トイプー3人!わんこWORLD!と他色々!

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September 1, 2006
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 ヴェルジェ・ファタリ-タが船上で目にしたのは、ただ途轍もなく広い海。

十六になるまで村を一歩も出たことのないヴェルジェが初めて見た海。

船室に戻った彼女は深い溜め息をつきながら腰を下ろし、身に纏っていた朱鷺色(淡いピンク)のローブから顔を出した。

判ってはいたのだが、がっかりしたのだ。

彼女にあらゆる知識を教えてくれた教育係、件、占い師であるルイ・ジュヌガンが

『この星は古、宇宙から見ると蒼く瑠璃色に見え、とても美しかったそうです。

EARTH

地上から見るこの星が蒼いのは、太陽の光りが大気を通過する時に散乱した波長が短くなり蒼く見えるそうです。

ですが私にはこの星を取り巻いていた、七つの海の蒼さだったのではと思えるのです。

その海にはコ-ラル、大地には緑の木々が旧人類の汚し、多く出した二酸化炭素を浄化していたそうです。

その珊瑚礁もそれはとても美しかったと聞きます。

今ではそのコ-ラルの欠片が僅かに旧遺跡後に発掘される程度ですが』と教えてくれた。

しかし彼女の目に移った海は蒼いラピスラズリの色等、何処にも無く、ただ汚れ、腐臭の漂うくすんだバ-ントシェンナ。

それはまさしく混沌(カオス)だった。船旅はまだ始まったばかりだと言うのに、何故か心が憂鬱に囚われた。

海に魚貝類は僅かながら生息しているものの、この海に生育出来るよう、毒性の強い海の怪物と言う名の生き物へと進化した。

勿論それらを食す事は出来ない。ルイが言った『浄化するには汚染された年月の三倍以上の年月がかかるでしょう』と。

ヴェルジェは残念でならなかった。一目、ラピスラズリのような美しい色の海、そして珊瑚礁と言う物を見てみたかった。

それがヴェルジェの溜め息の理由だろう。

そんなヴェルジェの気持ちを察してか、肩にちょこんと寄り添い、

乗っかっている掌サイズの愛玩動物(ラブリートイ)のシュシュが『キュン』と小さな声で鳴き、

ヴェルジェの頬をペロリと舐めた。耳と尻尾は狐、毛並はアンゴラの様に柔らかく色はヴェ-ジュで、背中にはグレ-の線模様があり、

目はアーモンド形でクリクリの真黒、おでこには洲リス模様まである。しゅしゅ

見るからに名前の通り、可愛さ炸裂の出で立ちだ。

一年前、木から落ち怪我をしているシュシュを、ヴェルジェが助けたのがきっかけで、

それ以来シュシュは彼女の懐か肩にいるのがお気に入りだ。

「ヴェルジェ様、甲板にダンがいました。ヴェルジェ様と一緒だって言ったら、逢いたがっています」

まだ声変わりのしていない男の子が目をキラキラさせ、ヴェルジェの手を引き、甲板に連れ出した。

彼女より五つ年下のア-ロン・クレッツはヴェルジェの付き人役だ。

ヴェルジェの姿を見たダンは同じ村出身で、この船の船員だ。

ダンは嬉しそうに彼女の両手を取ると、上下におもむろに振って握手した。

「ダンの元気な姿が見る事が出来て嬉しいわ」vierge

ヴェルジェも嬉しそうに応えた。

「村は変わりなく?」

焼けた顔に白い歯を見せた。見るからに海の男らしい出で立ちだ。

「ええ、皆平穏に。ラディさん家に先月女の子が最近産まれましたよ。」

「そうですか。良かった」ダンはまた白い歯を見せ、言葉を続けた。

「ここは癒しもなんも無くって・・・あれ、ぜひ聞かせ下さいよ」

ダンの言葉に、ヴェルジェは少し恥ずかしそうにしながらも要望に応えた。

ヴェルジェは見た目とは想像がつかぬほど軽やかに甲板の台の上にひょいと飛ぶように座ると、持参している竪琴の音を披露した。

膝に乗っかる程の大きさの竪琴は、やはりルイの手解きによるものだが、彼女の演奏はかなりの腕前だ。

その竪琴は華奢なヴェルジェの為に、武器を隠し持てる作りにもなっている。

殺風景な甲板に一時の優美な音色が響き、乗員乗客が皆、その清らかな響きに聞き入った。

風に揺れる彼女の長い髪が夕日に映え、亜麻色の輝きがア-ロンの目により一層美しさが増して見えた。

ア-ロンが聞き惚れ?いや、見ほれながら甲板に腰を下ろすと、隣にダンがドサっと腰を下ろしてきた。

「なぁア-ロン、なんでまたヴェルジェ様は旅に出られる事になったんだ?」

「ヴェルジェ様は先月、十六歳の誕生日を迎えられてからというもの、胸を苦しまれたり、妙な夢に魘されるらしくて・・・

なんでも大巫女様が言うにはその理由を知る"アポストロ"って男がデルガ-ド大陸のシュッド・ルブルムにいるから、その人を訪ねるようにと言われたんだ」

「苦しまれる?・・村の薬草では効かないのか?」

「詳しくは判らない・・・けど、病気とかではないらしい」

二人は少しの間、沈黙した。

「名前だけで探せるのか?一口に言ってもデルガードの大陸も、シュッドの国も、村とは比べ物にならないほどかなりの広さだぞ。

それにお供がお前だけってのは・・なぜリュクスじゃなくお前なんだ?」

ダンの訝る表情と言葉に、ア-ロンは意気込んで身を乗り出し言葉を返した。

「大巫女様がこの俺を選んだんだ!リュクスじゃなくこの俺に『ヴェルジェ様の力になってやってくれ』って」

「そうムキになるな・・ったくそういうところが、ガキだっつうんだよ・・・」

ダンは少々呆れた顔をしながらア-ロンの肩を叩いた。

ダンが言ったリュクスとは、同じ村の青年で、ヴェルジェの幼馴染で、弓の名手だ。

「大丈夫。俺にはもしもの時の手段があるんだ」

アーロンが得意げに言う。

ダンが見たアーロンはいかにも十歳そこそこのやんちゃ盛りの子供の反応だ。それがダンの心を不安にした。

「いいかア-ロン。これから行くデルガ-ド大陸はお前が思う程甘くはないぞ。お前はクラウト村しか知らない。

他所(よそ)はクラウト村のように、良い人ばかりじゃないんだ。お前の親父さんもそれで随分苦労していた」

「そんな事くらい判ってるよ・・でも俺・・父ちゃんに逢える気がするんだ・・」

ア-ロンは膝を抱えながら不安と期待の入り交じる表情を眉間に見え隠れさせた。

ア-ロンの父は彼が八歳の時、『大きな仕事をするから』とア-ロンを村の者に頼み、未だに帰ってはこない。ダンは『逢えるといいな』と言うようにア-ロンの肩に手を回した。

「しかしあの大巫女様や、占い師のルイがヴェルジェ様の身体のことが判らないってのに、なんでその男になら判るんだ?」

「そこなんだよ。俺にも理解できないんだ・・・でもあの二人が言うんだ。何かあるんだよ・・きっと」

「そうだな」

 ヴェルジェが住んでいた村はプリエ-ト大陸にある。この大陸は幾つもの小さな集落の集まりで成っており、その一つ、クラウト村という。

ディ-オの怒りが起こった、もっと以前から歴史のある村で、そこでしか取れない数多くの薬草を独自の手法で薬等を作っている村だ。

そして何より代々巫女族として神の恩恵を得てきた民だ。

クラウト村、巫女族の長は大巫女様で勿論女性だ。その大巫女の一人娘がヴェルジェなのだ。

ヴェルジェ達が住んでいるプリエ-ト大陸から西にあるデルガ-ド大陸に行くには船で横断するしかない。

彼女達が向かうデルガ-ド大陸は、この星で一番大きな大陸で比較的細長い地形をし、大きく五つの国に分かれ、東西南北と中央、そしてそれを指す色で表わされていた。

東の国がエスト・カレウム(東の青い国)  西はアルブム・オ-ヴェスト(西の白い国)

南はシュッド・ルブルム(南の赤い国)   北がノ-ル・シュバルツ(北の黒い国)

そして中央のセンタ・アマリ-ジョ(中央の黄色の国)の五つの国だ。

船が到着するのは東に位置するエスト・カレウムで、この国のみ王族による支配管轄がなく、良くも悪くも自由奔放な国だった。

 ヴェルジェ達は数日間の船旅を終え、夕方その波止場に到着した。

二人はダンに別れを告げ、手を振りその場を後にし、エストの地を歩き始めた。

「ヴェルジェ様、さっきダンに何言ってたんですか?」

「明日の午後からハリケ-ンが来るから、折り返しの船出は伸ばした方がいいって言ったの。風が違うでしょ?」

ヴェルジェの言葉に、ア-ロンは首をかしげながらも頷いてみせた。

 二人はエスト・カレウムの賑やかな町並に驚いた。インディアンレッドのレンガを敷きつめた通りは、両脇に沢山の店が軒を並べ、行き交う人々も多い。

この大陸の者は、ほとんどが国を指す色のローブを羽織っている。

よって勿論、エストの国の色、青いローブの者が一番多く伺えるが、ヴェルジェのように違う色のローブを羽織っている者は、一目で他国の者と見てとれる。

 町並を中程まで進んだ二人は水場で足を止め、ヴェルジェ達の荷を積んだ白馬のペガ-ズに水を飲ませた。シュシュも同じように水を飲み、喉を潤した。

「ヴェルジェ様、俺、よさそうな宿探してきます。少しの間、ここで休んでいて下さい。

直ぐ戻りますから」

ア-ロンは、胸を押さえ苦しそうにしているヴェルジェを気遣うように言うと、颯爽と走って行った。

ヴェルジェは愛馬のペガ-ズを労るように頬を寄せると、レンガのベンチに腰かけた。足早に行き交う人並をぼんやり眺め、異国の空気の違いを肌で感じた。

胸の痛みが初めての異国の風に、ざわめきを感じる。

 次第に日も沈み始め、店先には灯が灯されだした。

暫くその場にいたのだが、ア-ロンは一行に戻る気配がなかった。彼の『直ぐ戻る』と言う時間の長さをヴェルジェは知っている。

不安になり、気掛かりな思いをペガ-ズやシュシュに話かけながら水場の周辺をうろつき、暫し気を紛らせたのだがやはり彼は戻ってこなかった。

ダンが『ベベド-ルと言う酒場は情報の行き交う酒場だから、なにか手掛かりがあるかも知れない』と言った言葉を思いだし、

もしやと思ったヴェルジェはア-ロンが進んで行った方向へと入れ違わぬよう、ゆっくり足を進めた。

『カオス2』へ・・・・To be continued

このお話は私が作成したものなので、勝手に他へ流したり、使用するのは絶対止めてね。
★初めから読むなら1 朱鷺色の章  1  Prologue  の扉へどうぞ★

★続きを読むなら 1  『カオス3』 1朱鷺色の章(巡合)  へどうぞ★ 





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Last updated  October 5, 2006 03:45:34 AM
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franfran2006 @ Re:秋 彼岸(09/20) あはは…私もそれたまにやってしまいます。…
☆ゆっきー0607☆ @ Re:秋 彼岸(09/20) お部屋が模様替えされて秋らしくなりまし…
chocomama @ Re:ムーンライト藤原京(09/19) なんとも幻想的な光の回廊~~ 真っ暗な…
あきても @ Re:ムーンライト藤原京(09/19) 昔習った歴史は今のと少し違うでしょうね…
serix @ chocomama★さんへ♪ おはこんばんちわんこ!U^ェ^U! あり…
serix @ franfran2006さん★へ♪ おはこんばんちわんこ!U^ェ^U! あり…
chocomama @ Re:春・さくらコテージ♪(09/18) コテージ写真ヤッター(*≧∀≦)ノ コテージもプー…
franfran2006 @ Re:春・さくらコテージ♪(09/18) 当たり前に楽しめてよかったですね。 …

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