杖バルって何だろうねぇ

杖バルって何だろうねぇ

第5話


 ホリドーへ、ペア狩りに行ったときのことだった。いつもはいかないその場所に、不自然な階段を見つけた。
 不思議な階段は、暗く地の底に続くような趣で、入ったが最後二度と出てこられないような階段だった。
 その日は、春の陽気にしては蒸し暑くいつも重力のバランスが崩れたホリドーが、気持ち悪いくらいに正常だった。
 イ=トゥダナを倒し、気になったジャンヌはその暗い階段を降りる決断をした。前に来たときは、見えない壁に阻まれていたその階段が、今はない。 降りつく先もわからない階段を一歩また一歩進む。
 気が遠くなるような時間を進む。いつしかクロノス大陸で出会った人々が走馬灯のように過ぎていく。その声が今にも聞こえてきそうだった。
 1度振り返り、右手を軽く挙げ、みなに別れを告げる。
「さらば、クロノス大陸に残る人々」
 引き止める腕を振り切るように駆け出す聖女ジャンヌ。
「しまった!!」
 右足は空にまい、体全体が前のめりになった。そこに進むべき階段がなかった。 暗く何もない世界で、ジャンヌは落下した。
 どこからか声が聞こえてきた。優しい声だった。声の主はアルアと名乗る女性だったか。優しい腕に受け止められたかと思った瞬間。安堵したジャンヌは気を失った。

注)この話はフィクションで、実際にホリドーが軽くなることはないし、見えない壁も不思議な階段を降りることもできません。

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