蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「染模様恩愛御書」




久しぶりに 松竹座 に行きました。待ちに待った染五郎さんの関西遠征。


松竹座2



今回は103年ぶりに復活上演される「染模様恩愛御書 (そめもようちゅぎのごしゅいん)」です。この舞台は、戦前までは有名だった「細川の血だるま」という実録本がベースになっていて、それをもとに三世・河竹新七によって書かれた歌舞伎狂言です。もとの題名は「蔦模様血染御書(つたもようちぞめのごしゅいん)」ですが、今回は主演の2人の名前を入れたそうです。

染模様恩愛御書1


あらすじ
大川友右衛門(染五郎)は、浅草観音参詣の折、美しい若衆姿の印南数馬(愛之助)を見染めます。数馬が細川家の小姓と知った友右衛門は武士の位を捨て、細川邸に中間として奉公するようになります。ある日、友右衛門は数馬の寝室に忍び、二人は衆道の契りを結びます。数馬から横山図書(猿弥)という父の敵があることを打ち明けられた友右衛門は、数馬と互いの腕の血をすすり合い兄弟の義を結び、敵討ちの助力を約束します。ところがこの様子を、かねてから数馬に心を寄せる腰元のあざみ(春猿)が見つけ、細川候(段治郎)の知るところとなります。お咎めを蒙ると思いのほか、友右衛門の数馬への思いと、数馬の孝心の篤さに感銘を受けた細川候に、逆に士分に取り立てられた友右衛門は、いずれこの御恩に報いようと決心します。
ある日、細川邸に起こった火事はまたたく間に燃え広がり、このままでは細川家の宝である、将軍より拝領した御朱印が灰燼に帰すのも時間の問題となります。ここに馳せ参じた友右衛門は、御恩に報いるのはこの時をおいてないと火中に飛び込み・・・。(松竹座HPより抜粋)

以下はネタバレを含みます。これから観劇予定の方はご注意ください。










はい、まさしくBL歌舞伎です。(笑)ま、日本はもともと衆道(男色)の歴史がありましたから、なんら違和感はないのですが、私の見たところ、主演のお二人にはまだ「愛」が感じられませんでしたわ。
2日が初日ですから、まだ4日目ですものね。仕方がないのかしら。これが楽日には、見ているほうが恥ずかしくなるくらいのラブラブぶりを見せ付けてくれるかもしれませんね。
ただ惜しむらくは愛之助さんにもうちっと 色気 が欲しかったこと。もちろんお綺麗なんですが、その、何と言うか友右衛門を一目で落とした妖艶さが足りないかな~と。だってお2人の「濡れ場」(キャ~!)を見ても、妖しい気持ちになりませんでしたもの。(笑)楽日の濡れ場はドキドキものでしょうか?

それにしても第2幕第4場「宝殿炎上の場」の演出は大スペクタクルでした~。
私はまるでテーマパークのアトラクション会場にいるのかと錯覚しそうになりましたよ。(笑)
染五郎さん扮する大川友右衛門が、主君の大切にしている御朱印状を燃え盛っている宝殿から取り出すため、火事場に飛び込むんです。
主君・細川公や義兄弟・数馬に別れを告げて、染五郎さんが退場。
舞台のバックには燃え盛る炎の映像が流れ、上の方からなにやら「シューッ」という不気味な音が。どきどきしながら上を見ると、舞台の上手と下手の上部から、すごいいきおいで煙が出ているのです。「え~~~!!死んじゃうよ~!」と少々パニックぎみに。よくみると煙はどんどん下に下がってきます。そう、ドライアイスの煙だったんですね。それでもどんどん噴出するので、劇場内が曇ってきて、不安になりました。そういえば、場面が変わったときに講談師が出てきて「煙や火の粉が出てきますが、パニックにならないでください。」てなことを言っていましたっけ。
ええ~?それじゃあ、これから火の粉も出てくるの?消防法違反にならない?などと心臓バクバク状態でいると、火の粉も降ってきました。天井付近から大量に。綺麗でしたよ。真っ赤な火の粉が、観客全員を染め上げるほどに降ってきて、私も周りの人も頭や肩、膝などに火の粉をかぶりました。
って、本物の火の粉だったら大変なことになりますが、実はこれ赤い色の銀紙なんですね。2×4センチくらいの大きさで、会場が赤く染まるほど数多く降ってきました。粋な演出ですよね。


火の粉



さて、会場は煙と火の粉でまるでUSJの バックドラフト 状態(笑)になったところでお話は進みます。
火事場をくぐりぬけて、ようやく御朱印状のところにたどり着いた染五郎さんの扮装が、また凝っていました。焼けてボロボロになった着物の破れたところから、煙が立ち上っています。まるで今も着物がくすぶっているようです。きっと着物にドライアイスを忍ばせているのでしょう。そして火の粉がまだ付いているのを表現しているのは、赤やオレンジのラメ。(笑)ところどころに縫い付けられていて、遠くから見たら光を反射する具合が、燃えている火の粉に見えるでしょうね。
御朱印状を手に取ったはいいけれど、もう外に出ることはできません。そのとき友右衛門のとった行動は、切腹し自分の腹の中に御朱印状を入れて焼失から守ることでした。ここでちょっとお笑いタイム。腹を掻っ切った友右衛門は中から肝臓・腎臓・大腸を取り出し、(布地でそれぞれの臓物を作っていました)講談師のナレーションが入ります。「3つあわせて勧進帳」(爆)高麗屋のお家芸ですわね。
そういえば、このほかにもお笑いタイムは随所にありました。町娘が急に「チクショー!」と怒鳴り、横にいた若旦那が「まるで小梅太夫だな」とひと言。そうしたら町娘が「チャンチャカチャンチャン、チャチャンチャチャンチャン♪」と例の節で歌いだして・・・。(笑)でも会場からあまり笑い声が聞こえなかったのは、年配の方は「エンタの神様」を見ないからなのかな?(私も見ていなかったけど、最近子どもが時々見るようになったんですよね)
他にNHK教育で染五郎さんが披露している歌舞伎体操も出てきました。(笑)かなり盛りだくさん。

染五郎さんはますます役者っぷりがあがって、ステキになられていました。どんどん歌舞伎俳優としての魅力を増してこられているようです。特に今回は見得がよかったですね。これは染五郎さんばかりでなく、第1幕第2場「会津城内横山図書宅の場」での猿弥さんと薪車さんの見得も、「これぞ歌舞伎!」と感じるほどよかったです。もちろん染五郎さんの花道での見得は、一幅の役者絵のように絵画的な美しさに溢れていました。ため息モノです。今回も座席は花道真横だったので、染五郎さん他、役者さんたちの足首がつかめそうでした。(笑)某さんはスネ毛がたくさんで、あの方は白いおみ足で・・・な~んて比較研究もできます。(嘘)

松竹座1


これからも進化し続ける染五郎さんを見つめ続けま~す!(関西に来たときだけね)


2006年10月5日  大阪松竹座


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