蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「万作 萬斎 新春狂言 2005」



去年に続いて、今年も萬斎さんの狂言で新春を迎えた。(笑)
いいねぇ~、年のはじめから、好きな人(赤面)のお顔を拝見できるってのは。
座席も橋掛り寄りで、ほぼ前から3番目という良い席。
萬斎さんの登場を、今か今かと待っていた。

(番 組)

謡初 「雪山」野村萬斎
小舞 「鵜之舞」(うのまい)野村萬斎
レクチャートーク 野村萬斎

「二人大名」通りの者・野村万之介 大名・高野和憲 大名・深田博治 

「成上がり」太郎冠者・野村万作 主・石田幸雄 すっぱ・月崎晴夫

「茸」山伏・野村萬斎 何某・野村万之介 鬼茸・野村万作 


昨年も聴き入った「雪山」
昨年は独吟だったのだが、今年は地謡に竹山悠樹・高野和憲・深田博治・月崎晴夫・石田淡朗の5名。 
萬斎さんの声が、ひときわ深く、心に染み入る。
おめでたい曲なので、毎年お正月には野村家は「雪山」で謡初をするらしい。

続いて小舞「鵜之舞」
萬斎さんがレクチャートークのときに語ったところによると、酉年にちなんで、この舞を選んだそうな。
酉とは、本当は鶏のことなのだが、まあ猛禽類ならば良いだろうということで、鵜にしたとか・・・?
まあ講釈はおいといて、小舞を舞う萬斎さんは、かなりよかった。
萬斎さんが映画にでているときにも思うのだが、伝統芸能の世界で育ってきた男たちは、所作が美しく、立ち振る舞いを見ているだけで、こちらはもう心が満たされてしまう。
凛とした空気を、自らが作り出す。
そんな萬斎さんの小舞、美しいものを見せてもらった。

さて、おまちかねのレクチャートーク。
舞いもせず演技もしていない萬斎さんは、やはりクールな表情。
ときおり笑いもおりまぜて、番組の解説をするのだが、涼やかな空気はいつも彼の周りにある。
「二人大名」「成上がり」の説明をした後、「茸」の解説をはじめる。
初めて知ったのだが、「茸」という狂言は、能の「葵上」のパロディだそうな。
そういえば大昔に能「葵上」を見たなぁ。
「葵上」では権威のある山伏が、この「茸」では霊力もあるのかどうか怪しげな設定となっている。
今回の「茸」は舞台に工夫をした、と萬斎さんが語っていた。
そういえば、「茸」が始まる前、橋掛りの欄干などを取り除いていた。
山伏の祈祷もむなしく、人間大の茸がどんどん生えてくる場面では、照明を使い、妖しげな雰囲気を醸し出していた。
あれが工夫かしらん?

レクチャートークでの興味深い話をもう1つ。
1960年代に、万作さんがアメリカで「茸」を演じたとき、「ベトナム戦争批判か?」と誤解をうけそうになったという。
そう、茸の笠が、ヘルメットのかわりにベトコンがかぶっている笠に見えるというのだ。
山伏(アメリカ)がどんなに祈祷(攻撃)しても、まるで影響がないように茸(ベトコン)は増え続けていく。
そう言う風に解釈する人がいたらしい。へぇ~。

ともかく、新春狂言の最後を飾った「茸」は、さまざまなエピソードを含みつつ、舞台そのものは鮮やかな茸が溢れて、目にも美しいものだった。満足。


2005年 1月6日 大阪 厚生年金会館・芸術ホール


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