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2006年02月28日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: カテゴリ未分類
 明日からもう三月だ。
 二月はわたしの誕生月であると同時に、辛い思い出の月でもあった。
 離婚したのが二年前の十月末で、それからわずか三ヶ月ばかり経ったわたしの誕生日に、彼は余命宣告を受けたのだ。
 別れても尚支払っていた彼のがん保険証書を、娘に持たせたことがそれを知るきっかけとなった。
 あれよという間に入院し、去年の夏、彼は二度と帰らぬ人となったのだった。

 がんセンターの、誰もいない待合ホールは誘導灯の青い光がほの明るかった。
 わたしは彼に背を向けて、嗚咽をこらえていた。
 「ごめんよ。ちゃんと立ち直ったら、皆を一つ屋根の下に呼ぼうと思っていたんだけど。こんな身体になっちゃった。でも、がんばって必ず治すから。とにかくこのままでは死ねないんだよおれ」
 そう言いながら、わたしの背中に手を置いて、いつしか優しくさすってくれた。

 そのどれも当てはまらない自分の気持ちの正体を、人影のない待合ホールの長椅子に座って、懸命に探していた。
 「あなたはずるいよ。ひどいよ。わたしより長生きするって、生命線が長いからっていつも言ってたのに。嘘つき」
 腹の底から沸き起こる怒りに似たやるせない感情を、命の期限を突きつけられた病人の彼に、ただ突きつけていた。
 一番悲しくて辛いのは、わたしだよ。
 ヒステリックに叫ぶばかりのわたしに、そのとおりだと大きな身体を深く半分に折った。

 今でも夢をみる。
 この時の光景を。
 だから、二月の誕生月は、わたし。
 はしゃぎまくる。
 こんなことを思い出さないために。
 だけど、彼の誕生日もやはり二月で、そのことも思い出さないように、はしゃぎまくるのだけれど、ふと何もかもが押し寄せて、切ない二月となるのだった。


 わたしにとっては、一歩踏み出す月になる。






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最終更新日  2006年02月28日 22時39分42秒
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