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あれが生まれて初のデート、だと思う。
まだ携帯どころか、うちには子機もなくて、
急な電話に驚いたけれど、なんだかんだ
言ううちに、会うことになってしまっていた。
彼は無口で、ひっきりなしにタバコを吸い、
隣を歩く私は、白い服に灰が飛んでくるのが
とても気になり。
家族で誰もタバコを吸わなかったし、
高校生だったので、おおっぴらに吸う友達もいなかった。
だから、タバコって、こんなに灰が飛ぶんだー、って
妙なことに感心した。
そして、話がはずむことなく
炎天下をぐるぐる歩き回っては喫茶店に入り、
また歩いては薄暗い喫茶店に入り、という具合だったので
お腹はじゃぶじゃぶしてくるし、外と店で明暗が激しすぎたし
暑さもすごくて、クーラーは効き過ぎていたし
なんだか、とてもとても疲れてしまった。
実は、いっとき好きだった(けれどあきらめた)人だったので、
ほんとうは
あれもこれも、いっぱい聞いてみたかった。
でも、太陽は容赦なく照り付けるし、疲れの目盛りは
うなぎのぼり。
だんだん、彼が宇宙人みたいに思えてきてしまって、
どんどん、うまくしゃべれなくなっていった。
とっても切なかった。
彼が、いったい誰なのか分からなくなってしまい
ほんとうに彼を好きだと思ってたのかどうかも
分からなくなった。
それもこれも、
暑さのせい、だったような気もする。
太陽も、まぶし過ぎた。
夏の終わりになると、胸がきゅっ、ってなるこの思い出が、
よみがえってくる。
あの切なさは、今も同じだ。
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