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2005年01月10日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: Essay
 去年の成人式の次女の顔が浮かんだ。


 長女には作ってやれた振袖を、次女には作れなかった。
 生活をすることがやっとで、それどころではなかったから。
 それでも彼女は健気に、不平は言わなかった。
 急に失ったすべての事柄に対しても、
 「生きていれば良い事があるはず」
 と、ひたすら前向きだった。
 「死んだ方がましだ」と泣き叫ぶ、わたしや長女を冷静に励ましてくれた。

 「なんで?どうして?」が心の中を渦巻いていた。
 「ああ、あんなに頑張ってこれ?」 半狂乱だった。
 そんな母親を見る娘の気持ち、どんなだっただろう。
 きっと情けなくて、辛かっただろう。

 「母さんの振袖が着たい」
 次女が言った。
 キモノ類は、お金にはならない。
 着る機会は二度と来ないかもしれないのに、
 わたしの母との思い出が詰まったキモノは、
 どうしても処分できなかった。
 取り出してみたら、羽二重の胴裏がシミだらけだった。

 長女と次女の身長の差は、15センチある。
 一度しか着ていない振袖だけど、次女には袖が長すぎた。
 わたしの気持ちとは裏腹に、次女は薄汚れた振袖を着ると譲らなかった。
 二枚の振袖を持って、予約したホテルへ向かった。
 事情を説明したら、係の方がなんとかしましょうと請け負ってくれた。


 小柄な彼女の胴にバスタオルを巻き、どうにか着せてもらったのだ。
 長女には中振りだった袖が、次女には本振り袖であった。
 わたしは力がぬけた。
 良かったと思った。
 いくらなんでも晴れの日だ。
 総絞りの長女の振袖は、それなりに見栄えがあった。
 次女にもしっかりと似合っていた。

 「ねぇ、三人で記念写真撮ろうよ。こうして無事成人式を迎えられたんだもの」
 次女の提案で一枚余計に写真を撮った。

 先日、わたしの大好きな加賀友禅の小紋を次女に着せた。
 背格好が同じくらいの次女には、ものすごく似合っていた。
 亡き母の気持ちが良く分かる。
 こうして母はわたしを眺めていてくれたのだ、と思った。

 「全部あげるから。母さんが大事にして来た着物、全部あげるから」
 やっと、亡き母との思いを娘に渡せた。
kimono
お正月にわたしの振袖を着た次女@鶴岡八幡宮(上手に帯を結べないので二重太鼓で我慢してもらった) 





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最終更新日  2005年01月10日 15時12分49秒
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