アメリカ人て、涙もろい？

レストランでのお話。

日本人を母に、そしてアメリカ人を父に持つ
鉄板焼きシェフ、ジョーはとっても気さくで
お調子者。

愛嬌があるので、お客に受けがいい。

ジャパニーズステーキハウスのシェフは、
お客のいるテーブルで、パフォーマンスを
見せながら、目の前でお肉を焼く。

焼いてる間はお客と話をする事が多いから、
キャラクター如何によって人気にも差が出る。

ジョーは特に小さな子ども連れの家族からの
リクエストナンバーワンだった。

｢ハイ、みなさん今晩は、シェフのジョーです｣

ジョーの登場。(歓声)

｢ボクは半分日本人、半分･････｣

そこで、誰もが｢半分アメリカン｣という
言葉を予想する。

しかし、ジョーはこう続ける。

｢半分・・・レッドネック※なんだなぁ｣
※田舎者という意味

お客、どっと笑う。
ジョー、今日もつかみはOK。

このジョー、言うとおりの日米ハーフだけれど、
どう見てもかなりの｢失敗ハーフ｣だ。

見た目はけっしてかっこ良くない。

ハーフといえば、誰しもみんな長いまつ毛に
パッチリおめめ、栗色の髪に彫りの深い顔立ち、
それでいて、どこかエキゾチック。

ああ、行く末はモデルか役者か･････、

なんてえのをつい想像しちゃうでしょ。

しかしね、ハーフも十人十色、いろいろなのよ。

しかもジョー、
日頃のお酒好きが嵩じて、２０代にして
けっこうなビール腹だ。

まあ、そんなことは気にしない。

ジョーはいつでも面白くて、お客をゲラゲラ
笑わせる。

ご機嫌なお客は、そんなジョーに彼の好きな
ドリンク(お酒よ！)をご馳走するから、

３つ目のテーブルにつく頃には、すっかり
ほろ酔い加減のジョーが出来上がる。

迷ギャグもさらにパワーアップする。

いきなり、真剣な眼差しでナイフを構えて、

「苦節３年、山奥にこもってシェフ修行を
してきて良かった・・・」

と、遠くを見つめる。

このギャグは、アメリカ人のお客の５０％に
本気で信じられている。

でも、山奥でシェフ修行ってなによ。

たまにパワーアップし過ぎか、ヒートアップか
お客の前でオイオイと泣き出すジョー。

泣き上戸だったのね、実は。

ジョー：｢兄貴に会いたいよォー｣

お客、つられて涙ぐむ。

兄貴ってジョー、
兄ちゃん一緒に住んでるじゃんか。

なんでも悲しくなっちゃうらしいのね？
泣き虫ジョーくんてば。

こんな中で繰り広げられる、鉄板パフォーマンス。

週末のジョーのテーブルなんてちょっとした
ショーを見てるような盛り上がりよう。

ナイフをさばき、卵がレモンがエビの尻尾が宙を舞う。
自分もバック転しそうに身構える。(⇒もちろんしない)

にぎやかなこと大好きなアメリカ人らしい光景。

ジョー、今日も飲みすぎ注意報。

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