蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「死後結婚(サーフキョロン)」


書籍名:死後結婚(サーフキョロン)

作者:岩井志麻子

出版社:徳間書店


久しぶりに小説を読んだ。
岩井志麻子さんの作品は「ぼっけぇ、きょうてぇ」以来。

なぜこの本を手に取ったかというと・・・わかる方にはわかるでしょうね。(笑)
私の日常が、すべてジヌくん中心で動いているようで、ちょっぴり恥ずかしいけど。
そう、彼が去年出演したMV「Blooming Love 」を思い出したのです・・・。
昨年私が、あのMVからイメージして書いたファンフィクでは、韓国にも死後結婚という風習があることを知らなかったので、ラストシーンを黒魔術として描いたのですが、あれは韓国に残っている風習の「死後結婚」だったんですね・・・。
未婚のままで死んだ人間は、悪霊になってしまうので、それを防ぐために「死後結婚」を執り行うとか。
そ、そうだったの?ジヌくん。

さて、岩井志麻子さんの「死後結婚」は・・・。

だらしない性格の恋人・尚一と別れ、見合い相手の慶彦と結婚が決まっている京雨子(きょうこ)。
慶彦の紹介で、彼の先輩の元妻である沙羅の事務所に出向いた京雨子は、すぐにその部屋も沙羅のことも気に入った。彼女は流行のビーズ細工の店を出していた。そのビーズはプラスチックやガラスなどではなく、天然石でできていた。妖しい輝きに満ち満ちている、沙羅。
ある日、沙羅から京雨子に電話がかかってきた。沙羅の内縁の夫、江原がビルから飛び降りて死んだと言うのだ。動揺する京雨子に向かって沙羅はこう言う。
「じゃあ。結婚するから、その手伝いをしてくれる?」
訝しがる京雨子に沙羅は続けて言う。
「サーフキョロン。死後結婚よ。死んだ人と、結婚するの」
在日韓国人の沙羅は、韓国に残っている風習の「死後結婚」をすると言うのだ。
江原の遺骨の一部を持った沙羅は、京雨子を伴って韓国へと旅立つ。
失踪した尚一の幻影に悩まされていた京雨子が、道中で、そして死後結婚の儀式の中で見たものとは・・・。


以下はネタバレです。お気をつけ下さい。






岩井志麻子さんの作品は、「キャ~ッ」とか「わー!!」とか言う、ことさらに大声を上げてしまうような恐怖ではなく、じわじわと或いは気がついたら恐怖の真っ只中に放り込まれているという感覚になる。
さまざまに盛り込まれているエピソードも、登場人物たちも、際立った個性が感じられて、とても読みやすい。
しかし・・・なのである。
これは作家・岩井志麻子に対する先入観がなせるわざなのかもしれないのだが、作品の細部に「甘さ」を感じるのだ。この「甘さ」とは、ロマンティックという類のものではなく、詰めの甘さとでも言おうか。
私は彼女に対して、もっと救いのない底の深い恐怖の物語を期待しすぎていたのかもしれない。

例えば、作家・北城清香の死。コレは本当に予想外だった。いやワクワクする読後感を伴う予想外ではなく、あまりにもあっけない彼女の死に対して、もっとストーリーが膨らむことを期待していたので、その期待を裏切られたことに、かすかな失望感を覚えた。

また随所に挿入される、京雨子の見る幻想も、何度も同じようなものが現れることに煩雑さを感じた。その幻想が、のちの彼女に対して、或いは過去の彼女にとって、キーポイントになる事柄だったら、まだよしとしよう。しかし彼女が見る幻想がどれだけストーリーに絡んでくるのかと、期待をしていたら、思ったほどではなくて、ガッカリした。
またその幻想や、登場人物の説明などが、かなり重複していたのが気になった。これはこの小説が連載という形をとっていたためなのだろう・・・とは思ったのだが、それにしても単行本にするときに、加筆訂正をするだろうに。

そして一番残念だったのは、「死後結婚」の儀式について、もっと詳細に知りたかったのに、よくわからなかったということ。タイトルにもなっているのだから、韓国の「死後結婚」という儀式の詳細が描いていあるのかと思っていた。ま、これは私の過剰な期待故の失望感かもしれないが。

ちなみに日本にも「死後結婚」の風習が残る地方があるという。山形県などに「死後結婚」を描いた絵馬を奉納している場所があるとか。



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