ユウ君パパのJAZZ三昧日記

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syoukopapa

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2006.11.03
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カテゴリ: 私の小説集
 「私の絵を見てもらえる?そんなに自信はないんだけれど。」

  いつもきっぱりとした口調の彩奈にしては珍しくちょっと控え目。一途な自信と漠然たる不安の交錯。この年代の独特の感情の揺らめき。僕の周りの妙に落ち着いてしまっているだけの、若さのきらめきを失った連中には全くない新鮮さ。まあ、彼らは生まれてから一度たりともそんな感情の揺らめきなどなく、死んでしまうかもしれない。つまり生きたことがないということだけれど。僕は彩奈の体から溢れる創造的な力とターナー好きという彼女の嗜好から、彩奈の描くだろう絵画の世界を想像する。フランク・ステラの精巧に計算された幾何的な構図。いや、カンディンンスキーの型に因われない自由な空間の広がり。

  僕は絵を見せたいと彩奈に言われたその朝自分の部屋でエスプレッソを飲みながら、想像の世界で遊ぶ。悪くない時間の過ごし方。彼女の澄んだイメージと僕に話してくれたことをいろんな風に組み合わせる。無限のバリエーション。強烈にきらめく美の世界を構築しては、一瞬にして破壊する。スクラップアンドビルドというこの作業に僕は熱中する。時間がいつの間にか過ぎていく。彩奈の言葉、体から湧き出るメッセージの持つ饒舌さに改めて驚かされた。

  「これなの。」彩奈が微かな気恥ずかしさを感じつつ、絵を差し出す。ちょっと、紅潮した表情。ごく僅かに震える細い指先。その指先が緊張のために青白く光った。

  「こういう色使いが好きなんだ。」青を基調にして、極彩色が大きな模様で交差する。形式、形状に因われない自由さ。大胆そのもの。批判好きの人にすれば、まとまりがないねと言われそう。既成概念から離れて、新しいものを生み出していくんだという意欲が力強いメッセージとなっている。その猛々しさに僕は圧倒される。人まねでない意志の強さ。僕好みの絵だ。

 「モチーフはHIP-HOPなACID JAZZなの。Ronny Jordan、Wes Montgomeryのギターや吉弘千鶴子のピアノをイメージしてもらえば、一番ピッタリ。絵を書くことに息詰まると、彼らの音楽を聴いてモチーフを再度チェックするわ。でも、本当は、逆に私の絵から彼らの音がイメージしてもらえるのが一番嬉しいなあ。」

  イントロが不安をたたえつつ、静かに始まる。聴くものはこの不安定さがいつまで続くのであろうかと一瞬、戸惑う。それを素早く打ち消すように、軽妙で淀みないテンポが取って代る。いわば、オシャレなMelody Line。たまらないポップさ。最初の不安定さが計算された媚薬となって、その音に酔わされてしまう。彼女の絵はACID JAZZそのもの。確かに、彩奈のこの絵からRonny Jordanの「Mr. Walker」が僕の耳に 微かに聴こえてきた。魅惑のJAZZ-HIP-HOP。

  「思わず身をまかしたくなる、軽妙さがあるね。矛盾しているようだけれど、しかも力強さがある。この軽妙さと力強さがほどよいバランスで、とても自然だ。Mr. Walkerが静かに聴こえてくるような感じだね。」

  「Wes MontgomeryのをRonny Jordanがアレンジした曲ね。そう、新しいHIP-HOPさが私の求めている世界。そんな感想を言ってくれた人は初めて。嬉しい。絵を見せてよかったわ。」






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最終更新日  2006.12.25 18:35:03


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