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2006年01月22日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: Essay


 その冬はものすごくインフルエンザが流行ったと記憶している。
 わたしも例外なくウィルスの洗礼を受けてしまい、寝床から抜け出せないでいた。
 母の負担を軽くするための里帰りが、結局は煩わせる羽目になった。
 赤子の世話と新たな病人が増えて、充分な看病ができないと知った母は、嫌がる父に頼んで病院へ入ってもらうことになったのだけれど、その時の父の様子がくっきりと脳裏に浮かんだ。
 「二度とここには戻れないだろう」
 そういってストレッチャーの上に起き上がったまま、名残惜しそうに自分の部屋を振り返った父。
 わたしは頭も起こせないほどの頭痛で、寝床の中から父を見送ったのだった。
 事実、父がそこへ戻ったのは、それから一月足らず後の如月の夕方だった。

 「わしが死んだら、葬式はいらん。家族だけで密葬にしてくれ。その代わりずっとマーラーの『巨人』とチャイコフスキーの『悲愴』をかけてくれ」 が、父の遺言だった。
 遺言は守られて、お通夜から告別式の間中、途切れない線香と共にこの二曲は流された。

 この冬は、父の逝ったあの年に似ていた。
 そういえば、もうじき父の命日がやってくる。





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最終更新日  2006年01月22日 15時56分10秒 コメントを書く
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