昨年、義母が膵臓がんに罹った折り、どうしてがんが治ったのかを聴くためにお会いした。
その時、そのK子さんが言うには、《酵素》を飲んだおかげだということだった。
もう手の施しようもないということで、医者から見離され、最後の一ヶ月を家族と暮らすために退院した。
抗がん剤も止め、知り合いから勧められたある“健康ドリンク”だけを飲んでいた。
いろいろな人から、いろんなサプリメントやらなんやらを勧められていたが、それだけが体に合うような気がしたそうである。
するとだんだん体調が良くなって、医者もびっくり、奇跡的に復活したんだそうだ。
その健康ドリンクに《酵素》が入っていて、有名な先生も推奨しているんだという。
その有名な先生が『新谷弘実(しんや・ひろみ)』で、本を何冊か読んで知っているという話をすると非常に喜んでいた。
K子さんの言う《酵素》とは、新谷弘実の主張する《ミラクル・エンザイム》だった。
『病気にならない生き方』の中から《ミラクル・エンザイム》の説明を引用すると、
これは私が作った造語です。「ミラクル・エンザイム」というのは、人間の生命活動を担っている5 千種以上の「ボディ・エンザイム(体内酵素)」の原型となる酵素です。
「エンザイム(酵素)」というのは、生物の細胞内で作られるタンパク質性の触媒の総称で、植物でも動物でも、生命があるところには必ずエンザイムが存在しています。
物質の合成や分解、輸送、排出、解毒、エネルギー供給など、生命を維持するために必要な活動にはすべてエンザイムが関与しています。
エンザイムの種類が多いのは、一つのエンザイムは一つの働きしかしないという特性を持っているからです。
たとえば唾液の中に含まれる「アミラーゼ」という消化酵素は、炭水化物だけに反応します。その他の脂肪やタンパク質などの消化には、それぞれ別のエンザイムが働きます。
人間の体内にあるエンザイムは5千種以上といわれていますが、細胞の中でどのように生成されているかはまだ明らかになっていません。
私がいう「ミラクル・エンザイム」は必要に応じて特定のエンザイムに作り替えられる以前の、どのようなエンザイムにもなれる可能性を持った原型となるエンザイムです。
この、《酵素》の原型となる食品を多く摂って、体内に貯えれば健康になるという筋書きである。
新谷先生はあくまで食品を摂れといっているので、健康食品を勧めているわけではない。
しかし、健康食品会社にとってはありがたい説であったので利用させてもらっているのだろう。
K子さんがドリンクを飲み始めた頃は、まだ『病気にならない生き方(2005年刊)』は書かれていなかったので、後付けの理論のはずだ。
K子さんは、奇跡の回復後この健康食品会社の製品販売をするようになり、主にこの社の化粧品を扱いつつ《酵素》ドリンクも勧めている。
化粧品が優れているのか、《酵素》ドリンクの効果か、本人の資質なのか、会うとびっくりするほどのぷりぷりの肌で、とても40歳代半ばには見えない。
『病気に~』のカバー解説によると、
―新谷弘実はニューヨークに在住する、米国ナンバーワンの胃腸内視鏡外科医で、世界で始めて、新谷式と呼ばれる大腸内視鏡の挿入法を考案し、開腹手術することなく大腸内視鏡によるポリープ切除に成功、医学界に大きく貢献する。日米でおよそ30万例の胃腸内視鏡検査と9万例以上のポリープ切除手術を行っている、この分野の世界的権威―である。
この多くの"胃腸相"の検証経験から、食事による病気の原因を割り出し、98年刊行の『胃腸は語る』により間違った食生活に警鐘を鳴らした。
『胃腸は語る』には、エンザイムの文字はないので、ミラクル・エンザイムはこの後の着想なのだと思う。
『病気にならない生き方』には、その後物議をかもすことになる説が縷々述べられている。
【 流行の健康法にはウソがいっぱい 】
私は毎日ヨーグルトを食べているという人で、よい腸相の持ち主に会ったことがありません。
人間の体は、外から入ってくる菌やウイルスに対するセキュリティシステムができあがっているので、たとえそれが体によい乳酸菌であったとしても、常在菌(人間の体にもともといる菌)でないものは、殺菌されてしまいます。
まず最初に働くのが「胃酸」で、ヨーグルトの乳酸菌は胃に入った時点でほとんどが胃酸によって殺されます。
ヨーグルトを食べると便秘が治るのは、ヨーグルトに含まれる「乳糖」を分解するエンザイム(酵素)「ラクターゼ」が大人になると不足するため、消化不良を起こし、軽い下痢を起こすためなのです。
ヨーグルトを常食していると、腸相は悪くなります。もしあなたがヨーグルトを常食しているのなら、毒素が腸内で発生し、便やガスの臭いが強くなっているはずです。
アメリカ人の大半は毎日たくさんの牛乳を飲みますが、非常に多くの人が骨粗しょう症に悩まされています。
人間の血中カルシウム濃度は、通常9~10 ミリグラム(100cc 中)と一定していますが、牛乳を飲むと、血中カルシウムは急激に上昇します。
すると体は血中カルシウムの濃度をなんとか通常値に戻そうと恒常性コントロールが働き、血中余剰カルシウムを腎臓から尿に排泄してしまい、かえって体内のカルシウム量をへらしてしまうという皮肉な結果を招くのです。
牛乳をたくさん飲んでいるアメリカ、スウェーデン、デンマーク、フィンランドで股関節骨折と骨粗しょう症が多いのはこのためです。
カテキンの豊富なお茶を毎日飲みつづけた日本人は、とても悪い胃相をしています。
お茶の先生などの仕事で大量のお茶を飲んでいる人には、胃がんの前駆症状ともいえる萎縮性胃炎を起こしている人が少なくありません。
お茶に含まれるカテキンが、抗酸化作用を持つポリフェノールの一種であることは間違いありませんが、カテキンはいくつか結合すると「タンニン」と呼ばれるものになります。
タンニンというのは植物が持つ「渋み」成分ですが、非常に酸化しやすい性質をもっており、熱湯や空気に触れることにより「タンニン酸」に変化し、タンパク質を凝固させる働きがあるため、胃粘膜に悪い影響を及ぼします。
【胃薬を飲めば飲むほど胃は悪くなる】
胃痛や胃もたれなどの症状で、胃酸を押さえる薬(H2 ブロッカー、プロトンポンプ阻害剤)を服用すると、胃粘膜が萎縮し、胃がんに発展します。
胃には様々な食物とともに、ばい菌が入ってきます。膨大な数のばい菌を胃液に含まれる強酸がその大部分を殺してくれているのです。体に不可欠な胃酸を薬で抑えてしまったら、下痢やさまざまな病気を引き起こしてしまうでしょう。
胃酸の分泌が抑えられると、消化酵素を活性化させるペプシンや塩酸が不足し、消化不良を起こします。
鉄やカルシウム、マグネシウムなどのミネラルの吸収が阻害されます。
胃酸を押さえてしまうと、腸の中の細菌バランスが崩れ、免疫力を低下させてしまいます。
【 マーガリンほど体に悪い油はない 】
もっとも酸化が進みやすい食物の代表が「油(脂)」です。
昔は、「圧搾法」といって機械などで圧力をかけて油を搾り出すという原始的な方法が一般的でしたが、現在市販されているオイルの多くは「溶剤抽出法」といって、原材料にヘキサンという化学溶剤を入れてドロドロにしたものを加熱し、油を溶け出させたうえで、さらに高圧・高熱下で溶剤だけを蒸発させるというやり方で作られています
この方法だとロスが少なく、加熱してあるので変質もしにくいのですが、「トランス脂肪酸」という体にとって非常に悪い成分に変わってしまいます。
トランス脂肪酸は、自然界に存在しないものなので、悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らすほか、がん、高血圧、心臓疾患の原因になるなど、さまざまな健康被害をもたらすことが報告されています。
そのため欧米諸国では、食物に含まれるトランス脂肪酸の量に上限値を定め、それを超えるものは販売が禁止されています。
そして、このトランス脂肪酸をもっとも多く含んでいるのが、「マーガリン」なのです。
もともと植物油というのは常温下では液体となっています。これは植物油に不飽和脂肪酸が多く含まれているからです。同じ油でも動物性の脂肪が常温で固体であるのは、飽和脂肪酸を多く含んでいるからです。
なぜマーガリンが常温下でも固まっているのかというと、水素を添加し、不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸に人工的に変化させているからで、これ以上悪い油はないといっていいでしょう。
各項目の関連業団体から抗議の質問状を受けたりしているが、僕の意見では概ね新谷先生の説に賛成である。
ただし、牛乳、ヨーグルト、お茶、胃薬、マーガリン等、ここにあげられたものすべてが全く危険でだめということではなく、“健康神話”に踊らされて、摂りすぎるようなことは避けるべきだと言いたい。
この他、白米、肉、酒、タバコ、水道水と矢継ぎ早に危険を訴えるのだが、基本的概念抜きで単品を危惧しても意味がない。
これらのことは、"ゲルソン療法"に影響されていることは明らかで、特別なことではない。
賛成であるが、これに捕らわれすぎるのもどうかと思う。
最後の章で、これも全く同意すべきことが論じられている。
【 「愛」は免疫力を活性化させる 】
病気の人が、何か目標を得たとき、奇跡的に病気が回復することが実際にあります。
がんでとても苦しんでいた人が、苦しんだあげくに、何かをきっかけに感謝の気持ちを持てるようになり、そこから回復していったという例は世界中にたくさんあります。
病気を癒すというのは、たんに悪いところを切り取ったり、薬を与えたりすることではありません。
その人が心からハッピーになれるようなモチベーションを患者に上手に与えることができる医者が良い医者です。
では、なにがいちばん強いモチベーションになるかというと、やはり「愛」だと思います。
健康になるには、人を愛するという気持ちが絶対必要なのです。
人は、本当に幸せを感じていると、免疫機能が活性化することが、血液検査でわかっています。
また、幸せを感じているときというのは、神経系は副交感神経が優位になっているのでストレスが減ります。
ストレスが減るとフリーラジカルの発生が抑えられるので、腸内バランスが善玉菌優位になっていきます。
そして、腸内環境がよくなると、そのよい状態が副交感神経を通して脳の視床下部に伝達され、その情報を大脳が受け取り、「ああ幸せだな」とふたたび実感するのです。
人間の体というのは、免疫系でもホルモン系でも神経系でも、どこか一つが単独で動くことはなく、すべてが影響しあい、ひとつのサイクルが回り始めると、体全体が一気によいほうへと変化していくのです。
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