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”13歳の夏”

人間には、得意不得意がある。
それは誰しもあるものだ
不得意のない者がいるのなら是非お目にかかりたいものだ。
だから、勿論俺にも不得意はある。
俺の不得意は目の前の
「何瞑想にふけってんだよ、淳。難しい顔しちゃって。」
こいつだ。
俺の幼馴染でお隣さんの山崎 汐里(やまざき しおり)。
理解に困る女だ。
頭はそこそこ良いし、運動神経は学年トップと言ってもおかしくないだろう。
だが、おかしな頭の持ち主だ。
頭と言っても、勉学などではなく、生活する上で必要な知恵のことだ。
いわゆる天然と言うやつか。
そのくせ頭いいんだぜ、コンチキショー。
「オイコラ、アホ淳。さっきから何百面相してるんだ。気持ち悪いからやめろ。」
「うるせぇ、汐里。天然バカ。」
「何を~。私は天然バカじゃなーい!!」
「天然な奴はそれを否定するんだよな。」
「うるさい!!せっかく夏休みの宿題見せてやってんのに。恩知らずな奴め。明日恥かくがよい。」
「うっせぇな、てめぇだって宿題見せてやるからケーキ奢れって言っただろーが!!しかも、俺の部屋でグータラしやがって。」」
「・・・・ハッハッハッ、相変わらず分けのわからぬ男よのぅ。」
「無理なテンションで誤魔化すな!!」
「ヘイヘイ。」
パラパラと雑誌をめくってはいるが、あまり内容がつかめてないようだ。
眉間に皺がよりまくりだからだ。
はっきり言って面白い顔だ。
難しい顔をしているのはどっちだよ、と言いたくなる顔をしている。
最近では、マンガもあまり読まないようだ。
そんな子供の読むようなもの読んでたまるか、という理由ではなく、登場人物が全く覚えられないからだ。
10巻ぐらいまで読んでも主人公の名前をはっきりと覚えてない。
当然のこと脇キャラなんて絶対覚えてない。
俺の好きなキャラのことをそんなんいたっけ?と言った時は、本気で怒った覚えがある。
他にもコイツのアホな武勇伝なら腐るほどある。
何がしたいのかと問い詰めたくなるほどおかしい。
言動、行動共におかしい。
そのくせ天然ではないと怒る。
0歳の時から13年間、ほとんどの時間を共に過ごしてきたが未だによく分からない。
でも、こんな風に一緒に夏休みの最後の日を過ごすこともなくなるだろう。
なぜかと言うと、来年の2月19日汐里の14の誕生日に引っ越すのだ。
田舎だから交通の便が無い。
だから橋をかけるそうだ。
俺と汐里の家は川の近くに家がある。
向こう側までの橋をかけるそうだ。
それで、汐里の家がギリギリで橋にかかった。
俺の家はセーフ。
だから、汐里のところだけが引っ越すことに。
引っ越すと言ってもそんなに遠くはない。
学校もあと1年だけだから今と同じ学校に通う。
だけど確実に距離ができると思う。
汐里も気にしてないように見えるが、母さんに聞いたところ引越ししたくないと泣きじゃくったらしい。
それを聞いた時、正直驚いた。
汐里は、本当にまれにしか泣かないから。
ずっと、一緒にいた幼馴染が離れてくというのは悲しいものなのかな。
実際にその日になるまで俺は分からないと思う。
鈍感な男だから。
「淳、写し終わったか?」
「あぁ。」
「うわっ、汚ねぇ字~。」
「書いてさえあったら良いんだよ。」
「あっそう。」
何か思い出を作りたくなった。
別に形に残らなくてもいい心に残りさえすればいい。
「汐里、今日花火しねぇか、花火。」
「花火~?別にいいけど。でも、珍しいね~、淳からそんなこと言うのなんて。」
「最後の夏だもんな。」
「最後?」
「お前引っ越すから。」
「・・・・プッ。アハハハハ」
「何だよ。」
「アンタさっきからそんなこと考えてたんだ。。」
「な、何だよ悪ぃか/////」
「アンタがそんなこと言っても私は来年も再来年もそのまた次の年も来てやるよ。」
「こ、来なくていいやい。」
「アハハ、淳カワイ~。」
「うっせぇ!!」
そうだな、離れててもかわらねぇよな。
俺もお前も。
その日の夜花火をして、13歳の夏に終わりを告げた。


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この話、9割方実話です。
これマジです。
俺が淳で汐里があの人ってとこですかね。
あ、でも花火なんてしてませんし、その人天然じゃないですよ。
その天然さは、違う人の話。
しっぽねしっぽ。
その幼馴染が誰だかクラスメイトは分かるはず。
マジ話ですよ、マジ話。
マジで寂しかったんですよ。
今となっては目障りな橋が家の横にどでんと。
この間やっと柱できたかと思うといつの間にか、微妙にできてるし。
目障りだ。


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