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Feb 10, 2015
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      (信長の戦略)

「いかん、自分の年を忘れ妄想逞しくしておっては」

 勘助がお弓の狂態を想いだし、自分の浅はかさを恥じた。

 廊下に人の気配がした。

「小十郎、ただ今戻りました」  

 微かな声が洩れ小柄な躯が部屋に現れ、驚きの声を挙げた。

「お弓さま、お弓さまではございませぬか?」

「小十郎、そなたも元気そうじゃの」  

 お弓が懐かしそうに声をかけた。

「はい、山本さまと全国を巡り面白く生きております」

 こうして三人が集ったのは何時であったか、それぞれが別の生き方を

しながら、御屋形と信虎さまの手の平で躍っていたのだ。

 勘助は一瞬、そんな事を思った。

 夜の帳が城下を覆ったころ、粗末な食膳の前で酒を酌み交わしていた。

「小十郎、信長の動きが判ったか?」  

 勘助が杯を置き隻眼を光らせ訊ねた。

「春になりましたら、越前攻めを企んでおる様子にございます」

「矢張りの、朝倉攻めの軍を起こすか?」

「左様、越前を制すれば天下を二分出来ます」

「いよいよ御屋形と決着をつける覚悟を固めよったか?」

 勘助の異相に興味の色が浮かんでいる。

「勘殿、武田勢の上洛の時期は何時頃と思います?」  

 それまで勘助と小十郎の話に耳を澄ましていた、お弓が興味を示した。

「まず、一年近くは掛かりましょうな」  

「悠長な、信長は畿内を全て支配下に置いてしまいましたぞ」

 お弓が珍しく気色ばんだ。それには彼女自身の考えがあったのだ。

 京に隠遁している信虎の健康が気がかりであったのだ。

 信虎は年を取り、今は枯れ木のような痩身となっていた。

 念願の武田の上洛を見ることもなく亡く成られては、傍らに仕える

者にとっては、堪え難い事である。それ故の心配事であった。

「わしは、将軍公にお会いしょうかと思っておる」

 勘助が杯を口に運びながら、低い声で二人に語りかけた。

「将軍さまに拝謁なさる申されますか?」  

 お弓が驚きの声を挙げ、小十郎と顔を見合わせた。

「信長が将軍義昭さまに、五ケ条の条書を突きつけた事を存じてござるか?」

「昨年、殿中の掟とし将軍さまの権限を抑え込みましたな、大殿から聞いて

知っておりますぞ」 

 お弓も信虎から、その辺りの話は聞いているようだ。

 殿中の掟とは義昭が余りにも将軍職の権力を振り回し、諸国の大名等に

信長に内緒で密書を出すので、義昭の権力を牽制するために信長が押し付けた

掟状である。発端は信長の力により、第十五代将軍の座に就くことが出来た

義昭が、自分が信長の傀儡と気づいた事から始まったことである。

 信長にとり義昭は御輿であり、彼の名で天下布武を押し進めようとの計画で

あったが、あまりにも将軍面をする義昭にうんざりしたのだ。

 それは義昭も同じであった、将軍の権威を蔑にする信長に憤りを覚えたのだ。

 だが信長には自分の力で義昭を将軍とした自負があり、副将軍の座や加増な

ぞをちらつかせる、義昭の行動に愛想が尽きていた。

 元々、足利将軍の義昭には一片の直轄地もないのだ。

 これは両者の言い分の違いで、いずれ起こるべき問題であった。

 信長は義昭が勝手な行動に走らないよう、彼に手かせ足かせをかけたのだ。

 それが前年に起こった殿中の掟であった。

 元来、権謀術策に長けた義昭は信長に反抗し、各地の大名に御内書を発行し、

信長牽制の協力要請をしていたのだ。

 西は毛利家、石山本願寺、北は浅井家と越前の朝倉家、更に越後の上杉家と

甲斐の武田家にも及んでいた。

 これに気づいた信長は、元亀元年一月二十三日に五ケ条の条書を義昭に

認めさせた。内容は義昭のこれまでの命令の破棄。今後は義昭が出す御内書

には信長の添え状を付けること、天下の仕置きは全て信長に任せること。

 信長の一存で誰でも処罰が出来る事、天下静謐のために義昭に朝廷に抜かり

なく奉公いたすべく事を強要した。

 これにより義昭の政治的な活動は完全に信長の制約下に入った。

 こうして信長は義昭の名の許で畿内、北陸、中国の諸大名に上洛を命じた。

 この真の狙いは織田家の味方と敵を分別する目的が込められていた。

 その標的が越前の朝倉義景であった。

 奴は必ず上洛を断ると明確に察していた。

 これで朝倉攻めの口実が出来るとほくそ笑んでいた。それを阻止すべく義昭

も蠢きだし、将軍義昭と信長は水面下で凄まじい暗闘を始めたのだ。

 勘助はお弓と小十郎の二人に、事細かに説明を終え杯を置いた。

「流石は勘殿じゃ、して今後の武田家はどのように動きます?」

 それがお弓の最も知りたい事であった。

 勘助はお弓の問いに答えずに、小十郎に乾いた声をかけた。

「小十郎、甲斐に走れ、今の話を河野晋作に伝えよ」  

「判りました」

「さらに信長の越前攻めじゃが、そこで織田信長の息の根を絶つ」

 勘助が隻眼を光らせ鋭く断じた。  

「策はあると申されますか?」

 小十郎が例の抑揚のない声で訊ねた。

「小十郎、織田と浅井は婚姻関係にある。じゃが、浅井家と朝倉家はそれ以上

に深い同盟関係にある。特に長政の父、久政(ひさまさ)は大の信長嫌いじゃ。

武田家から使者を遣わし、織田勢が越前に進攻いたしたら、浅井家に信長の

背後を衝かせるのじゃ。これで近江の地が信長の墓場となろう」

「そのように巧く事が運びまするか?」  

 お弓が心配そうに呟いた。

「浅井久政と朝倉義景は盟友関係にある、しかも久政は希代の食わせ者じゃ。

必ずや久政は、倅の長政を説得いたし寝返る」  

 勘助が断定した。

「じゃが、勘殿、久政殿は父の亮政が死去したため跡を継いだが、勇猛な

父親とは対照的に武勇に冴えなかったと聞いておりますぞ」

「左様、武勇も外交も弱腰と云われた武将。なれども朝倉家への恩義は決して

忘れぬ男じゃ。必ず、倅の長政殿を説得されると思いますぞ」

 勘助が言葉を止め、何事か思案する様子を見せている。

「直ぐにも甲斐に参り、今のお言葉を伝えますか?」  

 小十郎が勘助の乾いた顔を見つめた。

「甲斐に行く前に京の大殿の許に行け」  

「大殿に?」

 勘助の言葉にお弓が怪訝そうな顔をした。


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Last updated  Feb 10, 2015 08:24:10 PM
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