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2009.10.09
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カテゴリ: Jリーグ観戦記
川崎フロンターレ 2-0 横浜F・マリノス
【得点者】
後半29分 谷口博之(川崎フロンターレ)
後半38分 レナチーニョ(川崎フロンターレ)

「暑くてキツいのはわかるが、相手も一緒。いや、相手のほうがむしろキツいはずだ。先に1点奪って試合を決めてしまおう」
 残暑が厳しいなか、3日に1度という超過密スケジュールで試合を消化してきた川崎フロンターレが相手だ。しかも、裏で何かが動いたとしか思えないJリーグ同国対決で名古屋グランパスに敗れ、フロンターレの選手は精神的にも傷ついている。横浜F・マリノス率いる木村浩吉監督が、ハーフタイムにそうハッパをかけたのも頷けようというものだ。マリノスの今季は、連敗こそないものの、連勝は「2」止まりだ。26節で首位鹿島アントラーズを迷走状態に追い込み、前節では浦和レッズをアウェイゲームで下した。ここで死に体のフロンターレを叩いておけば、リーグ終盤ラスト7での巻き返しも狙える。木村のプランは明確だった。

 後半29分、関塚隆監督が先に動く。疲労が見え始めた村上和弘を井川祐輔に交代させたのだ。右サイドバックの森勇介はそのままである。寺田周平や横山知伸、さらには中村憲剛や谷口博之など、指揮官は選手たちにポリヴァレントであることを求めてきた。それが、限られた戦力で2年連続ACLを闘ってきた教訓だった。
 その直後のことである。気づけばフロンターレのチームカラーである何千もの「アズーロ&ネロ」が激しくグルグルと揺れ、スタジアムを支配していた。あっという間の先制点だった。火の玉小僧・勇介のクロスボールが高くクリアされ、ゴール中央に落下してきたところを谷口博之が頭で押し込んだのだった。

 マリノスは、前半を無得点のまま終えたのが痛かった。36分には左サイドバックの小宮山尊信が、同40分には右サイドバックの田中裕介がフロンターレ守備陣を崩しながら、渡邊千真のシュートはいずれも阻まれた。フロンターレは時間の経過とともにゴール率を上げてゆくチームだ。といっても、エンジンのかかり具合が遅いというわけではない。体力のある前半にも増して、後半の得点率が高いということだ。
 同じ日、ガンバ大阪が大宮に4-1で圧勝し、50ゴール台一番乗りをはたした。そのガンバとジュビロ磐田に次ぐ攻撃力を誇るフロンターレは42ゴールのうち、じつに半分以上の27ゴールが後半にマークされたものだ。38分のレナチーニョの追加点を加えれば、それもこの日で後半だけで29ゴールとなったわけである。17位・ジェフ千葉の総得点よりも多いのだから、いかに彼らが後半に強いかがわかるだろう。「最後まであきらめない」と口に出すのは簡単だが、不言実行となすには物理的、精神的な辛さを自制して突き抜ける必要がある。この件について直撃質問をしたことはまだないが、関塚監督の人心把握術が成功した結果なのかもしれない。


 10月30日のACL準々決勝を思い起こしてもらいたい。05年10月以来、公式戦10試合で一度も負けていなかった名古屋グランパスに、フロンターレは大逆転負けを喰らっている。このところ秋祭り続きで、本ブログへのレポート報告は間に合わなかった。しかし第1戦を1-2で落としたグランパスにかかったプレッシャーは、相当なものだったはずだ。それを第2戦の試合終了間際にハネ返して準決勝進出を決めたグランパスには、フロンターレに欠落ぎみの「逞しさ」を感じたものである。

 閑話休題。
 いずれにしろ、無得点のまま後半を迎えたマリノスは、フロンターレを調子づかせてはならなかった。司令塔の中村憲剛や鄭大世(=チョン・テセ)、ジュニーニョといった攻撃のキーマンを球際で抑え込んだ前半を、残り45分でも維持したかった。とりわけテセを頂点に、両サイドからの侵入を図るジュニーニョとレナチーニョの3人は危険である。この日のマリノスの2トップだった坂田大輔と千真のふたりは、チーム総得点のおよそ3分の1に当たる11ゴールを今季リーグ戦であげている。だがフロンターレの3人は、総得点「42」のうち、なんと2分の1に及ぶ20ゴールを量産してきたゴーラーたちだった。彼らは、フロンターレをラッシュさせる脅威的なトリオなのだった。
 マリノスは後半開始5分、田中裕介のドリブルから生まれたチャンスを狩野健太がシュートまでつなげたものの、クロスバーを越えてしまう。以後、次第に山の手クラブのマーキングが緩くなり、伏兵・タニの先制を許してしまうのだった。

 試合後、木村監督は珍しくライバルを褒めた。
「もう少し早い時間での交替も考えたのですが、健太がきちっとボールに絡んでいたのでタイミングが難しかったんです。それにフロンターレは連戦続きだったでしょう。いずれ足が止まるんじゃないかと思っていたんですね。だけどフロンターレは、最後までチーム一丸となってました」
 木村監督は2分後に坂田を下げて山瀬功治を2トップの一角に投入したが、鹿島アントラーズ、清水エスパルスに次ぐリーグ3位の「壁」を崩すことは最後まで叶わなかった。こうして38分、伊藤宏樹が仕掛けたカウンターが憲剛、ジュニーニョとつながれ、レナチーニョの絶望的な2点目を生むのだった。

 今季のフロンターレは、ACL後のリーグ戦で勝てない試合が続いた。こうした経緯が木村監督の錯覚を生んだのだろう。だが逆に、フロンターレはACL準決勝への道を閉ざされたことで、開き直りともいえる「一丸性」をチームにもたらせていた。それを関塚監督は「川崎魂」と呼び、選手たちを褒め讃えた。
 なにしろ首位エスパルスと2位アントラーズとの勝点差は「7」である。ただし9月12日の25節、カシマスタジアムに乗り込んで3-1とリードしていた試合を、不可解なレフェリングで残り16分で「中止」に追い込まれている。マリノス戦に勝利して10月7日、すなわち3日後の再試合でリードを守れば、その差は「1」まで一気に縮まる。ACL準々決勝で敗れたことで、来季同大会の出場圏内である「3位以内」を確保することだけが彼らの最終目標となっていた。雑念がなくなった彼らには、「川崎魂で調子づける」可能性がおおいにあったわけである。
 憲剛は、いかにも清々しい表情で言った。
「ACLで望みを断たれて、リーグ戦でも連敗中だったじゃないですか(=26節0-2vs浦和レッズ、27節1-2vsガンバ)。これ以上悪い状況にはしたくなかったんです。とにかく今日の試合だけは集中していこうって、チームの一人ひとりが心の中で思っていたんじゃないでしょうか。タニが決めてくれて、あれでボクらの勢いが生まれましたよね」
 川島永嗣が続けた。
「ACLに負けたことが本当に口惜しくって……。今日のフィールドプレーヤーは、体力的にしんどいゲームだったと思います。でも今日を乗り切ったことで、残り6試合も勢いよくいけるんじゃないかと。また中3日で鹿島との再戦がありますけど、フレッシュな16分になると思います。もう一度チーム一丸となって頑張りたいですね」

 注目の10月7日水曜日、フロンターレはアントラーズの岩政大樹に開始直後のゴールを浴びたが、「16分」を最後まで守りきった。これで勝点を一気に「49」まで伸ばし、4チームが「勝点1差」のなかで凌ぎを削り合うという混戦状態に割り込んだ。マリノス戦での勝敗がいかに重要だったかがわかる、天下分け目の正念場だったわけだ。


【エスパルス勝点50】
29節vs大分トリニータ(A)、30節vsFC東京(H)、31節vs柏レイソル(A)、32節vsガンバ(H)、33節vsF・マリノス(A)、最終節vs名古屋(H)。

【 アントラーズ勝点50】
29節vsジュビロ磐田(A)、30節vsジェフ千葉(H)、31節vsモンテディオ山形(H)、32節vs京都サンガ(A)、33節vsガンバ(H)、最終節vs浦和レッズ(A)。

【ガンバ勝点49】
29節vsサンフレッチェ広島(A)、30節vsF・マリノス(H)、31節vs京都(H)、32節vsエスパルス(A)、33節vsアントラーズ(A)、最終節vsジェフ(H)。

【フロンターレ勝点49】
29節vs大宮アルティージャ(A)、30節vsサンフレッチェ(H)、31節vsジェフ(H)、32節vsトリニータ(A)、33節vsアルビレックス新潟(H)、最終節vsレイソル(A)。


 またアントラーズは11月28日の33節・ガンバとの直接対決、そして最終節・埼玉に乗り込んでのレッズ戦が山場となるはずだ。
 ガンバは32節でエスパルス、33節でカシマスタジアムでの決戦を続けて迎えるが、10月17日の29節・曲者サンフレッチェとのアウェイゲームが最初の難関となる。続く30節にはマリノス戦もあり、終盤戦でかなり厳しい相手が立て続けに待っている。
 ガンバとは対照的に、最もラクに思えるのがフロンターレだ。30節のサンフレッチェ戦をホームで迎えられるのも都合がいい。ただし要注意は、33節のアルビレックス戦だ。これもホームゲームとなるが、勝点「46」で3位以内を虎視眈々と狙っており、10月4日の28節ではアントラーズをアウェイで破り勢いに乗っている。
「ラスト6」をどう観るか。フロンターレの反撃で一気におもしろくなったリーグ終盤戦に注目である。

【了】





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最終更新日  2009.10.09 12:44:38
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