フライブルク日記

2016/12/11
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カテゴリ: プライベート
BFが近くの学校で毎週一回、放課後に難民の男の子の宿題の手助けをしている。
イラクから母親と逃げてきた、4年生の子どもで、父親は「イスラム国」の集団に捕われの身らしい。
この子は宿題をする気はあんまりなくて、落ち着きがなく、手にした物をこわしたり、かきなぐったり、、、。それでも、工作のような手仕事には、とてもやる気を見せて、器用だそう。
「この子の将来はどうなるんだろう」と話していたら、昔、日本の公立中学の代替教員をしていた頃の経験を思い出した。
中学2年生のクラスの担任を一学期だけしたときのこと。
マンモス校のその中学には、いわゆる「問題児」とされる子や貧しい子、暴力をふるう子など、さまざまな生徒がいた。
先生たちは若い女性も含めて、威厳があって(私の目から見てだけど)、生徒を制していた。なにかというと手もだした(ビンタとか本で頭をたたくとか、、、)。それまで主婦をしていた私には威厳のオーラもなく、人様の子どもをたたくなど、どうしてもできなかった。

クラスにはひとり、学校では一言も話さずテストにも一言も書かない(つまり白紙で提出)男子生徒がいた。目がクリクリと可愛い、まだ小学生のように見える小さな男子で、いつもニコニコと笑顔なのだが、口は絶対に開かない。生活指導の先生によると、家では家族と話すことができるのだが、学校関係者(つまりクラス仲間とか先生とか)が来たとたんに、口が開かなくなるのだとか。小学校生活の間に、何か大きなトラウマとなるような出来事があったのかもしれないという。
それでも、毎日学校にやってきて、一番前の席にすわって、ニコニコと先生を見上げている。


この少年は顔じゅうにニキビなどのあざがあり、内気なこともあり、他の生徒からいささかいじめられていたようだ。
もの静かで、勉強もさえなかったが、他人への思いやりがとてもあった。
放課後の掃除のとき、掃除当番の生徒たちに「逃げられて」、わたしが一人で教室を掃除していると、いつの間にかやってきて黙々と手伝ってくれた。

ちょっと怖い顔をした男子もいた。この子は、ときどき窃盗などで警察にも知られているらしかった。彼は最初から、わたしの「威厳のなさ」を見抜いたようで、いつも不満そうな目でわたしを見ていた。
ある時、ホームルームの時間かなにかで、先の「口を絶対に開かない」男の子を、他の生徒たちがちょっと笑い者にするようなシーンがあった。それなのに、威厳のないわたしは、これに介入することができず、黙ってやり過ごしてしまった。
その日の放課後、「怖い顔の窃盗」男子がわたしのところに、怖い顔でやってきた。
「先生、あの子がいじめられているのに、何も言わないなんて、きたないんじゃないか。日頃、えらそうなことを言っても、これなら先生もみんなと同じじゃないか。」というような意味の言葉をつきつけてきた。
彼は物事の核心、わたしの偽善や勇気のなさを見事に見抜き、見事に言い当てていた。
それなのに、わたしは適当な言葉で、その場をつくろった(もう忘れてしまったけれど、心の中ではそうだった)。

学校のイベントのために、木に彫り物をして、大きな看板をつくることになった。
そのとき活躍したのは、この「怖い顔の」男子と、もう一人、普段は不機嫌そうな青い顔の少年だった。ふつうの勉強の時間(わたしが教えたのは生物と英語の時間)では、まったく何もしないどころか、授業の邪魔をする彼らが、このときは人がかわったように、積極的になり、持続力を発揮した。すてきなデザインを考え、休憩もせずに、木彫をせっせとして、作品を完成させた。


人はそれぞれ、まったく違う。今のような教育制度や教育形態に合う人もいれば、そうでない形なら自分の能力を見つけたり、発揮できる人もいるはずだ。
今のような教育の場が支配しているかぎり、少なくとも一部の子どもは、せっかくもつ自分の能力や自分がしたいことを、実現できずに終わってしまう場合が多いのは、残念なことだ。

知人のお子さんで、小学校時代に何かというと警察のやっかいになった少年がいた。
銀行マンを父親にもつ、とても頭が良い子だったが、学校がきらいで、態度が悪く先生とも意見が合わなかった。オトナになってから、彼がわたしに「子どものときから、学校の勉強ではなく、仕事がしたかった。職人のような仕事がしたくて、学校が嫌いだった」と言ったことがある。その後、彼は自営業で成功したが、30代なかばで亡くなってしまった。

先の中学校での子どもたち、目がクリクリの「学校で口を開かない」子、ニキビ顔のやさしい無口少年、怖い顔でわたしを批判した子、彼らは今では50代になっているはずだ。


そういえば、この怖い顔の批判少年は、わたしが代替え教員の1学期間を終えて、クラスの子にさよならを言った日の放課後、ひとりで教員室にやってきた。
わたしの机のところに来ると、「先生、これあげる」とカセットを差し出した。
わたしのために、いつかわたしが好きだといっていたバンドの音楽を録音してくれたのだった。
うれしくて、言葉が出なかった。本当は彼をぎっしり抱きしめて、「みんなは君を不良というけれど、君は本当はとってもやさしいんだよ。とてもすてきな才能をもっているんだよ。それを発揮して」と言いたかったのだけれど、言葉にできなかった。
今頃、後悔するばかりだ。






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Last updated  2016/12/11 08:28:09 PM
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Re:学校に合う子、合わない子(12/11)  
amelia さん
solarさんが、ずっとずっと前のことをこんなにも鮮明に覚えていらっしゃるのは、もちろんクラスを持ったこともあるでしょうが、今に至る後悔の気持ちがとても大きいものなのでしょうね。
子どもが中学と小学の今、話を読ませてもらって思いました。
ワタシは自分の子どもすらきちんと理解できているだろうか。
何が向いていて何が苦手なのだろうか。わかっているようで何もわかっていない気がします。
向き合う気持ち、もっと持とうと思います。でないと、今の日本の教育システムに押さえつけられてしまうかもしれない。
そんな危機感、感じました。
(2016/12/13 06:34:44 PM)

ameliaさん  
solar08 さん
あの学校での体験はあまりに別の世界、新しい体験だったので、今でもかなり強烈に記憶に残っています(後悔だけでなく、同じ日本の中でもこういう世界があるのだという発見や驚き)。
息子が幼稚園から学校に上がったときにも感じました。息子のように学校に向いている子どももいる一方で、幼稚園では大活躍していた元気で活発(すぎる)子がただの乱暴な生徒とみなされて、彼らがもつ能力がしぼめられていくのを。
子ども一人一人が何をしたいと望みをもっているのか、それを発揮できる場をつくってあげるのが、親や教師の役目だと思うのですが、むずかしいですね。つい目先の安全な(安全に見える)道を考えてしまうから。 (2016/12/13 07:41:50 PM)

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