蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「ボクシング・ヘレナ」




この映画が映画館で上映されている時、かなり話題になったと記憶している。
ヒロインの姿がショッキングだったからか。
ジェイムズ・アイボリー監督の「眺めのいい部屋」に出ていたジュリアン・サンズが、この作品では倒錯した愛の持ち主を好演している。

医師ニックは、医師としての腕もよく、人当りも柔らかい好青年。
彼は母親の葬儀を終え、実家の屋敷を訪れた。
そこで、母親に疎まれた幼い頃の思い出が甦り、苦しむ。
その夜、ニックはバーでヘレナと再会する。
彼女とは一夜を共にしたことがあった。
ヘレナへの想いが再燃するニック。
その行動は常軌を逸してくる。
ヘレナがニックの眼前で交通事故に遭ったとき、ニックはある行動に出た。
ヘレナを自分のものにしておけるよう、怪我をした両足を切断してしまったのだ。
激しく罵るヘレナと、彼女をかいがいしく介抱するニック。
ねじれた愛情を注ぐ彼から逃れようとするヘレナ。
ニックはヘレナの両腕も切断し、彼女の面倒を嬉々としてこなすのだった。
そして・・・。

ラストはありきたりで、ミロのビーナス像が何度も暗示的に出てくるところも、安易過ぎる。
でも私が「うん?」と思ったのは、ラストのヘレナ。
ニックは、ビーナス像が壊れたと思った時点で、自分を客観視できるようになり始めた。
しかしヘレナが、麻酔から目覚めた後思い出したのは、ニックが必死にヘレナを助けようとしている姿。
その姿を頭の中で反芻しながら、ヘレナは何を思っているのか。
私は、もしかしたら彼女はニックを想い始めたのではないかと感じた。
ヘレナに対するニックの想いが冷静になろうとする時、ヘレナはニックが気になりだした。
そんなオチだとしたら、なんと皮肉な。




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