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ごみかきのエピソード
ごみかきのエピソード
<作文>
ごみかきが書く喜びを知ったのは小学校2年生の頃だと思う。その1年間の作文が手元に残っている。担任の先生がすべてファイルしておいてくれたのだ。その文面を読むとどうやら、1年生の頃同じクラスのM君にいじめられていたようだった。仲良しだったことしか記憶にないのだが・・・。人間都合の悪いことは忘れてしまうようだ。
2年生になって最初の作文に「M君を泣かした」と得意げに書いていた。多分誉められると思っていたのだろう。ところが「
けんかをしてはいけませんよ
」と赤いペンで添削してあった。相当がっかりしたと思う。しかしその後の作文を読むとどんどん上手になってたくさんのハナマルをいただいている。きっとケンカに向いていた情熱が作文や他の勉強に変わったのだね。実際通信簿の成績は1年生の時とは雲泥の差だった。M君と仲良しになったのもそういうことを経てのことだったのだ。
せっかく仲良しになったM君とは3年生に進級するときにクラスが変わり、それっきりになってしまった。2年生の時に剣道の道場に通った(嫌いだった)おかげでそっちの友好関係が忙しくなっていたからだと思う。
<剣道>
剣道の道場に通い始めたきっかけは親の強制だった。体が丈夫になるようにということだった。たしか、柔道と剣道を見学させられて「
どっちにする
?」って聞かれた記憶がある。どっちも嫌だったが、割合痛くなさそうな方を選んだ。見るからに痛そうな柔道の受身の練習は絶対したくないと思った。
ところが剣道もかなり痛くて何度も泣いた。防具の面の頭頂部はわりとやわな素材でできていて先生とのかかり稽古のときに竹刀でそこを叩かれる。ジーンと体の芯まで嫌な痛みが走る。何度も何度も叩かれる。正直いじめられていると思った。
泣きながら稽古した。
そんなに辛い思いをしたはずなのに中学生になって初段をとるまで続けたのは今の自分には考えられない。
多分耐えられたのは稽古仲間がいたからだと思う。道場には市内の方々から少年剣士が集まるので学校とは別のつながりができる。
ケンカは勝ったり負けたりだが、剣道ははっきり序列ができる。勝てない奴には勝てないし、勝てるやつにはいつも勝てる。だから良くないことなのだが、剣道が弱いやつをバカにしてしまう。
たしか小学校も卒業する頃にいつも大会で優勝する猛者H君に「ごみかき君と試合するときが一番やりにくい」と言われてハッとした。彼は自分のような弱っちい人間に対しても敬意のようなものを持って望んでいる。それをH君に教わってから、自分より弱いやつでもバカにしなくなった。
剣道に興味が無くなったのはその時からだったかもしれない。
<野球>
剣道の猛者H君は剣道の大将ばかりでなくガキ大将でもあった。家がごみかきの近所だったため、彼らのグループとよく行動を共にした。
野球のチームをつくって一緒にやっていたのだが、市の大会に出ても成績は芳しくなかった。逆に毎年優勝するチームがあってうまい奴はどんどんそっちのチームに移籍してしまう。ごみかきもとうとうH君を裏切って入団テストを受けてしまった。その事は今でも悔やんでいる。
だがテストには合格した。ふるいにかけてダメなやつは落としていくというクールなやり方に新鮮さを感じたことは事実だった。合理的で効率の良い練習方法もごみかきにはとても楽しく思えた。選ばれた人間という仲間意識も・・・。
ある時、中学生の先輩達のバッティングピッチャーをやらされた時、空振りさせてみようということを思いついた。なんと、それがうまくいってしまった。今考えると恐ろしいことをしたものだと思う。ところが先輩方に袋叩きにされることもなく、むしろ監督が今度の大会のピッチャーとして使ってみようと大抜擢をしたのだ。あせった。自分が市内では有名な常勝チームのエース?といってもBチームだったのだが・・・。1つの球団につき2チームの参加登録が許される。ところが監督は何を考えたのかごみかき達二軍チームをAチームで登録してしまった。あせりにあせった。プレッシャー大。
大会当日は夏休みでとても暑い日だった。ごみかきはプレッシャーと戦いながら投げた。しかし、自慢の剛速球もストライクに入らない。あせった。しかも暑い。バテバテだった。そして弱気になりスピードを殺してストライクを取りにいったところを滅多打ちにされた。
あぁぁぁぁぁぁぁ
。チームの看板を汚した恥ずかしさに打ちのめされた。だが、見方打線はよく援護してくれた。ごみかきも4番バッターとしてホームランを含めてよく打った。
結果、正確なスコアはよく覚えていないが、30対28みたいな感じで惜敗した。あ、あなた今笑ったでしょ。いいのです。笑ってくださいまし。
ちなみにBチーム(本来はAチーム)はなんとガキ大将H君のチームと当たってしまったものの、順調に勝利を重ねいつものように優勝した。
<人に言えない悩み>
ごみかきのそういう小学生時代の裏で人に言えない悩みがあった。
寝小便である。毎晩寝るのが怖かった。またやってしまうのではないかと・・・。
やってしまうときはたいがい夢の中に便器が出てくる。
「あ~、すっきりした。だけど、なんだか
変
だなぁ」
目を覚ます。やっちゃった。
ガーン
。
母の鬼のような形相が目に浮かぶ。
夜が明けて欲しくない。朝になって欲しくない。
父はそういうごみかきを柱に縛り付けて、マッチの
火をフッと消し、まだ熱さの残っているそれを丸出しの尻に押しつけた。
「
熱い~アチチ~熱いよ~
」
そういう生活が中学生になるまで続いた。
6年生の時に行った2泊3日の日光への移動教室。
もちろんやりましたとも!
あの時が一番つらかったかもしれない。
*医学的には夜尿症は叱ると逆効果で余計悪化するらしい。
念のため。
<かなり恥ずかしい思い出>
幼稚園児の頃に話はさかのぼる。
その日、大の方をもよおしてしょうがなかったごみかきだったが、なんとか家につくまで間に合うだろうと帰りのスクールバスに乗り込んだ。ところが、乗り込んだとたんにモーレツな便意に襲われ、不覚にもアッという間に漏らしてしまった。しかも腹がくだり気味であったため、大変なことになってしまった。(食事中の方、申しわけありません)
その瞬間のことはあまりよく覚えていなくて、とにかくバスをすぐに降りて担任のS先生(かなりの美女)に後の面倒をみてもらったことだけは覚えている。
その時のことを母はこう言った。
「あんた、あの時
女もののパンツ
はいて帰ってきたからビックリしたわよ。」
そう、先生はご自分のパンツをごみかきにはかせていたのだった。
そんなS先生はごみかきが卒園後間もなくご結婚され、結婚式の写真を送ってきてくださった。
その写真にはとても幸せそうな表情でケーキをカットするあいかわらず美しい先生が写っていた。
「よかったね。先生。」
ごみかきは心の底からそう思った。
<父と自転車>
ごみかきが幼稚園に入園する前のこと。
その日、父が自転車の乗り方(補助輪なし)を教えてくれた。
ごみかきは父の
「
スピードを出せば倒れないよ
」
という言葉を信じてモーレツに自転車のスピードを上げた。
すると家の壁が近づいてくるではないか。
しまったぁ。
曲がり方を教わってなかったぁ
。
あわわわわわわわ
。
ドデーン
。
何とか壁への激突を避けたが転んだ。
そんな父も今はもう他界している。
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