桜の舞い散る園で・・・~Sorrow and a feather of courage~

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CROSS†CHANNEL




ストーリー

国家が実施する試験で「適応係数」が高いと判定された生徒を集めて「隔離」する群青学院。主人公の黒須太一は放送部に所属し、そこで得た仲間たちとの楽しい時を送っていた。

しかし、ともに時間を過ごす中、それぞれ心に歪みを抱えたメンバーたちの間には亀裂が生まれ、あるときを境にそれは決定的な破綻となり、「放送部」は断絶してしまう。

太一が起死回生を賭けて望んだ合宿も失敗に終わり、心中がバラバラの状態で街に帰還する放送部メンバー。しかし、そんな彼らを迎えたのは、生物の存在が消え、常軌を逸して静かになった街だった。
「世界で八人だけの人類」になるという異常な状況下で、それぞれの歪みを顕にし始める部活メンバー。

そんなある日、ひょんなことから町はずれの祠にあった「ノート」を発見した太一は、人類の存在しないこの世界が1週間単位でループしていることを知る。

閉じた世界とループする一週間の中、太一は仲間たちとふれあい、衝突し、そして和解していく。


この作品最大の長所はやはり主人公の身体を張ったギャグシーンであろう。
主人公は元々良い意味でぶっ飛んでおりそれによるギャグシーンの数がとても多い。
下ネタ率が高いがかなり笑えるものばかりで、腹を抱えるようなものも。
このノリについていけるヒロインがいるお陰でさらに笑える。

上にも書いたとおり、ループしているお話。そのため、話自体は一直線です。

1周目はあらすじ通りに個性の強い登場人物たちとの部活動、学園生活が描かれる。
色々なことがありつつも部として皆で頑張る、そんな「良くある」内容。

しかし2周目以降は徐々に徐々に毛色が変わってゆく。
様々な分野の雑学を交えた世界観、物語のからくりには脱帽。
後半の個別ルートはいずれもメッセージ性がとても強く、「青春群青もの」の色が出ている。
また物語としての完成度が高く矛盾点や破綻している点がないのも凄いところ。
田中ロミオのなせる技か。

この作品での否定的な部分を上げるとこんな感じかもしれませんね。

・ループものであるため何度も同じシーンを見る必要がある
・ギャグが下ネタ満載なのでそれ系が嫌いな人には向かない
・後半、テキストが難解になるので理解が大変
・シナリオ展開的に賛否両論出そう

それでも、展開には脱帽です。


登場主要キャラクター

黒須太一

主人公。自称エロ大王。

これほどに強い主人公が他にいるのだろうかと思えるくらい、最後の展開には泣ける。
どうして、こんな事になってしまったのか。その全てを知った時の太一の決断は本当に強いと思った。
舞人に匹敵するくらい面白い主人公なのだが、内に秘めている異常ともとれる凶暴性がある。そのおかげで傷つけてしまった人もいる。だからこそ、あの決断をしたのかな・・・と。


山辺美希

通称ミキミキ。
以前、どっかのHPで、恋人にしたいキャラで一位をとっているのを見たことがあります。

太一のセクハラにも動じない明るい後輩。親友の佐倉霧と二人で「FLOWER'S」(お花ちゃんたち)と呼ばれる。

彼女の群青は自身が「他人の痛み」が分からない人間であり、また保身のためには部活メンバー(親友の霧でさえ)も捨て駒にする、常軌を逸した「自己愛」の強いこと。
彼女ルートの「INVISIBLE MURDER INVISIBLE TEARS」は正直、一番最悪な結末を迎える一週間。


佐倉霧

通称霧ちん。

異常なまでに他者の心の機微に敏感であり、そんな彼女にとって世界(社会)は悪意に満ちたものであり、常に精神の安定を欠いている節がある。そのため信頼できる他者に依存する傾向が強い。そのため、昔は従兄の豊に、今は美希に依存している。

精神的脆さに加えて「人類の絶滅」という常識から乖離した状況によって強いストレスに晒され著しく精神的な安定を欠き、唯一の精神的支柱である美希を守ろうとほかの部活メンバーとの交流を絶って独立しようとしたり、太一を殺害しようと計画を練ったり、太一と接する美希に太一との交流をやめさせようとする等の狂的な行動に走り始める。

それでも、彼女ルートの一週間はまともな方である。

桐原冬子


太一のクラスメイト。名家の娘で意地っ張り。
過去太一とは恋人関係であり、太一に捨てられてからは当然というべきか仲が悪い。

「孤独」を許容できるプライドの高いお嬢様であるが、一度依存した相手には際限なく依存し、また独占しようとする。

霧と似たようなタイプであるが、彼女の依存には「自己」が含まれておらず、独占を保つためには自身を支えるプライドさえかなぐり捨てる。過去太一が冬子をふった時にはそれが頂点に達した形で現れ、自分の体を傷つけて重傷を負うことによって太一の気を引こうとした。

彼女ルートも人が死ぬ、人が死ぬ。内容的には美希ルートよりはましですが。


宮澄見里

太一を放送部に誘った人物。温厚で面倒見もよく生真面目な人物だが、それとは関係なしに「規則」を遵守することに縛られた性質の持ち主。守られない規則ばかりが横行する世界は彼女にとっては容認できないものであり、その世界を修正するために自分を傷つけるという、他者に対して屈折した攻撃を行う。

ループする一週間では、もっとも平静を保っている様にみえるが、逆に、それが彼女の深刻な異質さをあらわしているということが分かる。


支倉曜子

神出鬼没の万能人間。あまり周囲には関心がないが、太一には気を許し、また恋心を抱いている。が、なぜか太一は相手にしない。太一とは幼少の頃から関係があり、その点だけを言うならば幼馴染といえる存在。

表情に乏しく声も平板で、かろうじて行動から感情を感じとれる。完成された「自己」を持つが故に他者とのコミュニケーション能力に問題がある。機械的だが、エゴイスト。太一の存在を第一とし、行動の中心には常に太一をすえて行動する。
太一を殺害しようと計画を練る霧を無感情に殺そうとしたこともあった。
作中では唯一、太一が積極的に接触しようとしない人物。


島友貴

太一の友人。宮澄見里の弟。姉に対して嫌悪と愛情の入り混じった複雑な感情を持っている。

ループする一週間では「生命維持活動部」なるものを立ち上げ、食料の調達、配給をしていたが、それが見里と同種の逃避行動であるとは本人は気づいていない。

まともな人間ゆえ、見里の性質を理解こそすれ嫌悪感をぬぐえなかった。見里が要因である2度の家庭崩壊を機に「裏切られた」という思いが強くなり、それがループする一週間では見里の最後の精神的支柱である放送部部活の妨害、ひいてはアンテナを破壊するという行為につながっていく。


桜庭浩

太一の友人。味覚、金銭感覚など、常人に理解し得ない独自の感覚の持ち主。

依存的な側面を持つ者が多い部活メンバーの中では珍しく、本編中まったくといっていいほど他者に依存しない人物である。人間的にも問題らしい問題(他者に直接害を及ぼすもの)も見受けられず、作中においてはいたってまともな人物である。
人間関係において問題を抱える登場人物たちの葛藤を描いた作中においてはいささか影が薄く、登場する回数も少ない。おそらく、ループする一週間においては、放浪していたか、一人で行動することが多かったようである。

作中、ほかの部活メンバーと唯一衝突しない人物であり、また積極的に他者と接触することがない。これは、衝突でこそあるが他者との接触を望む太一とは対極の在り方である。


七香

世界に八人しか存在しない街にいる人。

謎のセーラー服少女。予兆もなく自転車に乗って登場する度に太一にぶつかってくる。太一の心象を汲み、時にギャグを飛ばし、時に慰め、時に導きと他の登場人物とは一線を画す存在感を持つ。それとなく太一の行動に影響を与え続け、彼女の導きに沿って太一はループする一週間で自分が何をすべきかを理解し、決断していく。

ちなみに、太一の人生に大幅なマイナス要素を与えてしまった曜子にははっきりとした嫌悪感を表している。

彼女の存在に関しては終盤で触れられているが、それをふまえても彼女の存在には謎が多い。


グラフィック

イベントCGは差分抜きで全部で84枚。
ボリューム、終盤のシナリオ内容を考えると少し物足りない印象。

塗りが淡くさっぱりした印象がある。各キャラの表情は微妙な感情も表現されており、パターン数豊富。
アングルによってバランスが崩れたりすることはない。


音楽

ボーカル1曲を含め全部で26曲。
BGMは世界観に合わせてか、自己主張が少ないものが多い。
特に印象に残った曲はなかった。

ボーカルはEDに1曲、Maricaさんの「CROSSING」。
歌詞とシナリオのリンク度が高くEDに相応しい曲。

ボイスは主人公以外フルボイス。
男キャラも含め全キャラ演技に何ら問題なし。むしろ皆上手い。


システム

システム画面が何となく綺麗。
バックログ、スキップ、オートモードなど各種取り揃え。
システム面での問題は特に見当たらない。
しいて言えば、キーボード対応してないくらいか。


総評

公式HP内でのあらすじ、ジャンルを見てここまでの展開を予想した人はいないだろう・・・と思えるくらいの作品。
主人公を含めた登場人物たちの人物像の描き方、緻密な世界観の構築といずれも高いレベル。
未プレイの人には是非ともプレイして欲しい作品。

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