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2004年07月30日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: Essay
 窓を開けると、蝉時雨が飛び込んで来た。
 耳を澄ますと、ミンミン蝉とアブラ蝉の大合唱である。
 エアコンにするか、このまま窓を開けただけで、明け方の寝苦しさから解放されるか、しばし考えて、大合唱の方を選んだ。
 夏は暑いもの、なるべく自然を受け入れたいし、下の道路に沿った桜並木の枝が、少しそよいでいたからである。

 冷たい水をコップ一杯飲んでから、コーヒーメーカーに豆と水をセットした。今朝の豆は、しげとし珈琲のマイルドブレンド。
 ミルで豆を挽くとたちまち辺りは、コーヒーの香りで充満する。
 この瞬間に、わたしは限りない至福を感じるのだ。

 夕べ遅い時間に、別れた夫の元へ遊びに行っていた子供達が帰って来た。
 二人共すごく表情が柔和だった。

「父さんはどうだった?元気だった?」
「うん、少し肥ってた。退院時より5キロ増えたんだって」
「そう。良かったね」

 元夫は末期がんである。
 余命を言い渡されていた。
 離婚した数ヶ月後に、それがわかったのだ。
 病気を知ったとき、わたしの中には大嵐が吹いた。
 でも、離婚をした経緯を考え、苦渋の選択を出した。
 非情かも知れないけど、看病はしない、と。
 そうしなければ、わたし自身が生きていけなくなるから。

 やはり時間という妙薬と、二人の子供のおかげだと思っている。

 まだ眠っている子供たちが起きてきたら、父親がどうだったのか、もっと詳しく聞いてあげよう。
 そう言えば、夕べ水着のファッションショーをしていたっけ。
 白地に黒のストライプのビキニを着た次女は、わたしの枕もとで嬉しそうに披露してくれたけど、元夫はどんな気持ちで買いものに付き合ったのだろう。

 同時に、とても嬉しかった。
 わたしとは違う場所で過ごす子供達と父親の時間を、愛しく思った。

 今日も暑い一日になるのだろうか。
 止むことを知らない蝉時雨が、一段とにぎやかに開け放たれた窓から入ってきた。











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最終更新日  2004年07月31日 07時27分32秒
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