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2014年01月25日
デンキノベル 2-2
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[page][bg classic-classroom]
どうして彼女を見るようになったのか、全然思い出せ
ない。教室で、百合は大抵真面目な顔をして、お勉強
していた。自慢じゃないが、僕は寝ていた。死んでいた。
勉強全然わからん。とか、言いながら完璧にケイラクヒ
コーを突かれていた。ユアーショックだった。僕はウルト
ラマンになりたかった。仮面ライダーになりたかった。
というか、勉強のない国へ行きたかった。将来は、絶望
的だったけど、肉体労働すりゃ生きていけるだろうと思っ
らない。僕はこれから数ヶ月後、おそろしく勉強すること
になる。結果はどうあれ、人生で死ぬほど勉強して、彼
女と同じ学校へ行くことを本当に夢見ていた。
[page][bg classic-school-passage]
恋って、すごい――。
[page][bg library]
図書室なんて、絶対入りたくもなかったのに、百合が
そこで読書をしているから、僕まで、難しい漢字だらけ
の本を読んでる。ウルトラバカコンテストがあったら、
絶対に一番とる自信があったけど、たくさん本を読んで
る内に、俺ってわりとこういうタイプだったのかな、と誤
を聞きながらの帰り道――別にそんなに大したことじゃ
ないんだ。別にむずかしいことじゃないんだ。頭がよく
なくても、きちんとやれば色んなことって出来るんだ。
ただ、彼女の読書の話は、いつでも丁寧で、要点をき
ちんと抑え、キャラクターの説明、ストーリーも分かり易
場から始まり、後は大抵、百合に聞かれて答えた。
[page][bgm none]
[bg black][text-color white]
――好きだな、と初めて思った。
[page]
[bgm yokaze]
「わたしね、引っ越しする。」
「え?」
唐突な、彼女の言葉は――。
僕には理解不可能で・・。
[page][se mobile-suit1]
その時、僕は足に力が入らないのに気付いた。花が
はらはらと花びらを開くように、百合の唇を見つめたま
ま、僕の思考が殆ど途切れてる。シェイクスピアの夢
幻劇のように記憶がぼんやりとしてる。乗客が、動物
の顔にも見えた。ここは動物園のような気も、いまじゃ、
する。百合は、目を伏せ、一週間後に転向することを、
僕に告げた。でも、ちょっと待って、ちょっと待ってくれよ。
一昨日まで、いや、昨日だってそんな話はなかった、唐
突すぎる。何があったんだよ。どうしてそうなんだよ、と
僕は言った。すごく混乱していた。受験勉強もしてた。
図書室で一緒に本を読んだ。そういう生活が、ずっと続
くと、勝手な僕は、思っていた――。
[page][bg black]
風が吹いてる・・・。
夜の深さが――葉脈を伝って、
潤い、僕の身体に染みこんでゆく・・・。
循環する。月が満ち――てゆく・・
風が無性に波を、感じさせる――。
紫の花が、ほら、咲いてる・・。
あれは、本当は白い花なんだけど・・・。
月の色に染まっ・・て――。
あの暗闇の中で、まったくと言って、
劇的な変化をする。あれは・・、
百合だね。まっしろな――百合・・。
なんてきれいな――花だろう。
そしてなんてきれいな・・・名前――。
[page]
彼女のいない卒業式――
彼女のいない高校・・・
[page][bgm intermission]
でも、もう我慢できない――。
[page][bg downtown-evening]
彼女とは、相変わらず続いてる。夏休み、冬休み、
彼女は僕に会いにきた。「全然、変わらないよ・・」と
彼女は言った。でもね、百合。そんなに単純なことか
な。 電車で数時間もかけなきゃ来られない。通う高
校も違う。毎日顔も合わせない。たまに電話はする。
毎日メールする。でも、会いたい。会って――また、話
をしたい。こんな奴、好きにならなきゃよかったな、と
思う。百合、それが本当だよ。でも、嫌いになれない。
彼女が来た帰り際の、さみしそうな顔を見ると、しっか
りしなきゃな、と思う。心配かけまいと、ありがと、また
来るね、と言う百合を見てたら――。
[page][bgm none][bgm clapping-long]
百合――。
[page]
彼女が服飾のクラブに進んで、その服が、どういう経
緯かは不明だけど、とある著名なデザイナーの目に止
まって、ちょうどその人のファッションを展示しているデ
パートの一角に百合の服が飾られてる。今日は、その
最終日。僕はメールで場所や、日時を知っていたけど、
何だこれはって思うくらい猛烈な拍手で、コンサートに
突然迷い込んだ少年みたいに、頭がくらくらした。デパ
ートの9階。確かこっちの方だと、およおよしながら歩
いていったら、これだ。ふっと――拍手の真ん中にい
るのが、百合だと気付いた。どういうことだ、と思う。
[page]
「夢なんです・・・」
と、百合はマイク越しに喋った。
「服をデザインするとか、
それで有名になろうとかじゃなくて、
大好きな人に、――
着てもらいたい・・・。」
[page][bgm starlight]
百合が、僕に気付いた――。
[page][bgm none]
微笑む、百合・・・・・・。
[page][bg downtown-night]
僕は、少し、とぼとぼと歩いた。サプライズというつも
りで、わざわざ来たんだけど、なんだか、百合がすごい
ことをやってるらしいぞ、ということを知って、一体自分
は何をしているのかと思って。デパートから、出て、とぼ
とぼと、歩いて、まったく見知らぬ町を百合と手をつない
で歩く。「いつも、いい時に、箱崎君はいる。」なんて、こ
いつの優しい発言に、心底落ち込んで。「いつも、すま
ん。正直、来なきゃよかったな、と思う。」「どうして?」
どうして、ってお前――あそこは、お前のキラキラしてい
る場所じゃないか。俺はどうだ。俺は一体何をしてた。
いや、なんだか、こいつにはずっと勝てないなという気
がして。本当に俺はこいつの彼氏なのか、と思えて。
[page][bg cloudy-sky-night]
「今でも、あたしのこと好き?」
[page][bg moonlight]
「どうして?」
[page][bgm daily-life]
百合は、立ち止まり、すごく淋しそうな顔をした。
「本当は、すごく淋しいの。」
「いや、俺だって――」
「そうじゃなくて・・、毎日会わないでしょ。顔だって、
たまに送ってくれる写真だけ。電話しても、毎日かけ
たら、面倒くさく思われるでしょ。」
「お前、馬鹿か。」
と僕は言ってから、
百合の目が泣きそうになったので、
あわてて、いや、違うんだと言った。
「恋人だろ。」
[page][bgm none]
うん――。
[page][bg none]
「むしろ、ずっと俺は百合に感謝してるんだよ。知って
るだろ。俺はウルトラバカなんだよ。勉強なんか、いま
でこそちゃんとするけどさ、百合とこんな風になってなか
ったら、今頃、マジで十五歳で就職してるか、スポーツ特
待生! いや、間違いないね。間違いない。じゃなかった
ら、近隣でも有名な大馬鹿高校に入って、煙草とシンナ
ーを覚えてきてしまう。いや、間違いないね、間違いない。
本も読んでない。百合がいなかったら、クラシックも聴いて
ない。ショパンと、モーツアルトと、チャイコフスキーの違い
もわからない。いや、間違いないね、間違いない。それも
これも、全部、百合のおかげだ。時々思うよ。でもだから、
時々すごく自分とお前が釣り合ってないように思うよ。」
[page][bgm yokaze]
「馬鹿ね・・・。」
[page]
「箱崎君は、ちょっと正直すぎるだけよ。本当は、大体
みんなそうなのよ。勉強が好きな人なんて、まず、いな
いし――大体、・・・大体、変よ。いつも、あたしが言いた
いこと、あなたが言うんだから――ねえ、箱崎君、実は
ね、また、あっちに帰れそうなの・・・今度は、もうお父さ
んやお母さんが何言っても、何処へも行かない。絶対
行かない。本当よ。・・ずっと一緒にいたい。キスしたい。
一緒に笑ったり、泣いたりしたい。鬱陶しいかもしれな
いけど、毎日顔が見たい。会って、話をしたい・・・これ、
さっきの会場で飾ってた服。箱崎君に会ってたら渡そう
と思ってた。絶対似合う。似合うと思って、作ったの。
その――恥ずかしいけど、着て。」
[page]
変な服だった――。
[page][bgm none]
袋を開けた瞬間に――
ちょっと後悔した・・・
[page][bgm daily-life]
スケスケのブラアアアック――。
[page]
おまいさん、あっしは、
マイケルジャクソンと違うよ。
[page]
「と、それはともかく――」
と、誤魔化しながら、袋に戻した。
すげえ、がさごそいわせながら戻した。
「百合、・・・」
と、僕は彼女の顔を見つめた。
ものすげえ無理矢理、両頬をおさえ、
ものすげえ無理矢理に、
話をそらしながら、僕は言った。
[page]
おまいさん、あっしは、
マイケルジャクソンと違うよ。
[page]
――違う。
[page]
「おかえり。」
[page]
百合は僕の手に頬ずりしながら・・、
「ただいま。」
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最終更新日 2014年01月25日 16時27分39秒
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