あたしはあたしの道をいく

2007.10.23
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カテゴリ: 本@浅田次郎
浅田次郎の本。




浅田次郎って人はずーっと小説家になりたかった人らしいんだけど、

そのデビュウの仕方が本人の思いとは違っちゃった人らしいのね。

意に反して、極道系の小説でデビュウしちゃって、ソレが売れちゃった。

ま、その極道系小説が面白いので仕方ないとはいえ、当然だよなあ、と思うけど。

で、極道系以外の初めての著作が、この本らしい。



『きんぴか』や『プリズンホテル』の極道物で名前が売れた後に、

コレを書いて世の意表をついたところに、

『蒼穹の昴』がばばーんと出た、という流れらしい。





だから、内容自体は全然『蒼穹の昴』とは関係ない。

極道系の、どっちかってーとライトノベルに近いような読み物から、

ずっしりと読ませる物(『蒼穹の昴』みたいなの)への移行期にあるもの、

って言う意味では、『蒼穹の昴』との繋がりは大きいものだろうけれど、

内容だけで言うなら、よっぽど『シェエラザード』の方が近い。

(「金塊」ってキーワードもあるしね)



後書きで浅田次郎本人が、「これは若書きだ」ってなことを書いてるんだけど、

それを読むと空恐ろしくなる。

「これで『若書き』って言うか!?????」って感じ。



確かに、『プリズンホテル』でちりばめられまくってたような、

ベタな笑いがちょこちょこと入ってる。



そういうのを読むと、早期の浅田次郎だなあって気はするけど、

それ以外はどこが「若書き」なんだか……。

怖いよなあ、プロ作家って。



にしても。



これ、良かったわよう。





旧日本軍がマッカーサーから掠め取った莫大な金塊が隠されている。

マッカーサーと旧日本軍の宝物を探せ!!

みたいな。



だけど、実はそんなのはどーでも良くって、

単なる小道具に過ぎないことが、読み進めていくうちに分かってくる。

そして、終わりに近くなるほど日本人としての血が沸く気がする。

日本人ってのが、どういう人種なのか。

その恐ろしさ。



そういえば日本って、しょぼっちい島国だけどアジア随一の先進国なのよね。

狭い国土で、石油みたいなエネルギー資源もないし、農産物だって自給できないのよ?

戦後の、ユニセフだの国連だのってのから憂えられてた敗戦国が、

高度経済成長でマンハッタンまで進出してるのよ。

本当に対等なのか、って言われちゃ疑問符が付くかも知れないけど、

あの敗戦が嘘みたいに、戦勝国の英米に対等に渡り合ってるのよね。

考えてみれば、それってすごいことなんだよね……。



イラクの問題でもしばしば取り上げられたけど、

日本ほど目覚しい復興を遂げた国は無いのよ。

朝鮮戦争とか、時代の後押しがあったことは否めないけど、

殆ど奇跡に近い、驚異的な回復だったと思う。

そのモデルケースとなる下地を、この本ではクドイほど念押しされてる。

占領軍にとってそれは、恐るべき素質だったって。



どーでも良いけど、後書きで触れられたスバルの「レガシイ」。

LEGACYが、「遺産」って意味だってことを、初めて知った。

レガシイとこの作が同時期らしいんだけど、背中がぞくっとしたわよ。

スバルのエンブレムは、零戦をイメージしてる……んだったっけ?

確か、レガシイって自動車業界に大きなショックを与えたんだよね。

で、それでスバルは回復した……んだったと思う。

零戦、戦闘機の誇りは今も自動車に受け継がれている。

敗戦国の、マトモに走る車さえなかった国の、復興がそこにある。

すごいよねえ。





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Last updated  2007.10.23 12:28:18
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