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2014.07.02
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6月28日@エスタディオ・ミネイロン(ベロオリゾンテ) 57,714人(93%)

ブラジル 1-1 チリ
    3(PK)2
【得点者】
前半18分 ダビドルイス(ブラジル/チェルシー)
前半32分 アレクシス・サンチェス(チリ/バルセロナ)

 ワールドユース選手権(=05年~U-20ワールドカップ)を母国で迎えた01年、のちにコロンビア代表監督の要請を受けるホセ・ペケルマンは、こんなことを語っている。
「アルゼンチンのサッカーはドリブルとパスが特徴です。しかし、それだけでは勝てません。現代のサッカーで勝つためにはスピードのあるパスと強さ、そして速さが必要でしょう。コロンビアもパスはうまいけれど、なかなか勝てませんよね。もうひとつアルゼンチンの特徴をあげるとすれば、アグレッシブな姿勢です。勝ちたいという意志が強い。パスひとつとっても、ゴールを陥れるためのパスを出すという意識が強いんです」
 日本からは熱血漢・西村昭宏が率いるチームが参加し、佐藤寿人や前田遼一らが名を連ねた当時だった。しかし「勝ち点3」という中国以下の成績しか残せず、早ばやと帰国している。


「王国の壁を乗り越えられなかった」という現実をつきつけられたサンチェスは、両手で顔を覆って抑えきれぬ涙を隠した。だがグループ予選を突破したあと、彼は自信に満ちた表情で胸を張ったものだ。「いままでのチリには勝者のメンタリティがなかったんだ。だけど今回は、スペインにも勝ってるからね」。チリの“最も危険な小兵”は、スイスの“火の玉小僧”ジェルダン・シャキリ(=バイエルン)と同じ169cmしか身長がない。公式発表にしたがえば、香川真司や長友佑都よりも小さいことになる。それでも彼らは、ブラジルやアルゼンチンの守備陣を苦しめたのだ。日本人に同じことができないわけがない。では、彼らと日本人では、いったい何がちがうのか。

 圭佑は「優勝」という言葉で自らにプレッシャーをかけ、同時に他の選手たちにも暗示をかけた。知将や名将と言われる指揮官が、選手たちとのコミュニケーションのなかでよく用いる心理的手法だが、すくなくとも筆者の記憶では、ザックの口から「優勝」という言葉を聞いたことはない。カリスマ性をもった選手一個人から発信された言葉に、周囲の選手たちは奮い立たされた。何の根拠もない自信が芽生え、代表という寄せ集め集団を前進させた。しかし、どんなに強い「言葉」であっても、「形」にならなかったら砂上の楼閣である。彼らは「結果」を出す前に、足元から崩れる砂のように自らの「形」を失っていった。いちど迷路に入り込んだ負のスパイラルは、キャンプ地の選定ミスも重なって、さらに事態を深刻にした。そして、選手たち自身を傷つけていった。

 チリは、たしかに王国の前に散ったが、すくなくとも強烈な「形」をもっていた。サンチェスが言う「勝者のメンタリティ」とは何か。彼はアルゼンチンと自分たちを比較し、「彼らはピッチに立った段階で勝者のメンタリティをもっていた」とも語ったそうだ。
 マルセロ・ビエルサからホルヘ・サンパオリへとバトンタッチされたアルゼンチン・スタイルの“教室”で、サンチェスたちは「勝者のメンタリティ」を習得したのだろう。事実、スペインを前にしても、ブラジルを前にしても、最後まで自分たちの勝利を信じながら死闘を演じた。言葉だけに終わらず、それをピッチ上で実行してみせた彼らがもっていたのは、飽くなき「闘争心」である。そしてペケルマンもまた、コロンビア代表に「勝者のメンタリティ」を注入してきた。それほどサッカーでは、“先生”の力と才能、センスや経験値が鍵を握る。どんなに田舎臭いオヤジであっても、02年大会でペンタを実現したフェリポンは、カナリア軍団には絶対的な存在なのだ。たとえ代表監督からの引退を発表したとしても、オットマール・ヒッツフェルトがスイスにもたらせた影響は絶大なのだ。

 決勝トーナメントの緒戦では、あのドイツをアルジェリアが苦しめた。予選で敗れたボスニア・ヘルツェゴビナは、歴史的な1勝を3つに分裂した祖国へプレゼントした。「サッカー」というメディアを通して複数の民族をまとめ上げたイビチャ・オシムは、彼らが残した功績に感謝の涙を禁じえなかったにちがいない。ワールドカップ初出場で「勝ち点3」は、日本どころか韓国にもなしえなかったウルトラCの大技である。だから彼らは、故郷の空港ロビーに笑顔で立てたのだと思う。
 日本代表は、アルジェリアにもボスニア・ヘルツェゴビナにも及ばぬ2敗1分で帰国の途についた。ギリシャ戦でスーパーセーブを連発したコスタリカGKのケイラー・ナバス(=レバンテ)は、「我が祖国、コスタリカのために闘った」と咆哮した。はたして日本代表の誰に、ナバスと同じ表現ができるだろうか。筆者のおぼつかない記憶ではあるが、「被災地の子どもたちのためにも勝つ」――そんな言葉すら、ひと言も発していないはずだ。

 ベスト8の進出国がすべて揃った早朝、気がつけば、生き残ったのはすべてトーナメント表左ブロックのチームだった。内訳は中南米4ヶ国と欧州4ヶ国、同一大陸同士の潰し合いはブラジルvsコロンビア、そしてフランスvsドイツの2カードである。
「よくできました……」と、そう呟きながら、ひとり再び自問自答を繰り返す。まちがいなく「史上最強」だったはずの日本代表に足りなかったものとは、はたして何だったのだろうか。コロンビアやコスタリカのサッカーを観ながら、いまいちど考えてみたい。なぜなら、彼らが今いる位置に、日本もいなければならなかったからだ。

【了】





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最終更新日  2014.07.02 18:25:22
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