「めっちゃピンぼけ」の書評などマスメ紹介
２００５年６月号＝５月１５日発売、発行（株）イグザミナー》
文芸には色んな形がある。現実と虚構のボーダレス化
がますます進む状況のなかで、虚構はいったい何をなし
えるのか。実在の戦場カメラマン「不肖・宮嶋」こと宮
嶋茂樹氏をモデルにしたこの小説は、そこにひとつの答
えを提示した挑戦的な作品である。
物語は、小説家志望の元新聞記者梅川が、十二歳の少
女とともに焼身自殺をした旧友の戦場カメラマン田辺の
死の真相を追っていくという設定で始まる。冒頭で戦場
カメラマンの死を描くことで、すべては虚構だと読者は
いきなり宣言されてしまう。何しろ、実在の宮嶋氏はま
だ生きている。死と隣り合わせの仕事ではあるが、少な
くとも、少女と焼身自殺などしないだろう。物語は、残
された六枚の写真を手がかりに歩き回る梅川の視線の向
こうに、新たな手法を確立しようとして苦悩する戦場カ
メラマンの姿を描き出していく。
コイツはもう一人のワシや！
けどワシはこんな善人やないで！！
本著の帯に、そんなコピーとともに肖像写真を掲載し
た実在の戦場カメラマン宮嶋氏の軌跡と、田辺の物語の
間には、大きな隔たりがたしかにある。だがわれわれは
、宮嶋氏を下敷きにしてこの物語を読み、そして物語を
通して実在の宮嶋氏にいつしか迫っているのである。こ
の作品をモデル小説というカテゴリーでくくってしまう
ことには、大きな抵抗感がある。われわれが提示された
のは、現実と虚構の並列というコラボレーションなので
ある。
２、新聞紹介（「中日新聞」「東京新聞」、２００５年
５月１日）
長編小説。戦場カメラマンの田辺は十二歳の少女と一緒
に焼身自殺した。高校時代に親友だった涼一は、「後を頼む」
という遺言とともに数枚の写真を託される。十年以上音信
のなかった友は涼一に何を伝えようとしたのか？田辺の足跡
を追う涼一の現在、高校時代の思い出、田辺の独白をカット
バックでつなげながら、固定観念に支配されてしまった一人
の男の無残な生を描き出す。
３、雑誌、週刊誌紹介（「ＳＰＡ！」５月３１日号＝５月２５日
発売、扶桑社）
報道カメラマンとして名を馳せた男が、地元の須磨海岸で
十二歳の少女と無理心中した。男の遺言は、高校時代の親友に
宛てた６枚の写真。納得がいかない男の妻は、親友に死因調査
を依頼する。そして物語は２６年前の夏に遡り、同級生だった
美少女との関係が明かされる。社会派青春小説。（カメラマン人生）
４、新聞紹介（「神戸新聞」６月４日付け、朝刊）
http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sougou/00009057sg200507041000.shtml
↑（どうしてもリンクさせられません。これをコピーして貼り付け
で見てください。そのうち、善処します。すんません）
５、タウン誌紹介（神戸っ子６月号＝２００５年、
新神戸出版五百円、８１Ｐ）
日本でもっとも有名な戦場カメラマンとして、多くの
ファンをもつ宮嶋茂樹。本書は、宮嶋の友人であり、時事通信
社の記者である著者が、宮嶋をモデルに書いたフィクション。
ミステリー小説。
宮嶋と谷川の出身地である兵庫県を舞台に、青春時代から
カメラマンとして活躍するまでの主人公・田辺の愛と性を追う。
これを読んだ宮嶋本人にも「こいつはもう一人のワシや！」と
お墨付きを。宮嶋の人物像に迫るとともに、極上のミステリー
としても楽しめる一冊。
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