ACそれぞれ



 うちは典型的な「飲兵衛親父のDV家族」
 ご近所では結構有名な家族だったと思う。呑んで帰ってきて、夜中に怒鳴り散らすんだから、隠しようがないよね。

 母に掴みかかった父を何度も見ているし、何度も止めようとした私たち兄弟。

 離婚の話も出たし。
 親方(父の仕事は船大工)の家に、母と子供たちで逃げたこともある。

 けっこうサバイバルな毎日だった。

 で、そんな話を妹としていて妹が言ったのが

 「だから私はAC(アダルトチルドレン)なんだ。」
 「私は父の酔って暴力的な姿も、それに対する母の姿も見たくなかった。離婚してくれていたら、自分はこんな暮らしにくい生き方をしなくても良かったんじゃないかと思う。」

 確かにね・・・・ACの条件ぴったりの私たち。ネットでACのサイトを見れば、当然私にも当てはまる数々の項目。

 でもね、確かに暮らしにくいけれど、私は親を恨んじゃいない。

 そりゃあ離婚してくれたら平穏な生活が送れただろうし、ACにはならなかったかもしれない。

 でも、今のような生活は出来なかったんじゃないかと思う。

 離婚して母と子供たちの4人でつましく暮らしていたとしても、奨学金を受けていたとしても、高校を卒業して「進学したい」なんていえない状況だったと思う。

 妹と二人、希望どおりに進学できたのも、結局父が働いて得た給料を母がやりくりしてくれたから出来たこと。母は私たちの熱意に希望を託して「女に学問はいらない」という父を説得し、私たちを送り出してくれた。

 私たちも「自分で自分を誉めたい」と思う生活だった。学生生活を文字通り「楽しむ」人が多かった中、「私」を保つために捨てていった気持ちもたくさんある。

 そうして得た免許を生かし、職について、そして生涯の伴侶を得て家族が増えた。

 自分の希望はすべてをかなえてきた私たち。
 確かに暮らしにくい理由はACのためかもしれない。  でも。


 過去と他人は変えられない。


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