バイバイ


「もうすぐお父さん帰ってくるから、待っといたってや。」
祈るように話しかけた。

六時ごろ旦那が戻り、また二人で里奈の手足をさすってやった。
胃潰瘍を起こしたらしく、鼻から血が・・・。口のチューブのせいで、口元が赤黒くなってきてる。痛そう。小児科の先生四人が、かかりっきりになってる。「傍にいてあげてください」と先生が、一歩引いた。
それから先生は「どうしますか?延命しますか?」尋ねられたけれど、こんな姿の里奈に、これ以上痛い思いはさせられない。
「延命したら、どれくらいもちますか?」
「・・・。」先生にも答えられない状態なんだ・・・。と思った。
「もういいです・・・。」

口元のあざと、鼻からの出血がなかったら、いつもの寝顔なのに・・・。

何で里奈なんだろう、何も悪い事してないのに。
小学校におねえちゃんと一緒に行くの、楽しみにしてたのに。
妹たちと遊んでたのに。
字も上手に書けるようになったのに。
まだ六年しか生きてないのに。

いたかったやろ・・・。

苦しむ姿を私たちに見せることなく、静かに里奈は息を引き取った・・・。
「けんちゃん、里奈死んじゃったよ。」「死んじゃったよ」
それしか言えなかった。
二人で泣いた。後悔した。何もしてあげられなかった。
仕事なんかせんと、家にいたらよかった。
一緒の時間が、少なすぎだよ。
ごめんな、里奈。

里奈。お父さんとお母さんが行くまで、ちょっとの間待っといてや。
ちょっとの間やからな。

平成9年9月3日生まれ。。。6歳で、天国へ

バイバイ、里奈。

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