蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「パリ1900年」展

8月夏休み最後の日曜日。
29日に大阪・天保山のサントリーミュージアムに行った。
「パリ1900年、ベル・エポックの輝き」展を見るため。
いや、本当のところはジョルジュ・クレランの描いた「サラ・ベルナールの肖像」だけが見たかったのだ。
この絵のことを知ったのは、あるTV番組がきっかけだった。
TV東京系「美の巨人たち」
この番組で、女優サラ・ベルナールを紹介していた。
彼女が一番輝いていた時に描かれた肖像画。
彼女が一番気に入っていた肖像画。
それがこの「サラ・ベルナールの肖像」なのだ。

番組でこの絵を見て、サラの妖艶な瞳に惹きつけられた。
数々の浮名を流したと言うサラだが、それもそうだろう。
この瞳には、何人たりとも抗うことが出来ない。

この絵を描いた画家クレランも、サラの魅力に抗えなかった一人。
彼女との愛人関係が終わった後も、40年間彼女を描き続けた。

どうしても見てみたかったこの1枚。
かなり大きな、「サラ・ベルナールの肖像」の前に立つ。
紅のソファに座るサラ。
そのブルーの瞳は、見るものを吸い込んでいくような輝きを放っている。
しどけなく横たわる上半身。
絹の光沢が滑らかで、その光が妖艶さを醸し出す。
まるで、画家クレランがそうしたように、私も彼女のやや小振りな胸の形を透かして見る。
絹の滑らかさのためか、それとも画家の思い入れのためか。
彼女の白い肌が見えるような気がするのだ。
彼女の足元にうずくまっている犬の、鑑賞者を哀れむような瞳。
『あなたも、クレランと同様に、彼女の虜になったのですか。可哀相に』
まるで、そう言っているようだ。

サラの瞳に引き寄せられ、いつまでも佇んでいた。

さて、他の作品だが、ポール・セザンヌ、ルノワール、ピサロ、マイヨール、ミュシャ、ルネ・ラリック、モリゾなど、珠玉のような作品が並んでいた。
クレランの「サラ・ベルナールの肖像」のほかに気に入ったのは、ポール・アルベール・ステックの「オフィーリア」とベルト・モリゾの「花の髪飾りをつけたマルト」
「オフィーリア」は、よくある水に浮かぶ構図ではなく、水中に漂っている。
服も髪も水の動きを表し、なんとも美しいオフィーリアである。
またモリゾは、今年京都でモリゾのほかの絵を見ていたので、懐かしい人に会ったような気持ちになった。
相変わらず柔らかく輝く色彩が美しい。

ずっと心の片隅に引っかかっていた、憧れの人にようやく会えた気分の日曜日。

2004年7月3日~8月31日 サントリーミュージアム「天保山」


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