漆黒の空

漆黒の空

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それは、ある人間が言った言葉。
少女の頭の中でいつもいつも思い出させられている。
…そして今日も少女は―――コイツと共に戦う。

「エーメル。(相棒)…今日もよろしく頼むよ。」

少女は誰にも聞こえないように呟いた。
そして目の前にいる男性を睨んだ。
その男性も少女を睨んでいる。
少女は男性から目線を外し、手に持っている少女の相棒を見た。

―――その瞬間だった。
目の前にいる男性は赤い鮮血を吹き出しながらゆっくりと倒れた。
その一瞬一瞬が小さな旋律を奏でている。
そして少女は何も感情を外に出さず、その男性を眺めている。
少女は―――立ち去った。

「…汚いな。」

少女は自分が浴びた返り血を見ながら自嘲気味に言った。
そして少女は相棒を見た。
それは少女と同じように血を浴びている。
だが、その血が少女の相棒をますます銀色に輝かせた。

「『生きるには「コレ」しか無いんだ。』か…。その通りだな。
私にも生きるにはコレしか無い。私には…「殺し」しか無いんだよ…。」

「…サナ。」

少女は振り向いた。
そして驚いた顔を一瞬見せて、また元のように顔を無表情にした。
睨みを利かせ、少女は静かに感情を押し殺して言った。

「…リィラ。…また私のやっている事についての文句か?」
「えぇ…、そうよ。」

サナよりも二、三歳年上らしい彼女。
笑ったらさぞ美しいであろう彼女の顔は今、怒りに満ちている。
少女はそんな彼女の事を見て、鼻で笑いながら言った。

「何だ?言ってみろよ。」
「どうして?…どうして殺すのよ。」
「これが…私の生きている証明だからだ。」

そう一言、言い残すと少女は歩き出した。
彼女から離れるように。
彼女はそんな少女の後ろから叫んで言った。

「生きている証明は…殺しだけじゃないわ!」

少女は彼女の言葉に立ち止まった。
そしてまた一言呟いた。

「…例えそうだとしても…私にはコレしか無い。」

その一言は風が攫っていくように。
誰にも聞こえずに、流れていった。


      ―――――――――少女は今日も生きる証明を探して生きている。


                   fin




少女は彷徨う。証明を探すまで




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