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蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~
シネマ歌舞伎「鷺娘」他
今日のシネマ歌舞伎の演目は、「日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)」と「鷺娘」でした。
玉三郎丈の「鷺娘」、生の舞台は見たことがないので、せめて銀幕で堪能させてもらおうと、楽しみにしていました。
確かに、この世のものと思えぬほどの、清らかな美しさを感じました。と同時に、なんとも言えぬ艶やかさも・・・。
この「鷺娘」は着物の早替わりで有名ですよね。
まず最初は白無垢の花嫁姿で登場。ちらちらと雪の舞い散る中、たおやかな1人の乙女が白無垢姿で登場する場面は、ぴ・・・んと張り詰めた空気を感じ、玉さまのあまりの美しさにため息が出ます。綿帽子を目深にかぶり、こちらから見えるのは、形の良い鼻と唇のみ。目が見えないというのは、なんともミステリアスです。襟元から覗く襦袢の色が、またなんとも艶かしいんです。真っ赤ではなく押さえた赤。私のイメージする「蘇芳色」でした。パンフレットを見ると、色が立ちすぎないように赤に紗をかけて色味を押さえているとか。こういうデリケートな感覚が、さすが古典芸能・・・日本人の美的感覚の素晴らしさを感じます。
次は真っ赤な振袖。一瞬で白無垢から振袖に替わるのですが、これは「引き抜き」という手法だそうです。そういえば後見さんが近づいていって、袖から糸を引き抜いていたように見えました。
その後、いったん舞台から引っ込み、今度は江戸紫の着物に替わります。
そして傘の陰に隠れたかと思うと、今度は鴇色(ピンク)の着物に早替わり。
目に鮮やかで、桜の模様が華やかです。
そして一瞬、先ほどの赤い襦袢姿になったかと思うと、最後は鷺をイメージした白い着物へ。
左肩にある赤い模様がずっと気になっていたのですが、パンフレットを読むと、それは手負いとなったことを表わしているそうです。
激しく振る雪の中で、力尽きようとする鷺の精。
玉三郎丈によって、凝縮した日本文化の粋(すい)を楽しませてもらいました。
さてさて「日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)」です。映画ではこちらのほうを先に上映していました。
これは有名な安珍清姫の物語で、その中の一部を演じています。安珍を追ってきた清姫が、日高川の渡しまでやってきて、船頭に向こう岸まで乗せてくれと頼みます。しかし船頭は先ほど「もし自分を追ってくる娘が来ても、決して川を渡してくれるな」と山伏に頼まれたので、断ります。それを聞いた清姫は、安珍への恋心と嫉妬の思いから、大蛇へと化してしまいました。驚いた船頭は逃げてしまいます。清姫は自分の思いを受け入れてくれない安珍を取り殺そうと、川へ飛び込み、彼を追いかけるのでした。
面白いのは、清姫も船頭も人形だという設定なんですよね。船頭の後ろには2人の黒子がいて、文楽人形を操っているような動きをしますし、船頭も歌舞伎俳優の坂東薪車丈が演じているのですが、人形そのものの動きをします。足の部分は人形でしたね。(笑)そして額からかつらになっていて、眉毛が文楽人形のように動くようになっています。とてもユーモラスでした。
もちろん玉三郎丈も文楽人形に扮していますので、人形のようなぎごちない動きをします。清姫の人形遣いは尾上菊之助丈。彼がまた水も滴るようなイイ男でした。(笑)
船頭も清姫もほとんどまばたきをしていませんでした。さすがというか・・・。
清姫が川に飛び込みもがくシーンは、水紋が描かれた水色の大布を揺り動かして、布が上下する間を清姫が見えたり隠れたりする演出でした。その時、般若の面をつけたりはずしたりしていたのですが、恋する女の執念と恋しい気持ちの両方を感じました。
ようやく向こう岸にたどり着いて、岸辺に1本立っていた柳の木に、大蛇となった清姫がよじ登ります。その瞬間真っ黒だった後ろの幕が下に落とされ、後ろには満開の桜の木々が・・・。
ため息がでるほどの華やかさでした。こういった演出を歌舞伎の舞台ではよくするのですが、いつもその背景の美しさと変化の激しさに圧倒され、しみじみと日本文化の奥深さを思うのです。
人形振りの「日高川入相花王」は、観客の私もまばたきをする時間が惜しいほどの素晴らしい舞台でした。
さて、玉三郎丈がこのシネマ歌舞伎を演じたのは、映像にすることによって、歌舞伎を見たことがない人にも気軽に足を運んで見てもらうことが出来るということ、生の舞台では見られないところもみてもらえるということなどの理由からだそうです。
このままでは歌舞伎は廃れてしまう、もっとたくさんの人に歌舞伎を見て、愛して欲しいという思いの表れなのかもしれません。
この舞台を映画で・・・という試み、私は染五郎さんの「アオドクロ」で経験済みなのですが、今回は前回見た「アオドクロ」の時に感じた不満を感じませんでした。
「アオドクロ」では、俳優の動きが大きすぎて、自分が見たい俳優を常時カメラが追ってくれるとは限らず、不満が残ったんです。
しかし今回は登場人物も少なく、セリフも太夫の語りであったため重ならず、見たい部分はクローズアップになってみることが出来、なかなか満足しました。
・・・・でも終演後、母と顔を見合わせて同時にいった言葉・・・・。
「玉三郎さん、年取ったね・・・」
頬骨の辺りの肉が、ほんの少したるんで見えたのは気のせい?
こういうときはアップがうらめしいかも・・・。
シネマ歌舞伎HPは
こちら
2006年5月16日 大阪・梅田ブルク7
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