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2006年03月12日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: Essay
 日曜日の朝。
 久しぶりの惰眠を貪る気でいたのに、同窓会でオールして行き先がないからと長女の友人達がやってきた。
 寝てて良いのよ、と言われても、今更眠れない。
 きっと何も食べずに飲んだくれていたのだろうから、わたしは朝からご飯を炊いて、味噌汁と豚肉の生姜焼きに、菜の花のおひたしで歓待。

 風が外でうなっている。
 関東ではとっくに春一番が吹いたのだから、これは二番なのだろうか?
 昨日から外に出したままの洗濯物が、前後左右に大きく揺れて、時折激しく窓を叩いた。
 隣の部屋では長女の友人達が寝息を立てている。
 彼らを見ていると、遠い昔を思いだす。


 「けいちゃん。彼は諦めた方がいいよ。華やかな都会で暮らしている人に、あなたのような田舎娘は眼中にないと思うよ」
 いつまで経っても見合いの話に乗らないわたしに、母は痺れを切らしていた。
 「お見合いは嫌よ。結婚は他力本願でしたくないから」
 「でも、いい加減彼のことを諦めないと一生独りになっちゃうよ。一度は結婚しないと…」
 わたしは、ずっと、ずっと、同級生のM君が好きだった。
 どこがどうって言えないけど、長い間好きだった。
 M君は、故郷に帰って来たときだけ、わたしを思い出して訪ねてくれたのだった。
 そんなM君を見て、母は親として当然のことを言ったのだけれど。

 今思うと母は、ある種の望みをわたしに託していたのだろう。
 大人の目で見た、安定した普通の暮らしをして欲しい、と。

 わたしの数十倍、母の結婚生活はドラマティックだった。
 いわゆる、手鍋提げてもの駆け落ちだったのだから。

 頭上を、ものすごい夥しい時間が通り過ぎた。
 気持ちはその頃のままのつもりでいるのだけれど、わたしはもう娘の位置にはいない。
 目を閉じると、当時の母の思いが手に取るように伝わってくる。

 もちろん、長女は友人に恋をしているわけではない。
 いつまでも、きっと一生続くはずの、友情を育んでいるのだろう。
 ただ、わたしの脳裏には当時のM君やS君の顔が浮かんだ。
 今ではすっかり良い友達になってしまったM君が、ちょっとオーバラップしただけ。

 春の嵐が、運んでくれた。
 懐かしい、わたしの青春の一ページ。 





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最終更新日  2006年03月12日 12時28分38秒
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