フィトンチッドの風香る



 二十四節気の「立夏(5月6日)」が過ぎ、日本列島は若葉が萌える季節到来。
 街中の人々はTシャツ・半そで姿で、楽しげ・軽やかになってきた。
 隣国中国では、初夏の頃に南または南東から吹いてくる、匂うような感じの心地よい風を薫風と呼び、唐の太宗の詩に「薫風南より来たり、殿閣微涼を生ず」という一節が見える。

 日本でも室町時代に新緑の香りにふさわしい「風薫る」という言葉が生れた。
 若葉の香りの成分は樹木が発する“フィトンチッド”という揮発性物質で、消臭・抗菌・防虫作用があり摩訶不思議な造化の妙に恐れ入る。人間に対しては大脳の働きを高めたり、ストレス軽減などの働きがあるという。
 さらに森林や田畑の新緑が人々の目の疲れを取り去り、気力を鼓舞し、胃腸の活性化にも役立つ要因の解明・研究が盛んに行なわれている。

鉢植の草花と造花で囲まれた中で、人の脳の活性化具合や目への影響の実証試験を行なった報告がある。緑に包まれた公園と車が多い交差点付近で、同じ運動を行ない比較した。本物の植物の方に効果があり、公園の方が被験者の脈拍の回復が60%早く、持続力は15%も増加したという。

このように人の健康に役立つ森の精気フィトンチッドの放出は、五月の新緑の頃が最も多い。

一日のうちでは、光合成によるCO2の吸収作用が活発な朝の10時前から午後1時頃が最大となる。晩春から初夏の野良仕事は紫外線防止に充分気を配り、昼の憩は近くの木立の発する精気の香りで安らぎ、午後に備えてリフレッシュしよう。

緑陰正に元気の源。


© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: