長編時代小説コーナ

長編時代小説コーナ

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

龍5777

龍5777

Favorite Blog

^-^◆ 高齢おもしろ… New! 和活喜さん

テレビのワイドショ… New! クラッチハニーさん

国民年金と生活保護! New! 韓国の達人!さん

晩酌のお供はキャベ… New! Pearunさん

いさまろの【1億円稼… Isamaroさん

Comments

人間辛抱 @ Re:何故、安保法制が必要なのか。 (08/09) どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
http://buycialisky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) cialis muscle paincialis daily use side…
http://buycialisky.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) cialis 5 mg prezzo in farmaciaanti cial…
http://buycialisky.com/@ Re:騒乱江戸湊(04/28) cialis in spanien kaufenavoid counterfe…
http://buycialisky.com/@ Re:「改訂  上杉景勝」(04/21) what happens if a woman takes viagra or…
http://viagraky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) offshore viagra &lt;a href=&quot; <sma…

Calendar

Apr 4, 2015
XML



にほんブログ村

にほんブログ村

   (一言坂の合戦)

「これで二俣城への兵力は、一万四千と成ったか」  

 宿舎の中で信玄が独り言を呟いた。

 山県三郎兵衛昌景が戻ったことは心強い。あの男の事じゃ遮二無二、

敵城を落さんと攻撃いたすであろう。

 武田勢、最強の赤備え隊が戻って来たのじゃ。

 信玄が囲炉裏の炎を見つめ、薄く破顔をした。

 翌日の十月十三日、武田勢は陣形をととのえ、太田川を渡渉(としょう)し、

見附方面に進撃を開始した。

 先鋒は歴戦の猛将、馬場美濃守信春の軍勢である。

 徳川勢との遭遇戦を予期した陣形で、襲いくれば一気に壊滅を計る戦術を

もってのことであった。

 一方、徳川勢は、その日の早朝三千の軍勢を浜松城から東に向け出撃させた。

 目指は見附の地に滞陣する武田本隊の主、信玄の首級である。

 総大将は大久保党の党首、大久保忠佐(ただすけ)が指揮を執っていた。

 副将として本多平八郎忠勝が従っており、内藤信成の勢も加わっている。

 朝日が昇り空が茜色に染まってきた、真っ向から陽を浴びての行軍である。

「急がねばならぬ」  

 大久保忠佐が空を仰ぎ見て騎馬を急がせた。

 この態勢で敵に遭遇すれば勝ち目はない。朝日の為に敵勢の動きが見えぬ。

「一言坂を越え、見附に近い地点に布陣ですな」

 若い本多平八郎が、黒糸嚇しの具足に唐の頭(からのかしら)を付けた鹿角の

兜姿で騎馬を寄せて訊ねた。

「平八郎、主は内藤勢と見附方面の物見をしてくれぬか」

「承知いたしました」

 本多平八郎が自慢の大身槍を抱え、すぐさま物見の為に先行して行った。

 本多、内藤率いる偵察隊が一言坂の難路をのぼり終えた時、武田勢の先鋒と

遭遇した。

 それを見た偵察隊は干戈を交えずすぐに退却したが、馬場勢は素早い動きで

徳川勢を追撃し、太田川の支流の三箇野川や一言坂で激戦が始まった。

 前方には武田本隊一万九千名の精鋭が、山のように静まり布陣している。

 それは朝日を背にし黒々とした小山のように見えた。

 その鋭気が、ひしひしと徳川勢に感じとれる。

 喊声と鋼の音が響き、後方の大久保忠佐は敵勢と合戦が始まった事を知り、

全軍を急がせ一言坂に軍勢を集結した。

「見事じゃ」  

 大久保忠佐が、栗毛の駿馬に跨り、鋭く敵陣をみつめ呟いた。

「後れをとりました」  

 本多平八郎が自慢の大身槍を抱え駆け寄ってきた。

「打ち破られると、天龍川の手前で全滅ですぞ」

「平八郎、ここは引けぬ。三河武者の意地をみせるのじゃ」

 大久保忠佐が陣形を固める下知を下した。一気に戦機が盛り上がった。

「内藤信成(のぶなり)一千で押し出せ」  

「心得申した」

 内藤勢が長柄槍隊を先頭に、整然と足並みをそろえて押し出した。

 徳川勢から士気を鼓舞する、法螺貝が朝の冷気を破って鳴り響いた。

 信玄の本陣から百足衆が駆けだし、先鋒の馬場勢に駆け込んだ。

 馬場美濃守が采配を振った。鬨の声があがり、一斉に先陣が動き出した。

 先鋒の馬場勢のみが前進し、武田本隊は山のように静まりかえっている。

 まるで隙がない武田軍団の前で、内藤勢の足が止まりかけている。

「仕掛けよ」  

 見逃さず馬場美濃守の戦場焼けした下知が響いた。

「おうー」  

 三千名の武田勢が雄叫びをあげ、内藤勢に突きかかった。

 長柄槍が交差し、怒号、喚声、悲鳴が沸きあがり混戦となったが、

瞬時に内藤勢が崩れたった、まるで赤子の様に鎧袖一触で蹴散らされた。

 馬場美濃守が、黒糸嚇しの甲冑姿で騎馬を駆けさせ、巧に徳川勢を押し

詰めている。

「内藤勢を見殺しにするな」  

 大久保忠佐が栗毛の馬で混戦に割り込んで行った。

 三千対三千の戦いとなったが、武田勢の本隊は攻撃する気配も見せない。

「おのれ」  

 本多平八郎が歯噛みをし、自慢の大身槍で武田の足軽を瞬く間に、

三名突き殺し血ぶるいし荒れ狂った。

 気がつくと本多勢は、一言坂近辺まで押し詰められていた。

 まるで兵士の強さが違う、武田勢は全て歴戦の猛者であり、戦いを

足軽一人一人までが知っている。

 お互いに連携したり、一人となって突きかかり、自在に動いている。

 敵将の馬場美濃守の巧みな采配で、徳川勢は散々に討ち取られ、混乱の

なかで敗走に移った。

「掛かれ。掛かれや」  

 馬場美濃守の声が戦場に鳴り響いている。

「我等が殿軍をいたす」  

 本多平八郎が手勢を集め、叫ぶと同時に一斉に討って出た。

 大久保勢と内藤勢の敗残兵が顔を蒼白にし、坂道を転がる様に逃げ下って

いる。この合戦で本多平八郎の奮戦は目をみはるほどであった。

 彼の働きで辛うじて徳川勢は、全滅をまぬがれたのだ。

 本多平八郎は大久保忠佐と内藤隊を逃すために殿軍を務め、一言坂の下と

いう不利な地形に陣取った。

 急戦で陣形も固まらぬ本多勢を、武田先鋒の馬場美濃守は容赦なく突撃し、

三段構えの陣形のうちの第二段まで打ち破った。

 また信玄の近習である小杉左近は、本多勢の退路を阻むため本多勢の後方、

一言坂のさらに下に先回りをし、鉄砲を撃ちかけた。

 武田本陣から法螺貝が鳴り響き、馬場勢が一斉に軍を止めた。

「無念じゃ」  

 本多平八郎は手勢をまとめ、一言坂を下り敵勢の様子を眺め切歯扼腕した。

 虎が猫を弄ぶように、先鋒の馬場勢は動きを止め、我が勢を嘲笑している。

 天地が沸騰するような勝鬨があがった。

「最早、これまでじゃ」

 覚悟を定めた本多平八郎は大滝流れに陣をとり、坂下で待ち受ける、

小杉勢が攻め寄せて来た、平八郎は兵を督励し敵中突破し逃走を計った。

 これは無謀な突撃で本多勢は死兵であったが、左近はこれを迎え撃たず、

道を空けるよう下知して本多勢を見逃したのだ。

 死兵と化した軍勢に当たる馬鹿はいない。左近はそう見極めての事である。

 このとき平八郎は、小杉左近に名を聞き感謝の言葉を残したと言われる。

 こうして徳川勢は死傷者六百名をだし、ほうほうの呈で浜松城に逃げ戻った。

 完全に緒戦は完敗であった。

 だが本多平八郎忠勝の奮戦は敵味方の目をひいた、武田家の小杉左近は、

「家康に過ぎたるものが二つあり、唐の頭と本多平八」と一言坂に、この狂歌を

書き記した表札を残したと云われる。

 唐の頭とは、中国から渡来した、ヤクの毛で高価で知られていたのだ。

 こうして本多平八郎の働きで徳川勢は無事に天竜川を渡り切ることに成功し、

撤退戦を無事に終了させたのだ。

PVアクセスランキング にほんブログ村






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Apr 5, 2015 10:12:14 AM
コメント(103) | コメントを書く
[武田信玄上洛の道。] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: