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Jan 18, 2015
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        (武田勢出撃す)

 信玄が一座のざわめきを制し言葉を継いだ。

「余は、上杉勢が信濃に出兵せぬよう、考えうる策を考え尽くした。

 我が武田は近々のうちに徳川家とも手を結ぶ、大井川を境とし東の駿河は

我が武田家が支配いたす。家康には西一帯の切り取りを任せるつりじゃ」

「お待ち下され、ただ今のお言葉には納得が参りませぬ」

 最早、押されもせぬ堂々たる武将に成長した山県三郎衛が反論した。

「反対者は山県昌景のみか、余の考えに不服な者は他には居らぬのか?」

 信玄が脇息に身をあずけ、一座の武将達を眺めまわした。

「不服に存じます。徳川家に三河を平定され、遠江までくれてやるお積りに

ございますか?」  

 山県三郎兵衛が髭面をみせ反対し、知将でなる内藤修理亮も反論した。

「内藤昌豊も余の策に反対いたすか?」

「左様、山県殿の仰せられたとおり、徳川に遠慮はいりませぬ」

「何故にそう申す?」

「恐れながら、徳川家康は織田信長と誼を通じております。これ以上、

勢力を拡大させては、我が家の脅威と成りましょう」

 内藤修理亮昌豊が、柔和な口調で自身の考えを述べた。

「そうじゃ。昌豊の言う通りじゃが、我等には海が必要じゃ。まずは駿河を

支配下に置く、これで塩の心配はなくなる」 

 信玄の口調に断固たる決意が込められている。  

「なれど」  

 山県三郎兵衛が口を挟もうとした。

「申すな、余は何度も申した筈じゃ。我等、武田家は上洛いたすとな。

 我等の前に居る大名は誰か? 真っ先に餌食となるのは徳川家康じゃ。

嫌でも三河、遠江は我等武田の領土となる」

「これは、迂闊にございました」  

 山県昌景はじめ全ての武将が顔を染め、己の至らなさに顔を伏せた。

 彼等は信玄の深慮遠謀な軍略の才を、改めて知らされたのだ。

「重ねて申し聞かす。我等の最大の敵は織田信長じゃ。これを忘れるでない」

 信玄の声が凛とし、諸将の耳朶に響き渡った。

 この時期に信玄は自分の最大の敵が、織田信長と解っていたのかも知れない。

 だがこの年の九月に信長は、義輝の後継の十四代将軍、義昭を奉じて上洛を

果たすとは、神ならぬ身の信玄にも予想もつかない出来事であった。


       (駿河攻略)

 永禄十一年二月、信玄の使者として山県三郎兵衛昌景が岡崎城に赴き、

家康と駿遠(すんえん)分割の誓紙を交わした。

 武田勢は駿河進攻を十一月と定め、その準備に謀殺された。

 信玄は父の信虎が内部崩壊を画策した、今川家の重臣の瀬名駿河守、

関口兵部、葛山備中守と接触を開始した。

 彼等を利でもって内応を促し、信玄は彼等の手なずけに成功したのだ。

「何時でもお味方としてお役にたちます」  

 三人の今川家の重臣は、主人の氏真の行状に愛想を尽かしていたのだ。

 義元の弔い合戦もせずに、酒と女に現つを抜かし、輪をかけ流行しだした

風流踊りに熱中するようになった。

 心ある者は唇を咬んで憂え、今川家の将来を危惧した。

 駿河全土の領民までが家業を疎かにし、風流踊りに熱中した。

 国主の氏真が真っ先に熱中しているのだ。

 三月には越後に動きがあった。輝虎が信玄の読み通り越中に軍勢を発した。

 それを待っていたかのように、上杉家の武将の岩舟郡本庄城の本庄繁長が

挙兵した。これで上杉輝虎は武田家に手が出せない情況となった。

 武田勢は満を持し、十一月に躑躅ケ崎館から一万八千名の大軍が颯爽と

出陣した。

 諏訪法性と孫子の御旗二流が冬空に翻り、鈍空の空に舞っている。

 先鋒は山県三郎兵衛の赤備え、甘利昌忠の黒備えの騎馬武者の群れが行く。

 中陣は馬場美濃守信春、内藤修理亮昌豊が続き、本陣は陣場奉行の原隼人、

旗本奉行の今井信昌が配置され、その後に総帥、武田信玄が続いている。

後備えは小山田信茂、武田勝頼が受け持ち、予備隊として武田信豊、秋山信友

の率いる三千名が後続している。

 既に先発部隊として駿河、三河の一騎合衆の波合備前、平屋玄番の五百名が

一日前に出陣していた。

 信玄は武田菱の前立兜に、武田重代の鎧に緋の法衣を纏い、黒駒の駿馬に

跨っての出陣である。

 軍勢は甲斐と駿河の国境の富士川沿いに南下し、十三日には由比に進出した。

 今川勢も武田勢の出撃を知り、庵原安房守(いはらあわのかみ)を総大将にし、

一万五千名の軍勢が授け、薩唾峠(さったとうげ)で陣を構え対峙した。

 併し、全く戦意のない軍勢である。

 国主の氏真が駿府城で恐怖に身を震わせているのだから仕方がない。

 更に宿老の三名が武田家に内応し、軍勢を動かそうともしないのだ。

 信玄が法衣を翻し前線に現われ、敵勢の陣営を眺め頬を崩した。

 これが海道一の弓取りと言われた今川家の軍勢なのか、戦意の欠けらも

見られなく、今にも崩れそうな陣構えである。

「憐れなり、義元殿」

 信玄の胸中に公卿姿の故義元の顔が過った。

 これなら、山県三郎兵衛の赤備え一隊で突き破れる。

 併し、信玄は慎重であった。長年の念願であった今川勢との合戦である。

 ここで逸って齟齬(そご)をきたしては何にも成らない。

 信玄は本陣を構え対陣し、各地の様子を盛んに気にしていた。

 十二月六日の早暁、信玄が陣頭に現れた。

 そろそろ潮時と決意した信玄であった、目前の今川勢の様子は相変わらず、

戦意に乏しい。

 信玄が軍配を軽く振った。法螺貝がびょうびょうと冬空に響き渡り、

百足衆が猛烈な勢いで先鋒の赤備えに駆け寄って行った。

「おおっー」  

 薩唾峠に雄叫びの声が轟いた。ゆったりと山県三郎兵衛が騎馬で現われ、

輪乗りをはじめた。小脇には自慢の大身槍を抱えている。

 武田勢の本陣から太鼓の乱れ打ちが、峠の全域に轟き始めた。

「かかれー」  

 山県三郎兵衛が野太い声で檄を飛ばし馬腹を蹴った。彼を頂点に三千の赤備

えが、一斉に峠道を駆け上って行く。

 馬蹄の響き、馬の嘶(いなな)きと軍兵の喚声が湧きあがり、両軍の距離が

みるみるちぢまった。

 先頭を駆ける山県三郎兵衛の鋭い眼光に、敵兵の慌てる様子が見えた。

 眼が血走り、腰が引け、今にも崩れそうな様子である。

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Last updated  Jan 18, 2015 01:49:33 PM
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