赤壁の戦いと風の予測



 三国志演義は、他に類を見ない世界的歴史物語「三国志」の講談調の一大活劇、英雄談で母国中国は固より、日本人にも長く愛読され続けている。

 その読まれ方や楽しみ方は人さまざまであり、両国でも時代毎に、解説本や注訳書にも名著が多い。正に、人生、政治、外交、戦争・戦略、経営の面から、時代の名文家の格好の教則本である。
 当事者で詩人・文学者としても良く知られた曹操は、「孫氏略解」等を著した。堂々たる内容から、第一等の人物と、近年は識者の評価が高い。

 日本人に最も人気のあるのが蜀の丞相・諸葛亮といわれている。
 曹操の魏と劉備・玄徳の蜀の大決戦は数度あり、
 いつも孔明の不思議な術が使われている。

 孔明は天文にも精通しており、祈祷に似た儀式を効果的に行い、
 風を読み自信満々の曹操に多いに一泡ふかせ、敗走せしめている。

 赤壁の戦い(208年冬)での蜀呉連合軍の連環の計の火攻めは、
 軍師孔明の面目躍如、最たる見せ場であり評価を決定付けた。

 決戦場赤壁は幻の大湖「洞庭湖」に程近い北東の地、鳥林。
 気象の研究から多いに興味深い。
 博学多才の孔明はこの時期で、こういう天候や空模様の時は、
 いつから風が変化する(必ず南寄りの風に変わる)ということを熟知していただろう。

 最新の気象技術なら、
 リアルタイムの実況値や天気図類で前線の接近と通過により風向が反転し、
 南東の風が吹き出し強まる時刻をずばり言い当てる確度は高い。
 テレビタレント紛いの軽い気象予報士に真似はできないこと。

 データと道具もない時代。
 只でさえ緊迫した現場で決断したことに価値があり、
 故に戦術として効果的で、敵と見方さえも畏怖させたのである。
 正確な観天望気の技術を完璧に身につけていたと推測すれば十分あり得る。

 権謀術数渦巻く戦場の重大局面で、
 道術を演出したクールさは、並居る武将にはない予測技術と度胸にあった。
 天才といわれる所以である。

 約1800年前の孔明である。
 人知の及ばない自然への恐れがあり、
 空気の色と息を感じる傑出した鋭い五感があった。

 興味の尽きない永遠の悲劇のヒーローである。

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