2003年06月25日
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アメリカ果樹研修報告(2)


 今回の研修旅行に参加するまでは、「アメリカの農業は強い」と言うイメージが強かったのですが、置かれている環境は結構厳しいものがあるということが解りました。

●園主が高齢化して、後継者が育っていない。リバーサイド校の老教授のお話でも、専門分野に進んだ学生が農業に就職する率が非常に少なくなってきている。分析する能力はあっても、実際の経営はダメと言う厳しい指摘もありました。

●水問題は特に今年の渇水で興味があった点ですが、潅水無くしてカリフォルニア農業は成り立たない。通常は地上水の85%を農業用に使っているが、干ばつになると生活用水が優先されるので、都市の人たちとのトラブルもある。そこで自家用の井戸を掘って対処しているところが増えている。水代も20年前と比べると約10倍に値上がりしていて、南カリフォルニアでは水代が高すぎて農業経営が成り立たず、メキシコや中央平原に生産の比重が移っているとのことでした。飛行機から見おろしたとき大地は緑と茶のコントラストがはっきりしていて、水をかけない所は何も緑が育たないのがよくわかりました。

●都市化の波が郊外の農業地帯へと拡大し始めている。都市の治安の悪化などが進み、少しでも都市から離れようという人たちが増して、農地を手放す人も出てきているそうです。

●年々、環境汚染が進み、農薬などの使用基準が厳しくなって次第に農業がやりにくくなってきたそうです。

 しかし全人口の2.2%の農業者たちが、国内需要、輸出全てを担っていると言う点には改めて驚かされました。視察させてもらった経営者は共通に「農業は経営であり、儲からなければいけない」という哲学を持っており、前向きに農業に取り組んでおられました。研究機関も、徹底して農家の儲けになることしか研究しないという方針が貫かれていました。分業化が進んでいて、サンキストでも収穫労力の斡旋事業もやっているとのことでしたが、日本でもそのようなシステムが導入できれば、今後の規模拡大も考えられると思いました。

 また、流通機構の整備されたアメリカで「みかんの里」方式の直販所があったのには驚きました。生産者と消費者とが、直接ふれあえるこの施設をもっと有効に利用できるように考えていかなくてはいけないと思いました。それから、アメリカ農業でも成功しているのは血縁関係で結ばれた農場が多いようで、日本で現在農林省が勧めている法人化の問題も、基本的には家族経営を中心にした法人化を目指した方がいいのではないかと思いました。そこにはアメリカにない日本の家族の良さが生かされるのではないでしょうか。

 日本の農業における主婦の位置は、経営主である夫の協力者であると共に、家庭においては育児、家事、近所づきあいと、一人何役もこなしています。その点アメリカでは、女性はハウスキーパーの立場に専念していて、農業を夫と共に体を張って頑張っているという勇ましい姿は見られませんでした。経営者の妻として、労働者(社員)の管理や経理を担当しているようでした。日本においては年間を通じて雇用体勢が取れるのはまだまだ先のことでしょうが、農業を一つの企業と考えると、将来の方向はこのような分業になるのではないかと思います。まず小さい一歩から家庭内分業を試みているわが家ではありますが、まだまだ主婦が忙しすぎるようです。






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最終更新日  2003年06月25日 12時19分15秒
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