愛犬のために

愛犬のために

もう一つの血管新生阻害剤

サリドマイド が有名です。
癌に効果がある、ということが何度かニュースで取り上げられましたのでご存知だと思います。(経緯等は 人災再び:サリドマイド が詳しく解説しています)

FDAが認可していることもあり、国内でも癌に対して投与する例は多いようです。
大きく分けると、 サリドマイド癌治療・癌との共生を探る の様に、他剤(COX-2選択的阻害剤セレブレックス等)と併用して、大腸癌や肺癌等の成長をまず抑えようとするやり方と、 多発性骨髄腫のサリドマイド療法 に見られる様に、(現時点では再発性・難治性の骨髄腫患者のみを対象とするようですけれど)他剤との併用も視野に入れながらサリドマイド自体を治療目的として使用する場合の2通りあるようです。

どちらの場合も、サリドマイドの副作用(催奇性や血栓塞栓症等)が大きいため、厳重な薬剤・投薬管理は必須、としています。( 「多発性骨髄腫に対するサリドマイド適正使用ガイドライン (平成15・16年度厚生労働省関係学会医薬品等適正事業推進事業)」


最近、多発性骨髄腫に対し、サリドマイドの副作用である催奇性等を減少させ、抗骨髄腫作用を増強したとされるレナリドマイド(レブリミド)がFDAの承認を受けたようです( レブリミドの新薬申請を承認  MDS治療でFDA )。
ネーミングから推察されますように、サリドマイドの誘導体で、サリドマイドに反応しない患者にも効果があったということですけれど、催奇形性の副作用も程度の差こそあれ同様に付き纏っているようです。
副作用としては、血液毒性(好中球減少と血小板減少)と深部静脈血栓症と肺塞栓症のリスクが大きい、とのことです( 骨髄異形成症候群に対するレナリドマイドの有効性



また、がん以外にも色々用途が模索されているようで、例えば Thalidomide for the treatment of chronic graft-versus-host disease は同種骨髄移植での慢性 GVHD(移植片対宿主疾患) 患者に対し、サリドマイドを使用した例です。
通常療法に抵抗性を持つ23人とハイリスク患者21人に対して使用した結果は、トータルの生存率は64%で、抵抗性を持つ患者では76%、ハイリスク患者では48%という結果の様です。(生存率の期間が明記されていませんけれど、多分投薬期間の6ヶ月まででは無いかと思います。)
有効と思われるけれど、効果はプレドニゾンとの(新規患者での)比較検証が必要、と結んでいます。

骨髄移植推進財団の ハイリスク白血病における急性GVHD重症度生存率 スタンダードリスク白血病における急性GVHD重症度生存率 を見ますと、6ヶ月でも3年(5年)でも大きな差はなく、効果も確かにありそうな感じはします。



更に、犬や、他の動物での検証も割りと見つかります。

でも、単独使用の場合は、 ONGOING EVALUATION OF SINGLE AGENT THALIDOMIDE IN DOGS WITH MEASURABLE CANCER (ページの一番下にあります)や、 胸腺欠損マウスでですけれど Effect of thalidomide on growth and metastasis of canine osteosarcoma cells after xenotransplantation in athymic mice の様に、特に目立った効果は見られないようです。

寧ろ、 Thalidomide as Replacement for Steroids in Immunosuppression After Lung Transplantatio の様に、他剤と併用して得られる大きな免疫抑制l作用を期待する、という使い方の方が多いかも知れません。


ここまで書いてきて、サリドマイドに免疫抑制効果?と思って再度googleで『サリドマイド 免疫抑制』で検索したところ、 悪魔のクスリが福音の妙薬に!
『ジョン・ホプキンス大学の骨髄移植部門の研究者達が動物実験で、サリドマイドを投与するとGVHDが全く発生しないことを見出しました。この発見でサリドマイドは免疫抑制剤としての効果が確立されました。日本ではGVHDの治療にサイクロスポリンとステロイドの組み合わせが目下使われています。』
という記述があり、この効果もよく知られている様です。


サリドマイドの使用に関して、 Thalidomide 'fights blood cancer' には、『私たちの願いは、より優しくて効果的な療法を見出すことです。サリドマイドがその一翼を担うかも知れません。』とあります。
抗癌剤による治療が体に大きな負担を強いることは周知の事実と思います。
抗癌剤は癌細胞のみならず正常細胞まで無差別に攻撃する、ということも聞かれます。
そして、その割りに効果が上がらないことも。
(勿論、癌の種類とステージによっては、抗癌剤が充分効果的な場合もあるとは思います。)

でも、例えば、COX-2を調べている時目に止まったこの Lung Cancer: Experimental Therapy Shows Promise in Patients with Advanced Lung Cancer というレポートには

Typically, about 10 percent of lung cancer patients respond to Tarceva. In Reckamp's study of the combination therapy, about 33 percent of patients responded
タルセバは肺癌患者の凡そ10%にしか効かないけれど、(セレブレックスとの)コンビネーションでは約33%に効果があった

"Tarceva alone is a great drug and has a lot of clinical benefits, but for a small proportion of patients," Reckamp said
タルセバは単独で使用しても素晴らしい薬で、多くの臨床的有用性がありますが、その恩恵に預かる患者は少数です


始めは皮肉かと思いましたけれど、タルセバの 臨床試験の結果 を見て納得しました。
Tumor Responseはプラシーボが0.8 %しかないのにタルセバは8.9 %ですので、そういう意味から言えば確かに承認されてもおかしくはないと思います。
進行性の肺がんで延命効果を有する唯一の治療薬がスイスで承認取得 には
『進行性の非小細胞肺がんの治療法には選択肢がほとんどありませんでしたが、Tarcevaは延命効果が期待できる治療薬として、さらに化学療法にともなう副作用が認められない薬剤として、患者さんに提供できます』
とあります。
それが更に3倍も効果が見込めるのであれば正に奇跡の薬かも知れません。(これも皮肉ではありません)


でも、それはそれとして、疾患対象者の7割に効果が見込めない、ということも厳然たる事実です。
それだけ『制癌』が厳しいtということなのでしょう。

サリドマイド癌治療・癌との共生を探る Thalidomide 'fights blood cancer' の様に、癌の『治療』ではなく『安定化』を目指す、ということも選択肢の一つとしては妥当かな、とも思います。


特に犬の場合はまだまだ癌治療が功を奏しない場合が非常に多いと思います。
私の周囲でも、ヒトも含めてこの疾病の発生が目に付きますけれど、未だに1例も完治したケースに遭遇していません。
犬の場合は、殆どが安楽死を選択し、ショックからもう二度と飼わない、という人もいます。
勿論、地域的な特性(農村部)として、定期的検診を行う飼い主が少ない、初期の癌を見抜ける獣医師も少ない、等が大きく影響しているとは思います。

ヒト並みの治療成績が出るのであれば、サリドマイド + セレブレックス が犬にも適用できる様な環境になって欲しいと思います。
(現時点では多分入手すること自体が難しいと思います。日本・アメリカのサイトをかなり見ましたけれど、個人所有のペットに適用している例を殆ど見かけません)


ヒトの場合は、サリドマイド+セレブレックスに更に アーテミシニン を加えた アルテミシニン誘導体+サリドマイド+セレブレックスを用いた癌代替医療 等も検証されている様です。(アルテミシニン単独での投与例も見受けられます)




(HDDの換装は失敗です。Outlook Express のメッセージルールの移行等が面倒だと思い、HDD丸ごと移行しようとして返って嵌ってしまいました。現在は元に戻しています。今週末再チャレンジします。)






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