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2014.07.01
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6月28日@エスタディオ・ミネイロン(ベロオリゾンテ) 57,714人(93%)

ブラジル 1-1 チリ
     3(PK)2
【得点者】
前半18分 ダビドルイス(ブラジル/チェルシー)
前半32分 アレクシス・サンチェス(チリ/バルセロナ)

 ウルグアイのベスト16敗退で、ペンタ(=5度制覇)を塗り替えたいブラジルの優勝が一歩近づいた。クォーターファイナルをクリアすれば、セミファイナルの相手はドイツになる可能性が高い。ここで気になるのは、カナリア軍団のCBチアゴ・シウバ(=パリ・サンジェルマン)の言葉だ。「ブラジルは過去19大会すべてに出場してきたが、今回が最も重要な大会になる」。スタジアム建設をめぐる汚職や、いっこうに埋まらぬ貧富の差、教育施設や医療施設の不足など、BRICS5ヶ国(=ブラジル、ロシア、インド、チャイナ、サウスアフリカ)が共通に抱える内憂で、自国開催のワールドカップに異を唱える国民は半数近くにも及ぶという。
 とりわけ、スタジアム建設の裏で跋扈した輩たちの罪は重大だ。ブラジル開催は06年に決定したものだが、7年の月日を経ても一部のスタジアムが開幕に間に合っていなかった。ワールド杯の第1回大会は84年前の1930年、ウルグアイで開催された。FIFAがはワールド杯構想をぶち上げたのは28年、ウルグアイに決定したのが29年、当時の参加国は13ヶ国にすぎなかったが、牛の数のほうが多いという人口200万人の小国でさえ、わずか8ヶ月でスタジアム建設をクリアさせているのだ。2億3000万の人口を抱え、急激な経済発展を続けるブラジルに、なぜそれができなかったのか。
 正式な入札も行なわれないまま、裏金によって建設権を強奪した輩たちが、リベートで大金を手にしていたのだ。FIFAは8~10個の新設スタジアムをCBF(=ブラジルサッカー連盟)に要請したが、ジャングルの中に作ったアレーナ・アマゾーニアを含め、12個も建設している。こうして輩たちが莫大な富を得た結果、スタジアム建設に必要な各資材の価格が跳ね上がり、日用品や食料品を含めた物価にも連動した。やがて資材の入手すらも困難となり、建設を一時ストップせざるをえなくなったわけだ。

 さて、大もうけをたくらむ輩たちが次に何をしたかというと、スタジアム建設再開のための政府支援金確保だ。「このままではスタジアムができませんよ」と政府を脅かし、一粒の飴で二度おいしい思いをするという世界最強のマリッシアたちだった。、

 閑話休題。
 いずれにしろ、セレソンに対する厳しい世論を覆すには、優勝しかなかった。そんなプレッシャーが、チアゴシウバの言葉にみてとれたのだ。

 ワールド杯開幕の2週間前、筆者が敬愛する先輩ジャーナリスト主宰の勉強会に参加した。テーマは、ずばり「ワールド杯ブラジル大会」である。およそ40人ほどの出席者にアンケート用紙が配布され、各人の予想を求められた。ファイナリスト2チームと、その結果、そして3位決定戦の勝者予想である。
 じつは筆者の頭には、3チームのなかにブラジルの名はなかった。くだんのような理由から、初戦のクロアチア戦では二重の圧力がセレソンにかかり、ドローに終わるのではないかと踏んでいたのだ。結果、チームの共通意識を徹底させたミゲル・エレーラ率いるメキシコがグループ予選トップで抜け出し、ブラジルはD組1位で突破したウルグアイにクォータファイナルで敗れるという図を描いた。つまり、64年前のブラジル大会でショック死が相次いだという「マラカナンの悲劇」の再現である。

 ところが、ウルグアイが初戦のコスタリカ戦でまさかの完敗、第2戦から戦列復帰したルイス・スアレスの2ゴールでイングランドを蹴落としたものの、そのスアレスが、悪癖の噛みつき事件をイタリア戦で起こして追放されてしまう。プレミア33試合で31ゴールを記録したリバプールのエースは、今季のリーグMVPにも選ばれたウルグアイの英雄だ。暴力行為でレッドカードを提示されたのは、カメルーンのソングやポルトガルのペペと同じ愚行だが、そのふたりがチームに与えた影響以上に、スアレスの強制退去はウルグアイに大打撃だった。けっきょく、弱冠22歳のハメス・ロドリゲス(=モナコ)にスーパーゴールを決められ、隣国へと帰って行ったのである。

 筆者が予想した決勝カードは、アルゼンチンとチリだ。「準優勝チリ」と記入した参加者は、おそらくほかにはいなかっただろう。アルゼンチン人のマルセロ・ビエルサ監督が率いた前回大会のチリは、大きなサプライズだった。日本人とさして変わらぬ平均身長にもかかわらず、最後まで走力とスピードを失わず、自国開催の62年以来白星から見放されたチームを16強にまで進めている。そして、このときに敗れた相手が、やはりブラジルだった。注目していた開幕戦で、ブラジルはPKとロスタイムのゴールでクロアチアを逆転した。王国は、やはり筆者の予想を裏切ってみせたのだった。

 ホルヘ・サンパオリ監督は、彼が信奉するビエルサが築き上げたチームをベースに、さらなるバージョンアップに尽力した。前回大会はブラジルに次ぐ2位で南米予選を通過しているが、今回もブラジルとコロンビアに次ぐ3位で突破し、2大会連続の出場を決めた。
しかも大会レギュレーション23人のうち、じつに3分の1が前回大会の経験者である。
 この4年間で彼らがいかに大きな飛躍を遂げたかは、序盤から明白だった。初戦のオーストラリア戦は4-2-3-1でスタート、第2戦ではスペインの中盤を潰した3-4-3でディフェンディング王者を完封、唯一落としたのがスペイン戦と同じシステムで臨んだオランダ戦だ。とにかく走り回り、相手にプレッシャーを与え続ける。ときにはFWのアレクシス・サンチェスまでもが守備へ回り、その十数秒後には、相手DFにプレスをかけてミスを誘発させた。


 ゲームを支配していたのは、明らかにチリだった。しかしブラジルには、グループ予選だけで4ゴールのネイマール(=バルセロナ)がいる。高速ブルドーザーのような肉体ドリブルを仕掛けるフッキ(=ゼニト)もいる。チェルシーで8ゴールをあげたオスカールは、ネイマールと同じ22歳で攻撃のバリエーションが豊かだ。そんな彼らの飛び出しを引き出すのが、ワントップのフレッジ(=フルミネンセ)である。
 どちらが先制しても不思議ではない「技」vs「足」の闘いが動いたのは18分、チアゴシウバのコーナーキックからだった。だが先制されたあとも、チリは反撃の手を緩めようとしない。前ががかりになっても失点はしない。そんな自信に満ち溢れていた。
 彼らの持久力がどこまでもつのか、さすがに懐疑的にもなる。アトレチコ・ミネイロとクルゼイロが本拠とする超アウェイで、ラ・ロッハ(=赤い軍団)はジャイアントキリングだけを狙っていた。しかし、彼らもバカではない。24分過ぎには、日本も得意とする中盤のボール回しでゲームを落ち着かせ、いったん体力の温存をはかる。こうして一息おいてから、急激にスイッチを切り替えるのだ。サンチェスの同点ゴールが決まったのは、32分のことだった。

 サンパオリ監督は、こんな予告をしていた。「ブラジル戦ではポゼッションではなく、スペースの取り合いになるだろう」。中盤でのポゼッションから一転、スペースを奪ったあとのチリの動きは怒涛のようだ。彼らのアグレッシブさは、アディショナルタイムに入ってからも衰えることがない。アルトゥール・ビダル(=ユベントス)からのパスを受けたチャルレス・アランギス(=インテルナシオナウ)の強烈シュートは、守護神のジュリオ・セザール(=トロント)をおおいに慌てさせている。もしチリが前半でもう1点決めていれば、カナリア軍団の野望は打ち砕かれていたにちがいない。

【つづく】





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最終更新日  2014.07.01 12:33:20
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