2003年07月05日
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誰が為に金は成る


            (第五回)平 民永

以前に、旅をする目的はカルチャーショックを感じるためだと書いた事があるが、今回は実際にカルチャーショックを体験した話を書こうと思う。

先日二十年ぶりにUSAへ出かけた。UA航空は行きも帰りもオーバーブッキングで超満席。行きはそのおかげでビジネスクラスへ回されて美味しい食事とゆったりした席を与えられるという幸運に恵まれたが、帰りは300ドルのフリー切符をあげるからと5時間遅れのソウル廻りに替わってくれるお客さんを1時間以上捜していた。これが日常茶飯事のお国柄だというのをすっかり忘れていた。

ロスアンゼルスのダウンタウンは5時を過ぎるとゴーストタウンになる。ホテルや銀行が立ち並ぶ地区からほんの500メートル先はもう治安が悪くて旅行者は行かない方がいいという。そんなバカな。昔は賑やかだったのにと、夜中にレンタカーで走ってみたが、やはり異様な雰囲気だった。商店は全部閉まっていて人通りは全く無いし、車もろくに走っていない。黒人が4~5人かたまってたむろしている。建物の壁はそこらじゅう落書きで汚れ、窓ガラスも割れたまま放置されていて、人が住んでいる気配もない。白人はロスアンゼルスのダウンタウンを捨てて、郊外へ新しい街を作っている。土地がいくらでもあるUSAだから出来ることだろうが、実際に目にすると相当ショックだった。そういえばロスアンゼルスのダウンタウンの高層ビルは日本資本の所有が多いそうだが、これでは儲からないのではと心配になった。泊まったホテルもかつては「ヒルトン&タワーズ」と呼ばれていたが、今年から「オムニ」と名前を変え、泊まっているのは日本人と韓国人ばかり。ロビーが2フロアある格調高いホテルなのに、会議室やカルチャーセンターは閉鎖されていて何となく寂しそうな雰囲気だった。

ロスアンゼルスと対照的に活発な雰囲気を感じたのはサンディエゴ郡だった。ロスから南へ200キロ下ったサンディエゴを中心に、リゾート開発がものすごい勢いで進んでいた。国道5号線を走っていると、オレンジ色の瓦屋根にクリーム色の壁のメキシコ風の宅地が丘一面に建てられているのを、あちこちで見かける。昔は茶色い岩肌が露出した荒れ地だったところが開発されたのだ。またトレーラーハウスばかりの街も各所に作られていた。これらの街はリタイヤした人たちが住むためのもので、私のいた町も人口は二十年前と比べて2倍に増えていた。それにつれて、二十年前よりもっと大規模なショッピングセンターが建てられ、買い物はそこへ車で出かけて済ませる生活様式がすっかり定着している。やがて日本もこうなるのだろうか。

買い物と言えば、今度の旅行での最大のショックは「日本の物価は世界一」だった。
USAのレストランでキリンの中ビンが1$90¢(輸入品ですよ)
スーパーではビールが350㏄で1缶72¢(消費税込み)

ニューヨークステーキ+コーヒー+サラダで3000円(一流レストランでチップ込み)
タクシーで22キロ走って3500円
マクドナルドでハンバーガーとコークで185円
板チョコ20cm×10cmが178円
ジーンズ2000円から2200円
Tシャツ1200円から2000円・・などなど。
数え上げればきりがない程だ。

賃金の方もそれに伴って安く、最低料金は1時間当たり4$29¢。かつて私が働いていた当時は3$10¢だったから、20年間で1$しか上がっていない。当時の為替レートでは1$が300円だったから、日本から見れば逆に賃金が半分になっている事になる。20年前のアメリカの農業を体験して感じた事は、将来の問題として賃金の高騰のために国際競争力を失うだろうと言う事だった。しかし為替レートというマジックを使うと、そのまま現在の日本に当てはまるようになってしまった。基盤整備が不十分で、自給率が少ない分だけ日本の方が深刻な問題だという気がする。USAの賃金の値下がりは10年後の日本の姿を見ているようで、おみやげの安さを素直に喜べなかったのは私だけだろうか。






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最終更新日  2003年07月05日 12時23分05秒
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