蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「私の頭の中のケシゴム」




2004年11月、韓国で公開された作品。
日本公開は、今年(2005年)10月下旬予定。

ある方のご好意で、見ることが出来たんだけど、これがもう最高に感動した。
子ども達が寝静まり、さんざんネットをしたあと、『さぁ、さわりでも見て、続きは明日・・・』なんて考えつつ、深夜2時近くに見始めた。
すぐ惹きこまれて、ティッシュの箱を抱え、泣きながら見終わると、もう4時・・・。今日も寝不足。でも何度でも見たくなる。今日も2回見た。

不倫の恋に終止符を打ったスジンは、コンビニで偶然一人の男と出会う。
スジンの買ったコーラを手に持っていた(とスジンは思っていた)男から、コーラを奪うと、その場で飲み干す。
数日後、スジンの働く事務所にやってきたのは、あの男だった。
自動販売機でコーラを買ったスジンから、コーラを奪い、彼女の目の前で飲み干した。大きなゲップと共に。
男の名前はチョルス。スジンの父親が経営している建設会社の所長をしていた。
チョルスのことが気になるスジンは、偶然を装って彼が仲間たちと飲んでいた屋台にやってきた。
ほろ酔いのチョルスは、硝子の杯に酒を注ぎ、こう言う。
「これを飲めば俺たちは付き合うんだ」
スジンが聞く。
「飲まなければ?」
「俺たちは他人だ。死ぬまで」
スジンを見つめながら、答えるチョルス。
スジンは、酒を飲み干した。
そんなスジンをチョルスは・・・・。


チョルス役のチョン・ウソンが滅茶苦茶かっこいい。
ワイルドで骨太で、でも不器用なほどに優しく繊細で・・・。
作業着を着ている彼は、男臭い魅力に溢れている。

スジンの強い希望で結婚した2人は、幸せの絶頂にいた。
チョルスは建築士の試験に合格し、仕事は順調に進んでいった。
スジンも妻としての喜びに満ち溢れていた。
しかし、2人に残酷な運命が待ち受けているとは、そのときの2人は全く気がつかなかった。

スジンを病魔が襲った。
病名は、アルツハイマー病。
記憶が失われていく病だ。

何回見ても、泣かずにはいられない。
妻を想うチョルスの深い愛。
この世で一番愛している夫を忘れてしまう妻。

チョルスに向かって昔の男の名前を呼び、「愛しているわ」と無邪気に囁くスジン。
チョルスは、スジンが本当に愛しているのは誰なのか、悩む。
急に記憶が戻り、チョルスにありったけの気持ちを込めた手紙を書くスジン。
しかし、思い出した記憶も、すぐに失われてしまう運命なのだ。

「記憶を失うことは、魂を失うこと」
死別よりも切ない別れが、愛し合う2人にやってくる。

誰を恨むわけにもいかない、どうしようもない思いが溢れて、見ていてかなり辛くなる。
でもラストシーンを観た後、虚脱感に見舞われなかったのは、チョルスとスジンの心の動きとお互いを想う深い気持ちが、見る者に強く伝わったからだろう。

運命は彼らに試練を与えた。
しかし彼らは運命に負けなかった。
抗ったのではない。受け入れたのだ。

チョルスがスジンに向かって初めて言った「愛している」
この世の中に存在する、どんな甘美な音楽よりも、私の心に強く響き、染み込んでいった。

今年見た映画の中で、最高の作品かもしれない。

「私の頭の中のケシゴム」公式サイトは ココ




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