次の日、火曜日の朝。私は予定より一時間早い、5時にキッチンへついた。

「うーん。早いのはいいけど、一人って言うのもなんだよな・・・。」

それでも材料や用具を準備することはできる。・・時々落としそうになるけれど。

それにしても、私は卵すら割れない。いつもからが1/5も入ってしまうし。

「あちゃ・・また失敗だ。」これで5回目。

予備に、自分のお金で買っていた卵を10個中5個もわってしまったのだ。

「もうちょっと軽く割ればいいんじゃないか?ドアをノックする程度に」

そう声がして、その通りにやってみた。するとカラが一つも入っていなくなった。

「うわぁ!できた・・・。」そう喜んでいるのもつかの間。

教えてくれた人物、をしりたくて、振り向いて確認した。

「だれっ!?」髪が短いので男なのは分かった。だけど、光の関係で背の高さも、顔も見えない。

「暗いから電気つけろよ。あかね」その人物とは、慎悟くんだった。

「・・・ありがとう」慎悟くんが笑って見せたから、私ははずかしてうつむいてしまった。

「それにしても・・そんなこともできないなんてガキだな。」

突拍子もないことを言い出すので、怒るどころかふらついてしまった。

「それくらいでこけるって馬鹿じゃないか?動揺しすぎ。」

次々と言葉を加えていく

「そんなんで料理できるのか?」


「 そんなこといわないで! 」 

そのとき、 ガッシャン という音がどこからか出た。

「私だって、頑張ってやってるんだから。そんなひどいこといわないで・・。」

その音の発信源は、私の足元――盛り付け用に使おうと思った持参のお皿だった。

ガラスのかけらが、私の足に刺さって、赤い液体が染み出してくる・・。


「だから俺が来たんだろ?」

そういって、床に落ちたガラスの破片を丁寧にとる。もちろん、私に刺さった痛々しいものも・・。

「え・・?」痛みと、驚きで、その一言しか声が出ない。

「別に、ただ少し手伝うだけだからな。」そういって私と正反対の方向に向く。

「・・・変なの」そうボソッとつぶやく私は、慎悟くんがどんな気持ちで後ろを向いているのかは、分からなかった。

だけど、慎悟くんの優しさは、しっかり心に入っていった。

「ねぇ、でもなんでこんなに朝早くに?」

「それは・・・目が覚めてたらこの時間だった。」

「でも!・・何か隠してない?」

「・・わかったよ。すべて話す。」

「・・・うん」

私はゴクリと息を呑んだ。でも、息はどうやっても飲むものじゃないとは思うけれど。

「俺たち、両親失ってるんだよ。だから、なんでも俺たちでこなしてたんだ。」

ココまではしっている。昨日誠悟くんが話してくれたから。

「・・で、続きは?」

「せかすなよ」少し笑って、続ける。

「それでさ、俺の兄貴・・・誠悟が、やけに過保護になってさ。何でも言うこときいてくれてんの」

「それっていいことじゃないの?」昨日のヤマ○キパンだって、その思いがあったからだと思う。

「だけどさ・・・」

「・・だけど、どうかしたの?」

「兄貴、俺に気を使ってるんじゃないかって思うんだ。親がいないからって、俺に苦労させまい、みたいなね?

 だから、逆に俺が兄貴を苦労させまいって思った。だから、人のためになることをしようって思った。」

「・・・・・・・・でもさ、それを私にしていいの?誠悟君にしないで。」

「・・いや、それはそうなんだけど。なんだか、あかねも苦労しているように見えたから」

「慎悟くん・・。」

「だから、無理するな。」

「うん。ありがとう」

実際、慎悟くんの言葉がすべて飲み込めたわけじゃなかった。だけど、一生懸命さは、すごく伝わってきた。

「じゃ、続き始めるぞ」

それから約一時間。私と慎悟くんは他の人たちに見られない中で、ひっそりと練習していた。

その間、私は慎悟くんのことを「守ってあげなきゃ」なんて、思ってしまった。。


しずかだったけど、それは私にとってすごく素敵ない時間だった。


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