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“4+1家族”

○○市××町△丁目
金持ちそうでも貧乏そうでもない、ただただ普通の一軒家。
その家の主は金澤 哲平(かなさわ てっぺい)、37歳会社員。
娘が3人。
長女の名は沙奈(さな)高校2年。
次女は美香(みか)中学2年。
三女は朝美(あさみ)中学1年。
妻は4年前に他界して、金澤家は4人家族だ。

だが、この物語の主人公は金澤 哲平、彼ではない。

主人公はもうそろそろ起き上がる。


「ふぁ~・・・・さて、朝飯作らなきゃなぁ。」
金澤家の2階のつきあたりの部屋から金澤の名字ではない男の声がした。
彼の名は、諏訪 祥悟(すわ しょうご)、37歳本屋の店員。
20代に見えると言うのが、1番の自慢である。
彼は、金澤 哲平の30年来の親友で、4年前から金澤家に住みつき、家事をしている。
というわけで、彼が泥棒だとかそんな事は無い。


台所から包丁とまな板がリズミカルな音を奏でている。
諏訪 祥悟、37歳独身男性にして家事が得意。
彼女に作ってあげるどころか親友とその家族に毎日作っているのがなんとも居たたまれない。
朝食の用意、そして、5つの弁当。
全ての用意が出来てから、時計をちらりと見て2階に上がる階段へと向かった。

そして、階段を上がってまず1番手前のドアを開けて中に入る。
そこに寝ていたのは、この家の家主、金澤 哲平で、彼の親友だ。
とりあえず、彼はぐーすか幸せそうに寝ている哲平を半ば諦めたように揺さぶって起こしてみる。
眠りから覚める事のなさそうな哲平を見て、ため息をつきながら布団をひっぺがえして廊下までひきづって行く。
そして、窓を全開にして部屋を出て、向かいの部屋に入った。

そこは、長女、沙奈の部屋で、そこにはやはり沙奈が寝ていた。
沙奈は、「起きろ。」と一言言っただけで起きた。

部屋を出て、隣の部屋に入ると次女の美香が寝ていた。
コイツもまた厄介で、哲平と同じようにして、部屋を出た。
三女、朝美の部屋には向かわず、階段を下りる。
朝美は起こす必要が無いのだ。
自分でちゃんと決まった時間に起きている。
今は着替えてる時間だろう。
こうやっていると、祥悟は時々思う。
「俺はお母さんか」と。

顔を洗って、台所に戻ると朝美が下りて来ていた。
真新しい中学校の制服に身を包み、寝ぼけてはいない顔で「おはよう、祥ちゃん。」と言った。
祥悟も「おはよう。」と言って、朝美と沙奈分の朝食と自分の朝食を机の上に置いた。
2人で先に食べ始めていると、沙奈が起きたばかりとは到底思えないキリッとした顔で台所に入ってきた。
「おはよう、祥兄、朝美。」
「おはよう。」「おはよう、さー姉。」
そして、沙奈も朝食を食べ始めた。

起こしに行ってから15分ほど経った頃、やっと哲平と美香が起きてきた。
2人共、今起きたところです。と言うような顔と頭をしていた。
哲平はパジャマだった。
「美香、おはよう。哲平着替えてきやがれ。」
「えー、めんどくさい。」
「飯食うな、オヤジが。」
「お前も同じ歳だろうが!」
「顔が若いからいいんだよ。さぁ、早く着替えて来い。」
「へぃへぃ。」
そう言って、哲平は2階へと引き返していった。

ここで少し、3姉妹の説明でも入れようか。
1番下の朝美は、ほんわかした顔でしっかり者だ。
顔は哲平の姉に、性格は哲平の妻つまり3姉妹の母にそっくりだ。
真ん中の美香は、中性的な顔でさばさばした性格だ。
顔も性格も哲平にそっくりだ。
そして、1番上の沙奈は、きりっとした顔で冷めた性格だ。
顔は母に、性格は祥悟にそっくりだ。
何故血のつながらない祥悟にそっくりなのかと言うと、恐らく次女三女と立て続けに生まれたのでその2人に母、奈穂子(なほこ)が手を焼いていたので長女の世話はもっぱら祥悟がしていたのだ。
と言うか、両親よりも祥悟になついてしまったので、祥悟が世話する事になってしまっていたのだ。
ずっと一緒に居れば流石に性格も似る。

その後、哲平がちゃんとしたスーツ姿で下りてきた頃には皆食べ終わって、各々好きなことをしていた。
慌てて哲平は味噌汁を飲みながら歩き回っていた。

最初に家を出るのは、哲平だ。
マイカーで。
そして、その次は美香と朝美。
学校までは、自転車で行く。
そして最後に、祥悟と沙奈が。
沙奈の通う高校は、祥悟が働いている本屋から近いのでいつも祥悟が車で本屋までは乗せていっている。

本屋に入って、いつも通りに仕事を始めようとすると珍しく早くからいる店長に声をかけられた。
「よう、祥悟。仕事頑張ってるかー。」
「まだこれからだっちゅーに。」
店長に向かってこの口調はどうだろうだとか思われそうだが、祥悟が学生時代の頃からこの本屋に通っていて店長とは大体20年前ぐらいからの付き合いだからこんな調子なのだ。
その頃は、店長は店長でなくただの店員だったから普通に話せていたのだ。
祥悟が本屋で働き始める頃に店長になったのだ。

「なぁ、祥悟よ。」
怪しいぐらい穏やかな顔で祥悟の肩にポンと手を置いて言った。
「何デスカ、店長サン。」
「お前見合いする気ねぇか?」
そう言いつつ、店長は見合い写真を何枚か祥語に差し出した。
「今月何回目だよ。何度も言ってるだろ、俺は結婚する気なんて毛頭ない。」
キッパリと断言する祥悟に店長は呆れた顔をした。
「お前なぁ、もう37だろ。さっさと身ぃかためろ。」
「いや、もう俺さぁ結婚なんてどうでもいいかなって思っちまってるからさぁ。」
「お前は一生を金澤家のお母さんとして終えるつもりか!!?3人娘が嫁に出てもお前はあそこで家事をし続けるつもりなのか!?」
そこで祥悟は考え込むように頭を押さえた。
「奈穂子ちゃんが死んで、あの家で家事できる奴がいなかったからお前が住み込みで家事してるのはわかってるがな、沙奈ちゃんだってもう高2だろ。料理ぐらいちゃんとできるだろ。お前ももうあの家で居続けなくていいだろうに。」
祥悟が少し自虐的で、でもお母さんと呼びたくなるような優しい顔で誰にともなく言った。
「うん、まぁ、そうなんだろうな。沙奈にも美香にも朝美にもちゃんと料理も教えてるし、他の家事も教えてる。俺があそこで家事をし続けることはないんだろうけど、もうそれが当たり前になっちまったし。それにあそこにいると、まだ奈穂子先輩がいるんだよ。」
「沙奈ちゃんか。奈穂子ちゃんそっくりになったからなぁ。ま、中身はお前だが。それにしても、まだ気にしてんのか、お前は。」
「まぁ、ぼちぼちかな。今でも時々、あそこで先輩を引き止めて俺が代わりに出て行ってたらよかったかなって思う。」
「お前のせいではないだろよ。」
そう店長が言うと、祥吾は視線を泳がせながらぼりぼりと頭をかいた。
「いや、俺のせいだとかはこれっぽっちも思ってないけどな。奈穂子先輩は、娘3人まだ小さかったし、旦那は日常生活だらしないし。俺の方は、嫁も子供もいないしな。無駄に若い両親と無駄に元気ですいすい出世していく出世魚な兄弟がいるだけだし。」
「死んでも誰も困らねぇってか?」
「・・・・」
「そんな人間いるか、ボケ。お前が死んだら、家族だって、金澤一家だって悲しむに決まってるだろ。それに俺も困る!」
「アンタが悲しむか?」
「おぅ、いじめる相手が居なくなる。」
「オイ。」
そして、バカみたいに2人とも大声で笑って、いつも通り営業が始まった。

「さて、帰るか。」
「オイ、祥悟。」
いつも通り、営業が終わり自分の鞄を持って車へと向かう祥悟を店長の声が引き止めた。
「何すかー?」
「忘れもん。」
そう言って、腕を振りかぶって紙袋を祥悟の方へ投げてよこした。
「っと。あー、サンキュー。」
中に入ってたのは、哲平や沙奈達の読む雑誌と朝見せられた見合い写真だった。
見合い写真は丁度雑誌に隠れて、祥悟は見えていなかった。
「そういや、お前明日だったよな?」
「俺は明後日だけどな。」
話の意図が掴めない会話をしてから、祥悟は車に乗って金澤家もとい今の自宅へと帰っていった。

「ただいまー。」
「あー、祥悟帰ってきた。おかえりー。」
部活帰りの次女の美香が片手にアイスの制服姿で玄関に居た。
「おぅ、ただいま、美香。」
「姉ちゃんー、朝美ー、お母様が帰ってきなすったー!!」
「叫ばんでよろしい。そして、お母さんじゃねぇよ。」
「さぁ、雑誌をよこしな、母ちゃんよ。」
「お前ソレやめろ。ホラよ。」
そう言って、紙袋を美香に渡した。
いや、渡してしまった。
「サンキュ。ん?何だこれ?」
「ゲ、それは。」
「・・・・見合い写真だー!!姉ちゃん、母ちゃんが見合いするってよ!!」
「美香、ヤメロー!!」
美香が叫ぶと、リビングから沙奈の「見合いでもなんでもいいから、夕ご飯~。」という声が聞こえてきた。
「だってさ、母ちゃん娘たちのために今日も美味しいご飯作って。」
「おーい、いつから俺母ちゃんになったよ。もう性別も関係なしかオイ。」
「ま、いいからいいから。ご飯ご飯。」

「朝美、皿出せ、皿。美香、机の上片付けろ。沙奈、机の上拭いてくれ。」
「俺は~?」
「何だ、帰ってたのか哲平。」
「うわっ、ひでぇよ、お母さん。」
「てめぇの母親になった覚えはねぇっ!!」
「何で俺にだけ、そんな怒るんだよ!!?」
「沙奈、美香、朝美。これ机の上に持っていって。」
「うわ、無視された。」
「やい、哲平。さっさと着替えて来い。スーツで食うなよ。」
「ハイハイ。」

「「「「いただきます。」」」」
「どうぞ。」
食卓の上には、美味しそうな湯気を上げるスープとパスタが5人分。
「そういや、お前ら明日休むってちゃんと言ってきたか?」
フォークを持つ手を止めて、祥悟が4人に向けて言った。
「私は言った。」
「あー、ハイハイ言った言った。」
「私も言ったよ。」
3姉妹が上から順番に答えていく。
「よし。哲平は休みとってあったよな?」
「勿論だ!!当たり前だろ、俺が忘れるわけ無い!!」
フォークを握り締め、熱く熱く語る哲平を呆れた目で見ながら、祥悟はあぁ、馬鹿な人間を友達に持ったものだなぁ。と思っていた。
「じゃぁ、大丈夫だな。気ぃつけて、行ってこいよ。」
「えー、祥吾行かないの?いっつもそうじゃん。」
スープを音を立てて飲みながら美香が言った。
「家族水入らずで行っといで。」
そう言って、静かに笑う祥悟を見て、哲平は申し訳なさそうに笑った。

「さて、チーズケーキ作るか。」
夕ご飯の片付けも終わった後、祥悟が冷蔵庫の中をのぞきながら言った。
「私も手伝うよ。」
「サンキュ、沙奈。道具出しといて。」
「わかった。」

「よし。準備完了。」
「どうすんだっけ?」
「あー、常温に戻したクリームチーズ、卵、小麦粉、レモン汁、生クリーム、砂糖を・・・」
「を?」
「ミキサーに入れます。」
そう言って、大雑把に材料をミキサーの中へどんどん入れていった。
その光景を見て、沙奈の動きが一瞬止まる。
「だ、大丈夫なのか?」
「大丈夫。これをケーキ型に流しいれて、空気抜きをします。」
「はぁ?」
「で、温めておいたオーブンに入れて、焼く。」
「おー。」
沙奈が特に手を出さなくても、祥悟の手によってどんどん過程が進んでいく。
「チーズケーキ好きだったもんね。」
「あぁ、とんでもなく食ってたな。」
「祥兄は毎年一緒に行かないよね。」
「そうだな。行かないな。」
「・・・ま、いいや。」
「片付けやっとくから、テレビ見てきていいぞ。」
「うん。」
沙奈がキッチンから出て行くと、祥悟はオーブンの方を向いて、誰にともなく「俺はお前らとは行けないよ。」と言った。

「今日、金澤家4人は行ったのか?」
「おう、行った行った。」
次の日の午後、いつも通り祥悟は自らの職場、本屋の奥で少し遅い昼食をとっていた。(手作り弁当
そこにこれまたいつも通り、店長がコンビに弁当を持ってやってきた。
「で、お前はまた一緒に行かなかったのか。」
「おぅ、だからここでいるんだよ。」
「はぁー、お前もしょうがねぇな。」
「おぅ、しょうがねぇ。」
「で、見合い写真はどうしたよ、祥悟クン?」
「げ。」
「げ。じゃねぇだろ、げ。じゃぁ!!いくら外見が若いからって37のオヤジが婚期逃し続けてんじゃねぇ!!」
店長がそう言うと、祥悟は一瞬呆気にとられたがすぐに叫んだ。
「40過ぎたオヤジは婚期逃してねぇのか、えぇ!?」
店長、未だ未婚。
そう言われると、店長は目を泳がせた。
「えー、別に逃してるわけじゃねぇしー・・・俺は嫁なんかいらないんですー」
そう、言い訳がましくぶつぶつ言ってると、若い店員達(男)が入ってきた。
「あ、祥悟さんここにいたんですか。」
「おぅ。」
「明日の夜暇ですか?」
「何で?」
そう問い返すと、男達の1人が楽しそうに楽しそうに言った。
「合コンですよ、合コン♪」
「あー、またか。お前また俺に20代と偽って行けと。」
「勿論!」
「お前そりゃサギだろ。」
「若いからいいじゃないですか!羨ましいですね、この野郎。」
そんな会話を繰り広げていると、40過ぎのオヤジがしみじみと「若いのはいいねぇ~。」言った。

「ねぇ、行きましょうってば、祥悟さん!!」
「わかった、わかった。行くよ、行く。あぁ、でも少し遅くなるかもな。」
「え、どうしてですか?」
男達の1人が不思議そうに祥悟の顔を見た。
「明日はな。」
そう言うと、男達の中で1番長く本屋で働いている男が何かに気付いたような顔をして言った。
「わかりました。気をつけて行ってきてくださいね。」
「おぅ。」
他の者は、何を言ってるのか解らないという顔で2人の顔を交互に見た。

「ただいまー。って、あれ?真っ暗?」
哲平、沙奈、美香、朝美が帰ってくると、家は電気がついておらず真っ暗だった。
「祥ちゃん、この時間帰ってるよね?」
朝美がそう言って、リビングの明かりをつけた。
辺りを見渡すと机の上にサランラップのかかった皿が4枚と紙が1枚置いてあった。
それは、広告の裏にボールペンで大雑把に書かれたもので
『俺は寝る。
机の上のハンバーグと冷蔵庫の中のサラダを食え。
片付けは自分達でしてくれ。
チーズケーキも食べたきゃ食べろ。

            ショーゴ』
「寝ちゃったんだ、祥ちゃん。疲れてるのかな?」
「そりゃぁ、家事も仕事もバッチリやってりゃ、祥兄も疲れるでしょ。」
「父ちゃんー、ハンバーグ温めといてー。」
美香が2階に上がろうとしていた哲平に向かって言うと、戻ってくることはせず「お前らでやっといてくれー。」と言って2階へ上がって行ってしまった。

つきあたりの部屋のドアを哲平が開ける。
そこは、祥悟の部屋。
「おー、寝とる寝とる。」
寝ている親友の顔を上から覗き込む。
「若い顔しやがって、37歳ー。」
そう言って、頬をひっぱるが起きる気配はなく、眉をひそめて「んが」と言うだけだった。
ふいに手を離して、優しい笑顔で寝ている人間に対して口を開く。
「お前は明日行くんだろう。しっかり行ってこいよ?」
それだけ言うと、部屋を出て行ってしまった。

寝ていたはずの人間が口を開く。
寝言ではなく、今いた親友に対して、「いってきます。」と。

次の日は、土曜で3姉妹は学校が休みだった。
祥悟は、3姉妹と37になっても家事の出来ない親友に「今日は俺は合コンだ。シチュー作っといたから、夕飯はそれを暖めて食え。昼は自分達で何とかしてくれよー。」と言い残し、颯爽と車に乗って去っていってしまった。
「合コンだってさ。」
「あー、ダメだ。絶対、またべろんべろんに酔って帰ってくるよ。」
「お父さんまた、祥ちゃんの車取りに行かなきゃいけなくなるね。」
そう言いながら、車を見送った。

「おばさん、この花10本ください。」
「はいよ。久しぶりだね、元気にしてたかい、祥悟ちゃん?」
「元気ですよー。」
「彼女はできたかい?」
「おばさん、会うたびに俺にそれ聞くよね。いませんよ。」
花屋のおばさんから花を受け取った。
「あらー、祥悟ちゃんモテるだろうに。うちの娘どうだい?」
「いやいや、俺なんかにはもったいないですよ。じゃぁ。」
おばさんはまだまだ話をしたそうにしていたが、祥悟も仕事があるのでそれに付き合ってあげるわけにもいかず、店をあとにして本屋へ向かった。

午後3時きっかりに祥悟は荷物をまとめて、本屋から出て行こうとした。
「あれ、諏訪さんもう帰るんですか?」
「おぅ。今日はちょっとな・・・」
「合コンはどうするんですか~?」
「それまでには帰ってくるよ。」
「えー。」
若い店員の1人が帰ろうとする祥悟を呼び止めた。
その時、外に買い物に行っていた、合コンに誘った店員のうちの1番の古株が帰ってきた。
「あぁ、祥悟さんもう行くんですかー?」
「おぅ、行ってくるよ。」
「6時ですよ、忘れないでくださいね。いつもの店ですから。」
「わかってる、わかってる。」
そう言って、本屋を出て、自分の荷物と朝花屋で買った花束とを持って、車に乗ってどこかへ行った。

着いた先は、寺だった。
車を近くの駐車場に停めて、荷物を持って寺の裏へ回りこむ。
そこは、墓地だった。
ぽつぽつと人がいるだけで、あとは墓石が並んでいるだけ。
祥悟は、バケツに水を汲んで、ひしゃくをその中に入れて明確な足取りである墓へと向かう。
その墓には、真っ赤な薔薇の花束と皿にのせられたチーズケーキが備えてあった。
墓石には『金澤家之墓』と書いてあった。
「かー、哲平また薔薇かよ。目立つぜ、これは。」
そう言いながら、薔薇の隣にそっと自分が持ってきた花束を置く。
そして、墓前にある水を入れ替え、線香をたててから荷物を置いて墓の前に立つ。
「お久しぶりです奈穂子先輩、祥悟です。」
ニコリと笑ってそう言う彼の顔は何かを懐かしむような顔をしていた。
そして、ぽつりぽつりと話し出す。

「俺は相変わらず元気です。先輩の旦那も娘達も元気です。沙奈はますます先輩に似てきましたよ。美香は、バスケ部でレギュラーになれたみたいです。朝美は3人の中で1番料理が上手になりました。旦那くんは相変わらず、面白いです。やっぱり、アソコに先輩がいないのは寂しいです。」
フゥと息をつく。
「実を言うと、高校の時、哲平を先輩に紹介しなきゃよかったと思ったことは何度かありました。でも、今ではそうは思いません。俺は、先輩のことが好きでした。恋だの愛だのに興味の無い俺にしては珍しいことでした。先輩と哲平が付き合いだしたってことを知って、正直悔しかったです。腹も立ちました。でも、幸せそうに笑う2人を見てると、俺まで幸せになりました。」
少し泣きそうな顔をしてから、また話し出す。
「俺は、今、幸せです。哲平が沙奈が美香が朝美が俺を家族と言ってくれる。俺は貴女の代わりに娘達の成長を見守っていくつもりです。だから。・・・だから、どうか安らかに。」
そう言って、荷物を持って帰っていった。

墓前に供えた花は、“紫苑”。

花言葉は“あなたを忘れない”。


「さぁて、行くか合コン。飲むか、酒!!」


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お、終わった~・・・
大分かかりました。
途中、放置してあったんで、書く気全然無かったんですが、古い書きかけの見てたらちょっとやる気が出てきて勢いで書き上げた代物です。
絶対ぇ途中でキャラ変わってるよ、祥悟クン。
祥悟、祥悟ちゃん、祥ちゃん、祥兄、祥悟先輩、諏訪先輩と色々な呼び方されてますが、神月は祥悟クン派です。
高校時代の話入れたかったのですが、思いのほかずるずる長くなって、入れれなくなりました。
奈穂子先輩には、祥悟クンって呼んで欲しい・・・

話がまとまってない気がものすごくします;;

続きが書きたひ・・・(ぇ
祥悟に恋愛させたひ・・・
流石にお母さんのままでずっといるのはかわいそうですからねー。

でも、書けなひ・・・
何故なら、他にも書きたいのいっぱいあるからねー。
黒猫の鈴も続き書きたいし、あとあらすじとキャラだけ考えて放置気味のがいくつかあるし・・・

ってか、あらすじ長いですね・・・

ここまで、読んでくださった方、有難うございます♪



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