こんなはずじゃなかったのに・・・

これは手話サークルの「ミニ講演」時にしたお話です。
このお話を読んだ後皆さんはどんな思いを抱かれるのでしょうか？

『こんなはずじゃなかったのに・・・』

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　平成１２年９月　ミニ講演より

　昔といってもほんの少し前のお話です。

ある所に一人の女の子がいました。女の子は毎日近所の男の子達にいじめられていました。　

　他の女の子たちは、この女の子と仲良くすると自分もいじめられるので女の子とは遊んでくれません。
女の子はいつも一人ぼっちでした。

なぜ　自分がいじめられるのかも解らず寂しい毎日でした。

やがて　女の子は大人になり､その理由がなんとなく解ってきました。
彼女は耳が聞こえにくかったのです。
だから、友達が「一緒にあそぼ｡」といってくれていても聞こえなかったので、返事をしませんでした。
だから　みんなは女の子が偉そうにしていると思っていたのです。

大人になるに連れて　彼女の耳はいっそう聞こえなくなりました。
そして自分と同じように耳の聞こえない人が世の中にはたくさん居ることを知りました。

　ある日　新聞をみていると「手話教室」というのを見つけました。
さっそく彼女は参加しました。
人の会話に入れなかった彼女にとって手話の世界は暗い夜が明けるようでした。
会話が目で見て解る！！それは本当に楽しい毎日でした。

　やがて講座も終わり､手話をもっと続けたい！！との声があり､手話同好会が出来ました。
　でも、手話講座の間は手話を通訳してくれる人がいましたが､同好会には通訳がなくなってしまいました。
メンバーの中でもそこそこに話ができるようになっていた彼女は　自然と　聾と健聴との間で通訳的な存在になってしまいました。

　しかし、健聴者の間では　それを快く思わない人たちもたくさんいました。
陰口をたたかれる事もありました。
家に帰っては落ち込んで、泣いてはまた　がんばろう！！と立ち直る！！

「難聴は聾に似ているから　聾のことも解ってくれる。」

と言ってくれる聾の人の言葉を頼りに参加する、そんな毎日でした。

　だから　彼女はいつもこう考えていました。

『どうにか聞こえている間は健聴者と聾唖者をつなぐパイプになろう！！
今はつらいけどいつか通訳ができる人が出てきたら　私も聞こえない人たちの仲間に入れてもらえるだろう｡』

それだけを願って彼女は頑張りました。

そして年月が経ち　同好会はサークルとなり、通訳の資格を持つ人もサークルの中から育ってきました。

　『やっと　これからは私もつうやくしてもらえる。必死になって聞かなくてもいいんだ！！聾の人たちと同じように通訳してもらえる。』

彼女はホッとした気持ちになりました。

　しかし、ホッとしたのもつかの間でした。
ある日、聾の人から

「あなたのことを『聾じゃないのに通訳してもらっているのはなぜ？』って言う聾唖者がいるよ。」

と言われ、彼女はとてもショックを受けました。
パイプ役として頑張っているうちに健聴からも聾の人からも

　　　『聞こえているから通訳ができる！！』

と思われてしまったのです。

　「この数年間、泣きながら頑張ってきたのは何の為だったんだろう･･････」
彼女はとても悲しくなりました。

　そんなとき、聾の人が言いました。

「聴覚障害者協会に入ったら仲間になれるよ。」
しかし、彼女にはいろいろと問題があり､なかなか聴障協には入れませんでした｡

　ある日、『サークルの中で難聴者の立場って何なんだろう？』
疑問に思った彼女は問いかけてみました。

「世間一般では難聴者が聴覚障害者であっても、サークルにおいてはち聴覚障害者協会に入っていない人は聴障とみとめない！！」

と言う答えが返ってきました。

サークルの中では　彼女は聴覚障害者とは　認めてもらえないのです｡

手話サークルは、全ての聴覚に障害を持っている人たちの為にあるんだと思っていた｡
そのために今まで頑張ってやって来たこと全て、何だったんだろう？

　聾唖者でもない、健聴者でもない、サークルの中で一人ぼっち｡
子供の頃､いつもひとりぼっちだった。

　　　　一人ぼっちの寂しさを私は知っている｡

だから、同じ障害を持っている耳の聞こえない人はみんななかまだとおもっていたのに、今また、ひとりぼっち･････

私は最初から基本的に間違っていたのかなぁ･････

　寂しさに耐え兼ねて彼女は聴覚障害者協会に入りました。

でも、本当に彼女は仲間になれたのでしょうか？

　彼女は一言つぶやきました。

　　　　　『こんなはずじゃなかったのに････』

　いかがでしたでしょうか？
何かご意見があれば　掲示板の方にカキコお願いします。

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