.



とどのつまり、バレンタインデー。

・・・らしい。


“お菓子会社の陰謀の日”


「カジ、付き合って。」

夕暮れ時、学校の廊下。

平河 雪美が俺に声をかける。


「えー、ちょっ、平河、人前で何言ってんの!?」
「お前には恥じらいってものがねぇのかよ!」


いつものようにツッコミ役、俺の“幼馴染”と書いて“愚民”と読むそんな野郎共、竹沢 亮介、佐川 新平。

今回も彼らの活躍は無い・・・らしい。

そして、雪美にこたえる。


「いいよ。」
「えぇ!?」
「軽ッ!!そんなんでいいのかよ!」
「ありがとう!」
「どこまで?」
「え!?そこでボケる?」
「最ちゃん、そんな子だったなんて!」
「図書館まで。」


ワーワーキャーキャーと乙女のごとく騒いでいた亮介と新平の動きがピタリと止まる。

何勘違いんの、色ボケ共。


「チッ、何だよ面白くねぇな。」
「付き合ってって言ったと思ったら、図書館までかよ。つっまんねぇー。」
「ハッ、何言ってんの愚民共。その無駄なことしか言わない口、針金で縫い付けてあげようか?」
「カジ、昼間から凶悪だね。もはや、小悪魔じゃなくて黒魔王だね!」
「おっ、上手いな平河。」
「いや、待て。黒魔王はいきすぎだ。よし、ここは黒の帝王でいこう。」
「ブラックエンペラーだな。ぴったしすぎて涙が出てくるぜ。」
「よし、愚民共コッチへ来い。俺の自慢の手刀でその空っぽの頭かち割ってやる。」


ニッコリと、暖かな笑みを愚民共に向ける。

手は手刀の形をとり、心の眼で見れば禍々しいオーラでも見れただろう。

中2の時にやめてしまったが、空手は10年続けてきたし、姉兄弟皆空手をやってきたのでキョウダイゲンカは流血ものだ。

ハッキリ言って、チャラ男とエロメガネに負けるなんてことはありえない。


「最ちゃん、落ち着け。その手を収めろ。」
「チッ。」
「カジ、どんどん性悪になっていくね。言う事だけ聞いてれば、カワユイ顔を忘れてしまいそうだね!」
「かち割るぞv」
「私もただただカジにやられるだけの人間じゃないぞ~。」


そう、そうなのだ。

コイツも俺と同じように空手をやっていたんだ。

チャラ男やエロメガネのようにはいかない・・・


「ハイ、ストップ~。どっちもその禍々しい拳をおろして。」
「そういや、図書館っつったら、最ちゃんとこのおばさんが働いてんじゃねーの?」
「あぁ、静香さんな。」
「あー、うん。うちの母さんが司書やってるよ。」
「へぇー、そうなんだ。おばさんにはしばらく会ってないなぁ。ってか、あんまり会ったことなかったかも・・・」
「ま、そりゃそうだろうね。空手教室の迎えは姉さんとか誠司さんとか父上殿が来てたし。」
「えっ、嘘!?じゃ、私、カジの第二の父親・修一さんと会ったことあるのかな?」
「さぁ、どうだろうねぇ。」
「俺は、子供心に修一さんが怖かったよ。」
「あの人、本性はデカイガキだからな。そう、まるでジャ●アンのような。」
「流石、最ちゃんの師匠というか。ってか、今の最ちゃんの性格は修一さんあってこそだからな。」
「出会ってほしくなかったよ・・・」
「勝手なこと言ってるけど、お前らの妄想・願望なんて知らないから。」
「そうだよね。カジはコレでないとカジじゃないもんね。ブラックエンペラーであってこそのカジだもんね。」
「雪美それは忘れろ。でないと、お前の武勇伝を学校中にふれまわるぞ。」


なんか横の方でチャラ男とエロメガネが大笑いしてやがる。

よし、視界に入れないことにしよう。

雪美は雪美で引きつった笑いを浮かべていた。


「アハ、いい気味v」
「最ちゃん、それ多分心の声の一部なんだろうけど、口に出てるよ。」
「うん、なんかいつもの俺が戻ってきた気がする!」
「カジはステキだよ。これからもステキに生きてね。」
「おぅ、任せとけ。じゃ、HR終わったらうちの教室に来い。」
「わかった。あ、竹沢、佐川、アンタらは来なくていいから。」
「あぁ、そうですか。デートですか。」


そのまま、雪美と別れて、教室へ戻っていった。

教室の前で副担任発見ー。

軽やかなとび蹴りで攻撃して、悠々と教室に入る。

うお、ヤベ。

敵は副担かと思ったが、どうやらもう教室には担任が来ていたようだ。


「梶原~、お前何やってんだ。教師を蹴るな。」
「気のせいですよ。幻覚、幻覚v」
「んなわけあるか!!3人ともさっさと席に着け。そして、遅れたのなら後ろから入って来い!!」
「ハイハイ。」

HRも無事終了。

担任と副担の痛すぎる視線なんて知ったこっちゃない。

俺を呼び止めようとする副担を鮮やかに撒いて、クラスメイトと適当に言葉を交わして、教室の外に出た。

雪美が弁当箱以外何も入ってなさそうなカバンを持って、立っていた。


「よし、行くぞカジ。」
「電車あるの?」
「きっとある!」
「ダメじゃん。」
「駅に行こう。話しはそこからだ。」


相変わらず、無計画な奴。

コイツと2人でってのも久しぶりかもなー。

あぁ、ちゃらんぽらんな幼少時代が思い出される。

そのまま学校を出て、駅へと向かう。

「お前らデートかよ。」とからかう、クラスメイト、先輩、バカ空、その友人達を目で射抜くのも忘れずに。

駅に着いて、時刻表を見ると運良く電車があった。

1つ隣までの切符を買って、電車に乗った。

まだこの時間の電車は空いていて、座席に座ることができた。

なんかずっと話をしてた気がするけどなんだったか・・・

実のない話すぎて思い出せない・・・

電車がホームに入ると、ポケットに入れていた切符を出して、電車から降りる。

改札口を通って、駅から出ると、もう図書館が見えた。

駐車場に母さんの車が見えた。

わぁ、やっぱりいるんだ、母さん。


「どーした、カジ?エレベーター乗らないのか?」
「乗るよ、乗る。」
「え~と、3階だっけ?」
「2階だよ、何言ってんの。」


機嫌良さそうに『3』のボタンを押そうとする手を止めて、『2』を押す。

ちなみに1階は関係者以外立ち入り禁止。

2階から上が図書館。

だけど、確か3階の司書は母さんだったような・・・

エレベーターがなんともマヌケな音を出して2階に着いたことを教える。

エレベーターから出て、図書館のドアを開けると・・・・!!


「おー、いらっしゃい。最、雪美チャン。」
「コンニチハ、おばさん!」
「いい度胸だな、チビガキ。静香お姉様とお呼び。」
「えー、だってお姉さんって歳じゃないじゃないですかー。」
「オイオイ、ぺチャパイ女。訴えるぞ。」
「こっちが訴えますよ!!」


か、母さんがいる・・・

何でだ!?母さんは3階の司書のはず・・・

目の前で雪美の額に分厚い本を押し付けてる43歳のおばさんは知らない人だ。

待て、俺。現実逃避を始めるな・・・


「おーい、最。どしたー?」
「何で、母さんここにいるの!!?」
「んー、密告者がいるからv」


そう言って、ポケットからケイタイを出して、ボタンを4回ほど押して、俺の方に向ける。

From:佐川 新平

件名:息子さんが・・・!!

本文:今、最ちゃんが平河雪美と図書館へ向かってます。


    P.S.チョコ有難うござました(^v^)v

・・・・・


「あんの、エロメガネがー!!」
「ハハハ、カワイイ愛弟子さ。」
「弟子?おばさん、何で佐川が弟子?」
「おばさんをやめなさい。せめて静香さんで。」
「じゃ、静香さん。」
「メガネ弟子v」
「アレ、そう言えばおば・・・静香さん昔メガネしてませんでしたよねー?」
「コレ伊達メガネ。」
「え。」
「司書っぽく見えるようにと願いを込めて、ね。新平のは大体、私があげたメガネよ。」
「えー、何そのつながり・・・ちょっとカジ、無言で佐川に不幸のメール送り続けないで。怖いから。」
「だってぇ。」
「何でソコでぶりっ子!!?」
「うんうん、最は修一クンに似てステキに成長したな。」
「え、実母も認めるほど父上殿とそっくりなの!?」
「「ハハハハハー。」」
「親子2代で愉快に笑われた場合、私はどうしたらいいの・・・?」
「梶原さーん、このダンボールどこに置いておけばいいですかー?」
「あー、ちょっと待って、今行くから。2人もおいで。」
「えー。」
「ほーら、来い来い~。最の好きなチョコレートがあるぞー。」
「よし、行こう雪美。」
「カジ、ホントにステキな性格ね。」


雪美のステキには俺の望む意味が1ミクロンも含まれてないので、無視無視。

何故、誰もお世辞でもカッコイイとかハンサムーとか流し目がステキーと言ってくれないのか・・・

母さんの後に続いて、本棚の林を抜けて、司書の人達がいるところへ行った。

カウンターって言ったらいいのかな?

母さんは内側へ入って、テキパキと指示を出してから、自分の鞄を持って俺達の方へ戻ってきた。

中からピンクの箱に赤いリボンが巻かれた箱を2つ取り出した。


「ハイ、雪美チャン。ハイ、最。息子にあげるのもどうかと思うけどねぇ。それに、最はすでに大量のチョコレート貰ってるみたいだし。」


その通り。

俺の今日の荷物は、弁当、筆箱、サイフ、半分ほど残っているペットボトルのお茶、ケイタイ、マンガ数冊、教科書ノートが3冊ぐらい入ったリュック型の通学鞄とチョコレートがどっさり入った紙袋が2つ。

そのチョコは、同学年、先輩、他校の人からもらったものだ。


「ねぇ、なんで毎年2月14日に皆チョコくれるの?俺の誕生日2月じゃないよ?」
「「・・・・・」」
「ねぇ、何でそんな恐ろしいものを見るような目で見るの?俺何かおかしなこと言った?」
「お前はどこぞの少女漫画の王子的キャラかー!!」
「うわ、何母さん、頭打った?」
「スゴイ、スゴイよ、カジ!そんな希少で珍妙な人間がまだ存在してなんて!」
「珍妙?」
「毎年、お前はお返しを用意しないのはバレンタインデーを知らなかったからか!!この不届き息子。」
「お返しなら、ステキスマイルと感謝の気持ちとほんのちょっぴりの愛情を返してるよ。」
「16年も生きてきて、何を学んだの、カジ?」
「毎年、この時期になったら誠司クンが忙しそうにしてるでしょうに。周りから学べよ。」
「うー・・・で、何そのバレンタインデーって?チョコくれる日なの?」
「・・・あぁ、モテ男に許された権限だ。モテナイ君は1日中、友達が貰ってる中寂しく耐える日なんだ。」
「へー。」
「静香さん、そのまま妙な情報をカジにインプットする気ですか?」
「うん、勿論。」
「いいですね、息子で遊ぶの楽しそうで羨ましいです。」
「そうだろう、そうだろう。」
「あ、じゃぁ、本借りてきますー。カジはどうぞ預かっててください。」


そう言って、スタスタと本棚の林の中へ入っていった。

うーん、確実にバカにされてるような・・・

その間、俺は司書のおばさん達に囲まれたり、母さんの空手を習得したその拳で殴られたりと忙しかった。

仕事しろよおばさん達。

そして、痛いんだってば、母さん。

そうこうしてるうちにニヤニヤしながら雪美が戻ってきた。


「何だよ。」
「誰かにやられてるカジなんて久しぶりに見たよ。」
「あぁ、そうですか。」
「さて、帰る?」
「そうだな。・・・・いや、待て。」
「え、何どうかした?」
「確か、駅前のケーキ屋でイチゴフェアをしていたはずだ。ケーキ食いに行くぞ。」
「カジ、そんなにチョコレート貰ってまだ甘いもの摂取するの?」
「え、何か問題でも?」
「ないけどさー。」
「最。」
「何、母さん?」
「虫歯に気をつけなさい。」
「その前に糖尿病も危なそうだよね・・・」
「あと、私の分のケーキも買っておいて。」
「わかったー。」
「やっぱり親子だな・・・」


雪美がしみじみと言ったが、そこまで母さんと似てるつもりは無い。

姉さんは生き写しだと思うけど。


と、思ったりしてみたが、その時の俺の頭の中には赤くて甘そうなイチゴの乗ったケーキしかなかった。

あ、パフェもいいかも・・・


ま、何より明日はエロメガネ抹殺計画を実行しないと。


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バレンタインなんか全く間に合いませんでした。
ただ今、15日の5時10分。
AMです。
明日が高校推薦入試のため、学校休みなので自室にノーパソ持ち込んでやってます。

ヤバイですね。
無理やり終わらた感丸出しですし。

新キャラ、お母様です。
梶原 静香さん。
最ちゃんのお母さんってカンジを出したかったんです。
でも、しすぎると父上殿のポジションが良く分からなくなるし。
そして、本当のお父様はいつ出るのやら・・・

節分の話を書き忘れて、心底後悔してます。


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