蘇芳色（SUOUIRO）～耽美な時間～

「ゆれる」

前から気になっていた「ゆれる」
私の大好きな是枝裕和監督の秘蔵っ子、西川美和監督の第２作目です。
第１作目の「蛇イチゴ」が人間の心の奥を描いていて面白かったので、最新作も期待していました。

東京でカメラマンとして成功している早川猛（オダギリジョー）は、母の一周忌に故郷へと向かいます。兄の稔（香川照之）は真面目で温厚な性格で、法事に遅れてきた猛を庇います。しかしとんがっている猛と父は諍いを始めてしまいます。

家業のガソリンスタンドを継いだ稔は、法事の後休む間もなくガソリンスタンドへ戻り、一緒についてきた猛は、そこで稔の下で働いている幼なじみの智恵子と再会します。
まだ仕事中の稔を置いて、仕事の終わった智恵子を自宅まで送る猛。
「兄貴は部屋に上がったのか？」と智恵子に尋ね、猛は強引に彼女を抱きます。

翌日懐かしい渓谷に遊びに行く３人。
古びたつり橋の上で起こった出来事とは。

怖い映画です。
いえ、ホラーではありません。
でも怖いんです。

何が怖いかというと、それは人間の心です。

兄と弟という血の繋がりは、絶対的なものなのでしょうか？
兄は、そして弟は、お互いの考えを知り尽くしているのでしょうか？

一人の女性を巡って、兄の思いと弟の思いが交錯します。

何気ないワンシーンを挿入することによって、切り取られた場面を想像することができ、千の言葉で説明するよりも饒舌に登場人物の気持ちを表現している演出は見事です。

兄の出所を明日に控え、弟が見る過去の映像。
そこからの展開はお決まり感が否めませんでしたし、甘さも感じました。

でも深く考えさせられる作品でした。

さて、この映画を見たあなたは、ラストで稔が微笑んだわけは何だと思われますか。
そして彼はバスに乗ったと思いますか、それとも乗らなかったと思いますか。

私の考えは・・・・。