私らしくナマステ

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【ダミ・ジャンクリ】



【第2編;ダミ・ジャンクリ】
ネパールの友人のその後を訪ねたのは、赤ちゃんがあと一週間で満5カ月を迎える頃だった。
母親の腕に抱かれすやすや眠っている愛らしい赤ちゃんの姿を見ると、順調な育ちぶりを察することができた。
でっも、今日は夕方から火がついたようになき、大変だったらしい。
泣き疲れたのかぐっすり眠り、安心したお母さんは、私にこれまでの子育て体験をあれやこれやと語ってくれた。

こちらではダミ・ジャンクリといって、祈祷師のお祈りで病気の悪霊を追い払うという風習が、まだまだ人々の間で一般的に行われている。
赤ちゃんにたいしてお祈りする人を「アジ」というそうだ。
友人の赤ちゃんはもう10回くらいアジさんにお祈りしてもらったという。
それというのも、赤ちゃんが母乳を飲まなくなったから。
お母さんの母乳がでているにもかかわらず。

「アジさんのお祈りってどうやってするの?」
灰を赤ちゃんの額に少し付けアジさんがフーフーと息を吹きかける。
そしてその時、神の名前を呼ぶという。
またアジさんは自分の人差し指の腹に菜種油をつけ少し暖めて、赤ちゃんののおへそあたりにあてる。
私は、ふ~んとか、へ~とか言いながら、友人の自信に満ちた話しぶりに感心してしまった。
彼女もアジさんに助けられながら、決してあなたの育て方が悪い、などと言われることなく、安心して今まで子育てできたのかもしれない。
しかし、赤ちゃんだって生命力が強くないと病気に負けてしまうだろう。

そうだ!例の菜種油マッサージの効果はどんなものだったのか?
私は産後の抜け毛で髪が少なくなった事を思いだした。
ネパールの女性は髪が長い。
もちろんショ-トカットの人もいるが、ほとんどの女性、特に村に住む女性は長い。
産後、たっぷりと頭に菜種油をつけてマッサージをすると、髪の毛は抜けなかったらしい。シミもできなかったという。
頭痛もおこらないらしい。
産後2カ月続けた身体のマッサージのお陰で身体はパワフルになるらしい。
疲れもとれるという。
しかし、彼女の場合は月経も意外と早く3カ月で再開した、
こればかりはどうしようもない。
赤ちゃんが母乳を飲まなくなったのは、母乳の味は、ホルモン変化の影響か、甘くなくなったからかも知れない。
赤ちゃんの味覚は敏感なのだろう、というようなことを彼女と話した。

母親の育児の悩みは、日本もネパールの同じに思える。
ただ、ネパールは家族が多いし親戚が寄り添って助け合って生きていく。
赤ちゃんもお母さんもその大家族に守られ、風習もうまく利用し、神々が住むこの国で、安心して子育てできるのかも知れない。
産後のイライラ、不安なんてぶっ飛んでしまうほど、ここのお母さんは心も体もたくましい。
自然に逆らわない生活のスタイルも、赤ちゃんとお母さんの心を育てているのかも知れない。

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