蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「美輪明宏クリスマスディナーショウ」

行って来ました、美輪さんのディナーショウ。
ディナーショウなるものに行くのは、20年程前にディック・リーのデイナーショウに行って以来、生涯2度目(おおげさ?)
食事はまあまあで、ショウ自体は1時間しかなかったので、美輪さんの世界を堪能したいのなら、コンサートに行くなり、舞台に足を運ぶなりしたほうがお得だと思う。
でも、来年の舞台「椿姫」まで待てなかったので、ディナーショウのチケットを買ったんだよね。
時間は短かったけど、美輪さんの歌はやはり素晴らしかった。
今年秋の美輪さんのコンサートに行った時も感じたのだが、1曲1曲に、歌詞の中のヒロインの人生が凝縮されていて、観客も濃密な時間を共有できる。
今回は、クリスマス・ディナーショウを意識してか、選曲はすべてシャンソン。
パンフレットがないので、正確に覚えていないのだが、「恋はコメディー」「初日の夜」「人生は過ぎ行く」「不倫」「ラストダンスは私と」「ミロール」などを歌ったと思う。
アンコールは「愛の賛歌」
私が特に印象に残っているのは「初日の夜」「人生は過ぎ行く」「ミロール」
「人生は過ぎ行く」は「好きよ、好きよ、好きよ、好きよ。冷たい背中ね貴方」という歌詞で始まる。
その「好きよ」の繰り返しを、囁くように、思いのたけを込めるように、弱く、強く、歌う声にしびれる。
歌の後半は、「好きよ」の部分が「ジュティム」に替わる。
年をとった女は、新しくできた若い女のもとへいく恋人にこう言う。
「行かないで、行かないで、行かないで、行かないで、窓から飛び降りるわ!」
そう叫んで、窓から身を投げ死ぬ。
美輪さんも歌詞の通り、飛び降りる演技をし、ばたりと倒れる。
表情が圧巻。目を開けたまま倒れた様は、もう投身自殺そのもの。
ぱっと舞台が暗くなって、静かになったと思うと再びライトが輝く。
美輪さんは舞台の中央で、何事も無かったようににこやかに立っている。お見事。
「ミロール」は娼婦が、憧れていた男に向かってうたう歌。
曲の説明の時は、美輪明宏という人物のまま。
しかし前奏が始まると、さっと娼婦の表情になる。
純朴なのだが、少々疲れた笑顔。その変わり方がやはりお見事。
男は資産家の娘と結婚し、幸せの絶頂で船旅に出た。
しかしその途中で、妻の裏切りにあい、傷心のまま帰港。
そんな男を、娼婦は励ます。
「さあ、笑って。そうそう、そんなふうに」
一生懸命に男を慰め、おどけた仕草で踊る娼婦。
彼女の真心に、疲れた心の観客も少しずつ癒されるような気がした。

美輪明宏さんの耽美な世界を味わうには、やはり生の姿を見るのが一番なのだ。

2003年12月20日 ノボテル甲子園「甲陽の間」




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