今日も空よりの来訪者
今日は森の賢者フクロウが
ホウホウと少女に語って聞かせてくれる
これはこれは遠い遠い過去の出来事
嘱望されし太子
その前は血で血を争い
異母兄弟・実兄弟・従兄弟・親戚
周りで後押しする者達の思惑に駆られ
次々と命を落としていく
とうとう男子の後継者が数少なくなり
また血で血を洗う政権争いが嫌になり
女帝をたてることにしたそうな
その名を『推古女帝』と申されてな
この国初の女性の王様じゃ
彼女は太子を指名した
補佐になるように
後継者としての太子を賜り
太子は念願叶って血で血を洗う混迷状態から
平和な国を
海の国向こうの大陸のように
法で律することのできる国を目指すことに
専念できるようになった
この国の初めての憲法
十七条を定め
一番最初に持ってきた有名な下りがある
『和をもって尊しとなす』
自然も調和で成り立っておろう?
『和』を大切にせねば
お前さんが生きるに大切な空気は乱れ
地は血を吸い
川は濁る
とても気分が悪なろう?
乱すのはいつも人間
そして、
気づき直そうとするのも人間であるのが
とても皮肉であるが
ホウホウと
賢者フクロウは
白々と明ける夜空に
また今度と飛び立ち、
孫達の待つ巣穴へと戻っていく。
青い髪の少女は賢者の言葉に願う
太子なような人達が
沢山増えることを
太子のように
『和』を大切にすることができることを
少女は呟く
たぶん私が住めないほど
気が乱れたら
きっとこの地に住む生きとし生けるもの達の
最後になるのかもしれないと
けれど
以前のように
気づいて川を綺麗にしてくれた人達もいたわ
まだまだ、住める希望があるかも
小さな希望
小さな願い
誰しもが願うだろう願いを
少女も呟き
住める世界が戻ることを願う