下流国際結婚トレビア~ン

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タヒロー

タヒロー

2008.10.25
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思えば

時間差で
相手しようだなんて、

私も罪な女だったわ――


一人目の男は、
午前中に約束してたアート。

初めて会う男だから、
アートが来る前に、

私もメイクしてって
考えてたのに、

「もしもし。お引越しのお見積りの件ですが、
10時から12時でお約束いただいてましたが、
少し早めにお邪魔してもよろしいでしょうか?」

って、
アートからの電話が
目覚し代わり。

アートは5分後に、
私のアパートのベルを鳴らした。

あぁ、せっかちなアート!


顔さえ洗ってないっていうのに!

仕方なく、
ラフな部屋着に見えなくもない
パジャマ姿で、

ルームメイトと一緒に、


ルームメイトも私も、
目ヤニをつけっぱなしでね。

対してアートは、
きちんとしたスーツに身を包んでた。

無防備な姿で、
きちんとした男の名刺を受け取るのって、

たとえるなら、
プールを一人だけ、
裸で泳いでいるみたいな気分?

新鮮な不安に襲われて、
なんだかちょっぴり興奮した。


アートは
私の部屋の
家具や電化製品を、
舐め回すようにチェックして、

誇らしげに、
見積りを叩き出したの。

アートったら、
私がすぐにOKする
軽い女だと思ってたのかしら。

簡単に首を縦に振らない私に、
アートは戸惑ってた。

そしてハッとしたように言ったの。

「……他にも男がいるんだな?」

NOって答えても、
誤魔化しきれないのはわかってた。

私は答えたわ。

「…いるわ。
あなたが帰ったあと、
私、彼らに会うの」

突き放した台詞の中に、
アートの誠意を試したいっていう、
策略も秘めていた。

案の定、アートの目に、
嫉妬の炎が宿った。

「今この場で俺を指名してくれたら、
この値段にする。
後から連絡を寄越すなら、
最初に言った通りの値段だ」

アートは駆け引きにでた。

あいにくと、
駆け引きする男は
好きじゃなかったから、

私もルームメイトも、
決してYESと言わなかった。

「……ふぅ。わかったよ。
…他にどんな男がいるんだ?
名前だけでも教えてくれないか?」

私は正直に、
アリオとアークの名前を告げた。

「そうか…。
…アリオには気をつけろよ。
俺とは比べものにならないくらい、
しつこいぞ」

アートは紳士的に捨て台詞を吐いて
去っていった。
スーツの膝元に、
安い絨毯の毛と、
ルームメイトの頭皮のカサブタをつけてね。


次の男、
アリオが来るまでには
時間があったから、

今度こそ
部屋をキレイにして、
私もメイクしてって
考えてたのに、

なんてこと!

私もルームメイトも
再び眠りに堕ちてしまった!


アリオが鳴らした
アパートのベルの音が、
目覚し代わり。

時計を見ると、
アリオを呼んでいた時間を
だいぶ過ぎていた。

「すみません。
遅れてしまって…」

アリオもスーツで
名刺をくれて、
家具を舐め回すように見て、
私とルームメイトには
目ヤニがついていて、

なんだか
デ・ジャヴュな気分だった。

アリオは若くて、
誠意に溢れた男の子だった。

ルームメイト曰く、
「ヨン様より優シイ感じがスル」。

アリオの弾き出した見積りは、
アークより遥かに安かった。

そして勘のいいアリオは、
私に他に男がいることもわかっていたの。

「僕は駆け引きとかしたくないんで…。
もしこの場で決めていただけたら、
この値段で上に掛け合ってみます」

そういうのを駆引きって
言うんじゃ…と思ったわ。


…アートの捨て台詞通り、
アリオは確かに粘り強かった。

真っ直ぐな目で、
私とルームメイトを見つめ続けた。


そんなアリオを、
うまくあしらいながら、
私は内心違うことを考えて、
不安に怯えていた。

遅れてきたアリオのせいで、
次に約束しているアークと、
鉢合わせしてしまうんじゃないかって。


不安は的中し、
アパートのベルは鳴ってしまった!

「……はい」

「俺だ、アークだ」


…部屋の空気が凍りついた。


「……すみません…。僕が遅くきたから…」

「もうチョット話キイテたら、きっと決めてたトモ」

「そうですよね。
次の方、今待たてますもんね…。
すみません…。僕が遅くきたから…」

アリオはさみしげに呟きながら、
帰り支度を始めた。

スーツの膝元に、
絨毯の毛と、
ルームメイトのカサブタをつけて立ち上がる
アリオが、
なんだか
可哀相になってしまって、

「ごめんなさい。
あとでTELするから、待ってて」

って、優しく微笑んで、
アリオを励ましたわ。

…あぁ、ついにドアのところで、
アリオとアークがすれ違ってしまった!


最高に気まずいったらありゃしない!!


「…今のアリオだよな?」

違う男を部屋に入れてたって、
最初に知ってしまったアークは、
なんだか冷たかった。

事務的に
家具を舐め回すように見て、
予算をきいて、
アートとアリオの見積りをきいて、

「…正直、太刀打ちできねーよ。
俺じゃおまえを幸せにしてやれねー」

って、
遠まわしにフッてきたの。

アークが
スーツの膝元に、
絨毯の毛とカサブタをつけて
出て行った後すぐに、

まだ間に合うかしらっていう、
不安に震える指先で、
ダイヤルを回した。

私にとって、
誰が一番大切な男だったか、
やっとわかったの――。

「もしもし」

突然の電話に、
アリオは驚いていた。

「あ、先程はすみませんでした。
アークさん、こんなに早く終られたん…」

「しっ。黙ってきいて、アリオ。
…さっき言ってた通り、まだ私のこと好き?
もし…まだ私に気持ちが残ってるなら、
付き合ってほしいの…。あの値段で。
ルームメイトも、
ヨン様に似てるって言って、あなたに夢中なのよ」

隣でルームメイトが、
「もうっ、ドウシテそういうこと言っちゃうノヨっ」
って、照れていたわ。

受話器の向こうから、
アリオの嬉しそうな笑い声がきこえてきた――


それからアリオは、
たくさんのダンボールを持って、
戻ってきた。

今度のデートまでに、
用意しておいてくれって。

ダンボール、全部使わなくても、
多いに越したことはないだろうって。

…あぁ、狭い部屋には多過ぎる、
40箱のダンボールたち!


…以上が、私に先週起きた出来事。


あれから徐々に、
アリオのダンボールに、
私は命を吹き込んでいる。

本や食器を詰められ、
生き生きとした箱の形となって、

アリオのダンボールは、
部屋の面積を占領していく――


踏み場のない、
危険なこの世界で、

生き抜いてみせるわ私……。

明日に希望がある限り――


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Last updated  2008.10.27 20:21:08
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