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風に恋して ~自由人への応援歌~
夜明け前 3章
平成7年9月26日
浩さんの転院が明後日と決定した。亀有にある東部地域病院への移動を医師より聞かされる。「この病院には充分な検査設備もないし、肝臓の専門家がいない。亀有には専門の医師チームがそろっているし、設備も良いのでそちらへ移って欲しい。しかし、亀有にいったところで何らかの効果が出るなどと、期待しないで下さい。何もできないことも予測されます。あまりにも癌が大きすぎるし、肝臓の表面全体に及んでいるので、いつ破裂するかとても危険な状態です。手術は、もちろん既に不可能ですし、抗癌治療もできるかどうか不明です。データと紹介状を送ります。あちらでは、まず、血管造影などの検査から入るでしょうが、治療手段が既にないとなったら、また、この病院へ戻されることになります。あちらは治療方針を決定することが主な目的です。」「積極的な治療ができないのなら、家に連れて帰りたいのですが。」「今は無理です。アンモニアが体内に非常に多く、それを排出しなければ肝性昏睡になって、お終いです。昏睡状態で再入院しても打つ手はないし、家に連れて帰るとそれを早めるだけです。」「食事療法をメインとして癌の治療をされている病院もあると本で読んだのですが。例えば、海外などではマックス・ゲルソン療法で、良い結果が出ているとも聞き及んでおります。そのような病院へは?」「そんなの大嘘です。医学でそんなことは認められていません。何で玄米で癌が治りますか。問題外です。」「それでは病院では、ただ単に死ぬ日が来るのを待つということですか。どんな治療をするのですか。」「対症療法しかないでしょう。癌そのものを治すことは、医学ではできません。くれぐれもあちらの病院へいったら、良い結果になるなどと期待しないで下さい。あちらの先生から家族の方とトラブルを持ちたくないので、その件を良く話しておいて欲しいと言われています。それにしても、病院に来るのが遅すぎますよ。4年前に発病したとき、既に癌はできていた筈です。その病院で見過ごしてしまったんですね。あまりにも癌が大きすぎます。2~3年でこんなに大きくなる筈がありません。今では遅すぎます。それにしても、入院する前日まで仕事に行っていたなんて、信じられません。あんな身体で仕事をし続けていたということに驚きますし、本当にそのことに対しては敬服しますよ。」医師は見事に患者を投げ出した。そして責任追及の道も封じ込めた。「ありがとうございました。」とても丁寧な、そして冷たい説明で、医療は幻想でしかないということを再認識することができました。
転院しよう。浩さんもここの病院、および、医師に対し、不信感を持ち苛立っている。次なる肝臓専門チームが何をやってくれるか見てみよう。私独自のヒーリングは続行する。家に連れて帰れる段階まで、毎日病院でこっそりと、そして一心に、神との会話をトライしながら、ヒーリングをやり続けよう。ひいきめかもしれないが、ヒーリング中、彼は必ずぐっすりと熟睡している。今日も「眠れない。痛い。」と苦しがっていたが、私のヒーリングが始まるとすぐにスースーと穏やかな寝息をたて始めた。約1時間後、合掌して、ヒーリングを終了すると、昨日同様、その目をパチッという音が聞こえるほどはっきりと開け、「眠っていたのか。」と言う。私の都合の良い思い込みだけではない筈だ。何かが、私の身体から浩さんの身体に流れている。浩さんの身体に安らぎを与えている。脳波の同調が起きている。本によると、この時、自律神経系統が調節され、免疫機能を高める。そして、自然治癒力が強化される筈である。それを信じよう。「私は勝つだろう。自分を信頼することで乗り切っていく。」
今日も昨日同様、少し元気だった。夕食を少しだけだけれど、食べてくれた。二日間、体調が良さそうな日が続いたのは、入院して以来初めてのことだ。医師にそのことも告げてみたが、「昨夜と今朝、鼻血が出ています。多少の違いがあるように見えても、変化はありません。むしろ、入院時より悪化してきています。」そうです。私は医師の最後の言葉―入院時より悪化してきています―を強く感じています。入院してから急激に浩さんの身体は、1日1日と悪くなりました。医師の庇護下に入ったという彼の安心感、気の弛みからでしょうか、入院したその日から急斜面を転がり落ちていくようです。そこに私は「意志」「気力」「意識」の意味を再度受け止めていました。だからこそ、私は闘います。自分自身と、そして浩さんの「自分で治すんだ。」という強い意志力を呼び起こすこと。私は勝つ。私の体内に在る神と合一し、奇跡を起こす。私は信じる。自分の内に在る神を信頼し、ヒーリングを毎日続けていく。
平成7年9月27日
今朝、本谷氏に転院の件、電話で伝える。先日、見舞に来られたとき、私の話す神の存在、人間の持つ不思議な力、目に見えない諸々の存在について、彼は同意して下さった。今日、「僕は信じるよ。あなたのヒーリングの力を信じる。だから、やり続けなさい。何かが起きるかもしれない。あなたにはその力がありそうな気がするよ。」との言葉を頂く。
明日、転院のため、散髪の外出許可がおりる。凄い顔つきの浩さん。入院してから今日までの自分の苦しみは何だったんだ。専門の医者がいないのなら、もっと早く転院させるべきじゃないか。何もしないで、ただ苦しませて、一層体調を悪くさせて、追い出すのかと、不平、不満、怒りを鎮めることができない様子。やせ細り、辛さ、恨みのせいだろうか、身体中から鋭い針を突き出し、触れるもの全てを傷つけてやるといった感じの硬さがある。散髪後、病院へ帰ろうとすると、「イ・ヤ・ダ!」と言う。鮨を食べると言い張る。夕食用に作った玄米粥にすりごまを混ぜたものと、梅干しを持ってきている。「病院へ帰ろうよ。私の愛が山盛りいっぱいの、玄米粥を作って持ってきたんだよ。食べてみたけど、とっても美味しいよ。」「イラナイ!!」まるで反吐が出ると言わんばかりに顔を歪め、そっぽを向く。一生懸命、あなたの身体の回復を願い作ってきたのに、その態度はないでしょうと一瞬ムッとはしたものの、もしかしたらこれが最後の外食になるのかもしれない。明日、生命の火が消えても、誰を責めることもできない状態だから、そんなに鮨が食べたいなら食べさせてあげようと思い直し、途中の鮨処に入る。ネタが少なく、残念ながら美味しくない。それでも浩さん、卵焼き、カンパチ、アジ、カニなどを食べる。
病院に戻るとすぐに点滴が始まる。塩の擦り込みから始まる私のヒーリングセッション、1時間半。肝臓の大部分を喰い荒らしている癌細胞が消え、自然治癒力の働きにより、肝細胞の新生をイメージして神の寛大なる愛の光を希う。
『母なる地球の底の底、何億年にもわたり真っ赤に燃え続けるマグマがある。その猛々しいマグマの生命力が、私の身体を通して浩さんの体内に注ぎ込む。浩さんの体内は、神の寛大なる愛の光でいっぱいに満たされる。その神の光に触れて、全ての細胞が甦り、本来の機能を取り戻す。全ての臓器が甦り、本来の機能を取り戻す。
全細胞、全器官が一体となり、チームを作り、浩さんの身体の修復がダイナミックに始まった。異物を取り囲み、体外排出するチーム、新しい細胞を新生するチーム、見事な調和でその仕事が続けられ、自然治癒力の歌が響き渡る。
神よ、感謝いたします。肝臓に巣喰う癌細胞が小さく小さくなっていきました。そして、全て消え去りました。新しい肝細胞がどんどん作られ、肝臓が甦りました。
ありがとうございます。浩さんの肉体が甦りました。生命の火が赤々と燃え立っています。そして、魂さえも浄化され、過去の業が洗い清められました。魂の進化が、今始まりました。
神よ、あなたの寛大なる愛の意志に心より感謝いたします。』
このメッセージを、右足裏を右掌で包み、左掌で右足首をつかみ、一心に念じます。次に足首に右掌を、足の付け根、リンパ節部分に左掌を置き、同じメッセージを心に繰り返す。右掌をリンパ節に、左掌を第二チャクラに、そこまで終ると、次は左足に移り、同じことを繰り返す。両足が終ると、右掌を第二チャクラに、左掌を第三チャクラに、右掌を第三チャクラに、左掌を第四チャクラへと順次、第七チャクラまで繰り返し、最後は第七チャクラ(頭頂)に両掌をのせ、繰り返す。全部で12回、私は祈りのメッセージを繰り返す。大抵、この頃までに彼はぐっすりと眠りに入っている。
第一段階が塩湯での足浴と足裏への塩マッサージ。第二段階がチャクラへのヒーリング。そして、第三段階として、両掌を下に向け、浩さんの頭の部分から胸の方へと、順次チャクラを意識しながら、オーラヒーリングに入っていく。両掌は浩さんの身体から30cm~40cm上に掲げる。この時、私の両掌中央部は、彼の身体から突き上げてくる熱線にジリジリと焼かれる。足裏へもその熱線は広がり、私の全身が焼かれている感覚に襲われる。体内にムア~ッとした炎を感じ、汗がにじむ。体表面のあちこちに、針で刺されるような痛感が走り、腕全体には痺れが断続的に走る。
『私の第一チャクラから赤い光が地表に伸びていく。その赤い光は地中に入り、マグマに行き着く。母なる地球の、熱く、赤い生命力を吸い上げて、私の身体を通し、浩さんの身体は赤い赤いオーラで包まれる。私の身体の第二チャクラ、そこから橙の光が流れ出る。橙の光が浩さんの身体を包みこむ。第三チャクラの黄の光、私の第三チャクラから流れ出て、浩さんの身体全体を包みこむ。私の第四チャクラから、愛の光、緑の光が、鮮やかに流れ出て、浩さんの身体を包みこむ。第五チャクラからの青い光、青い光が浩さんの身体を包みこむ。(この辺りから私の身体は全身痺れ感に包まれ、身体から何かがはみ出して行き、頭蓋骨の境界線がなくなり、皮膚感覚も消え失せ、自分の身体と空間が溶け合う。空間と私が融合し、一体となる。)第六チャクラからの藍の光、私の身体から流れ出て浩さんの身体を包みこむ。第七チャクラの白い光、大きく大きく広がって、浩さんの身体を包みこむ。(この時には、頭頂から足元にかけて円柱形の白い光が、私の身体の中心を貫いている。)神よ、感謝します。浩さんの全身は、七つのオーラ全てに包まれ、守られています。私の身体から発する七つのオーラが、浩さんのオーラと合体し、一つの大きな光となり、私と浩さんの身体をすっぽりと包み込んでいます。私達は、一つの大きな光となり、ピラミッドの内部で祈ります。そのピラミッドの上方に、金色に輝くもう一つのピラミッドが見えます。その黄金の光り輝くピラミッドが、静かに私達のいるピラミッドの方へ降りてきます。今、二つのピラミッドは重なりました。私達は、光り輝くまばゆいばかりのピラミッドの内部で、神の愛を受け、癒されていきます。寛大なる愛の光に感謝します。私は神の意志に従います。私の心と魂は神に委ねます。私は人生で最上の悦びを受け取ります。私は人生で最上の目的、神の意志をやり遂げます。私は心の底より神の存在を信じます。』
両掌を合わせ、合掌。神の寛大なる愛の意志に、深く深く感謝します。何冊かの本を読んでの自己流ヒーリングセッションがこれで終ります。毎回、合掌して目を開けると、浩さんも穏やかに目を覚まします。これで良いのか悪いのか、尋ね、教えを請う人とてなく、ただ毎回、浩さんの身体に、微かながら良い変化が感じられます。間違っていようとも、これでいいんだと、自分を励ますのみ。
今日は、とっても疲れました。夢で見たあのエネルギーの枯渇状態そのままです。塩湯に入ってエネルギー充電をしなくてはと思いつつも、足が風呂場まで進みません。ともかく、横になりたい。眠りたい。でも理恵の受験勉強をスタートさせたばかりなので、何とか午前1時まで付き合う。もう駄目。寝ちゃおうとベッドへ。眠りたい、眠りたい、眠りたい……。よ~し、もうやっちゃおう。起き出して、正心調息法「浩さんの身体から癌が消えた。」のメッセージを25回繰り返し、瞑想。結局、眠るのは午前3時になる。今、とても大切なとき。ちょっとの油断が命取り。後で悔やむより、今の辛さを耐える方がマシ。浩さんの生命力を取り戻すことが第一優先でやり抜こう。
平成7年9月28日
退院手続きを済ませ、タクシーで転院先の東部地域病院へ行く。今までの病院とは打って変わって、明るい光が溢れている。嬉しくなった。テレビや映画に登場してくるサナトリウムの感じ。どこもスペースがたっぷりとってあり、歩いている人の数が少ない。病院からの紹介状がなければ診てもらえないと聞く。地域で手に余る病人のみを送り込み、医療の方針を決定する場所で、最高の頭脳集団を医師として抱えているという説明を受けてきたけれど、そんなことより、私にはあのごみごみとした喧騒の場から抜け出せたことが、何より嬉しかった。看護婦さん達も教育が行き届いている感じ。案内された病室は、ナースステーションの隣。二人部屋のようだが、ベッドは一台。窓は大きく、光が踊っている。広く、明るく、清潔。何とか環境の良い個室に入れてあげたいとの想いが通じたのか、この部屋は私の想いを上回る安らぎの部屋。だけれど、ここは明らかに緊急患者用病室でもある。病院の素晴らしさ(?)にウキウキする心と、「やっぱり。」と重くふさがる心。ここが浩さんの死に場所なの?
担当医師に呼ばれる。若く、知的で凛とした自信に満ちている医師の言葉は、簡潔で短い。断層写真を全て見せられ、死の宣告。「既に肝臓の大部分は癌に犯され、表皮をも破壊して癌細胞は飛び出しています。手術して切り取るという第一の方法は不可。第二の方法は造影剤を入れ、肝臓に血液を送り込む血管に、詰め物をして、癌細胞への血液供給を止め、同時に抗癌剤のみを注入する方法がありますが、その為には残りの肝細胞が生命維持できるだけの力が必要です。ご主人の場合、その残りの肝細胞も既に肝硬変となっているので、肝機能が期待できません。肝不全となり死を迎えます。ですから第二の方法も不可です。第三の方法は末期治療です。栄養を点滴で与え続け、痛み止めでその時が来るのを待つ。この第三の方法しかないでしょう。一つだけ検査をしてみますが、2~3日で決定となります。今週中に結論が出ますので、元の病院へ戻ってもらうことになります。この病院に居続けることはできません。アメリカのように死を迎える心の準備をするホスピスのシステムが日本にはありません。今日にもその時が来るかもしれませんが、念のためお伝えします。僕は尊厳死を大切にしています。呼吸が止まりましたら、その時点ですべての医療を中止します。いたずらにに管をつけて延命させるより、人間として人間らしく旅立たせたいと考えています。冷たいようですが、呼吸の停止が起きた場合、そのままとしますので、前もってご承知おき下さい。それと、これも僕の考え方ですが、患者には告知した方が良いと思っています。但し、これはご家族が考えることです。ご自分で良く考えて、後悔のないようにして下さい。既に何人もの患者とご家族を見てきましたが、どちらかというと、告知しない方が良かったというケースの方が多いように思われます。僕は今日、初めて患者さんと逢ったばかりですから、ご主人に伝えるべきかどうかわかりません。あなたが決めて下さい。ご家族、ご親戚にはすぐに話した方が良いでしょう。あなたにはその時居てもらいたいので、病院に泊まってもらうことになるでしょう。」
感情を出すことなく、必要な事項を必要なだけテキパキと語る医師の姿から、全く希望のないこと、そして浩さんの生命は長くてもここ数日間しかないことを知らされる。
わかっていた。私の身体は医師から念を押されるまでもなく、9月11日入院したその日、「浩さんの生命は1ヶ月」というメッセージを受けていた。なぜあの時1ヶ月と感じたのかわからない。誰から言われた訳でもないのに、「浩さんの生命はあと1ヶ月」の意識が唐突に私の身体に刻印されたのだ。ただ、その意識を否定し続けてきた。形のない澱のような、暗い意識雲、悪魔のように赤い舌を出す。心の動揺を無理にも押え込む。「全く医療の余地がなく、ただ死ぬのを待つだけでしたら、元の病院へ返したくありません。家に連れて帰ります。」「その方が良いと、僕も思います。家族と共に、家族に囲まれて旅立たせてあげることがベストですが、問題があります。栄養剤を入れ続けねばならないことと痛みの問題です。素人では不可能でしょう。それに、家族の苦しみは大変ですよ。それでも覚悟して自宅ケアーをあなたがやると決めるなら、ケースワーカーを探してみても良いですが、日本にはほとんどそのシステムはありません。」「その時は是非お願いします。辛くとも私は家に連れて帰ることを選びます。」泣くまいと心を目一杯引き締めていても、勝手に涙が出る。喉が詰まる。
医師に少し感情が湧いてきたのか、最後に彼は希望を遠慮がちながら口にした。「万に一つの希望、可能性はご主人の自然治癒力が活動を始めることです。ほとんどそれはありえませんが、全く希望がないということでもない。万に一つですがね。」私はその万に一つの可能性を信じ、入院以来ずっとその道を模索しています。それを実行するのみです。
医師との会話が終っても、私は隣の病室へ入れない。気持ちを入れ替えねば入れない。トイレへ行く。顔を洗い、鏡とニラメッコ。笑ってみたり、髪を指で何度も撫で付ける。明るい表情ができるまで、自分に微笑を送り続ける。両手で頬をポンポンと叩き、「よ~し。私は元気だ。」と弾みをつけ病室へ。浩さんの顔といわず、身体全体から死の臭い、死の姿がかいま見える。転院という行動が、彼の体力を消耗させている。顔色はどす黒く、くっきりと黄疸が出ていて、目も真っ黄色、最悪の段階に来ていることが、どんなに否定しても、その身体全体で語ってくる。本人は切れば治ると思っている。この場に居ることに耐えられず、「今日はどうしても行かなければいけない所があるので、これで帰るね。明日は理恵の高校説明会が夕方まであるから、夜来るね。」と転院の手伝いのためついてきてくれた知恵さんを急かして病室を後にする。もっといて欲しいという彼の表情に目を背け、まるで能天気のお気軽女房然として外へ出る。
亀有駅前の喫茶店に入る。知恵さんも私も病室を出てから口を開かない、開けない。言葉を発すると、私は自分をコントロールできないだろう。彼女は黙って私の心の準備が整うのを待ってくれている。「あ、の、ね。」鼻が詰まる。喉が詰まる。それでも自分の感情を殺し、殺し、詰まりながらも一部始終を話す。涙が静かに頬を伝い続ける。知恵さんも目を真っ赤にして声を殺し、共に二人で泣き続ける。今夜はどうしても山手の母と毅司に電話しなければいけない。毅司には明日か明後日の飛行機を取らせよう。山手の母は明日来るだろうか。「お袋に知らせるのは最後の最後、最悪のときでいいよ。」と言った浩さん。お母さんが来たら自分の状況を知ってしまう。修羅場が強引に脳裏を焼き尽くす。今夜にも病院から「すぐ来て下さい。」の電話が入るかもしれない。母に何と切り出そう。体内に不気味な暗雲が渦を巻き、広がっていく。知恵さんにも覚悟してもらって協力を頼む。
私にできることは他にないのか、心を落ち着かせて考える。そうだ、津留さんに会おう。「病気はほとんど、悪霊のせいだよ。近藤宏次朗ならその悪霊を吸い取ってくれるから、病気なんか治っちゃうよ。」との津留さんの言葉が心に反響した。何でもやってみよう。どうしても近藤さんに連絡を取り、万に一つの可能性をやってみよう。元の病院ではあまりに狭くて駄目だったけど、幸いなことに今日から病室は広く、そして個室になっている。隣はナースステーションだけれど、何とかなるだろう。まるで願ったり叶ったりの病室だ。近藤さんの神霊治療、私の夢に現われた導師は誰なのか、今もって不明だが、私の導師が居る筈だ。近藤さんに会おう。知恵さんと別れ、私はそのまま九段下の事務所に向かう。電車の中、涙が止まらない。両目にアイマスクのようにハンカチをあてがい、心の動揺を押し隠す。
九段下の事務所には山口さんと先日会った神社の波動調整をするという持丸青年がいた。来意を告げると近藤さんは今、連絡がつかないという。「僕がやります。僕にやらせて下さい。僕、行きます。」唐突な声。持丸青年が「さあ、どこですか。今からすぐ病院へ行きましょう。神が僕にやれと言っています。」変な言い方だけれど、「あなたもできるのですか?」とおずおずと聞いてしまった。「近藤さんの方が格が上だけれど、神事はすべて二人で一緒にやっていますから。」と山口さん。何ともはっきりしないが、「僕、最近ヒーリングパワーが上がりましたから、大丈夫です。任して下さい。シヴァ神を先日ヒーリングしましたよ。僕、病気治しが大好きなんです!」やたら元気で、軽くて、明るい少年のような青年を見つめる。「近藤さんじゃなく、今日、この場に僕がいるというのは、僕の仕事だということなんです。神が僕に与えた仕事ですから、大丈夫です。近藤さんでなければならないとしたら、今日、この場に神は僕を呼ばなかった筈です。」
何とも言いようのないシナリオになってきたが、屈託のない威勢良さに引きずられるようにタクシーに乗りこみ、つい先程出てきたばかりの病室へ戻ることとなった。車中、青年は自己の波動を上げるべく瞑想を始めた。私も瞑想に入る。彼の波動が私に伝わってくる。最近、神社などへ行くと、掌に波動を感じたりしていたが、それよりも遥かに強く、私の身体全体が大きく彼の波動に包まれる。浩さんにこの青年のことを何と説明しよう。もし、看護婦さんが来たらどう言おう……。ともかく、流れに任せよう。今は何も考えまい。
病室に入る。「今日は。僕、持丸という者です。」深々と頭を下げて元気良く自己紹介する青年は、たったそれだけを快活に言うと、すぐにヒーリングに入っていった。きょとんとしている浩さんに、私は何の説明もしなかった。説明をしなかったというより、持丸さんの動きがすぐに始まったので、何も言えなかった。浩さんは不思議そうに、時々目を開けて彼の動きを見たり、眠ったりで、一言も言葉を出さなかった。身体の辛さもあっただろうが、ともかく持丸さんを受け入れてくれた。同室に居る私の手、足、身体に持丸さんの波動が入ってくる。掌、足の裏がズキズキと燃え始め、身体の境界線が消えていく。時折、浩さんが足を動かす。ピクッ、ピクッと足指が痙攣している。何かが起きている。何かを感じている。私も一緒に瞑想し、癌が消えていく光景をイメージする。
約1時間、青年のヒ-リングが終った。浩さんは額にグッショリ汗を吹き出している。「熱い、熱い。足が燃える!」と布団を跳ね除ける。夕食が配られる。「どうする?食べられそう?」「うん。食べてみる。」不思議な出来事に私は目をみはった。カレーライスと野菜サラダを浩さんはすごい迫力でガツガツと食べ始め、見事に皿の上のもの全てを食べ尽くした。私も青年も呆気に取られる。今日の昼まで、食事には一切手をつけず、箸さえ持とうとしなかった人とは思えない。その食べ方は健常者。顔色も心なし良くなっている気がする。「寒くて寒くてたまらなかったのに、今は熱いよ。身体中が熱い。半袖のパジャマを買ってきてくれ。」これが浩さんからの言葉。足の裏が妙に白く、冷たく、血流の少なさをはっきり示していた先程までの身体に、どうやら血液が音を立てて流れ始めている様子。足が熱い、足が熱いと言って額から美しく輝く汗の粒を吹き出している。「す・ご・い!」目の前で起きた現象に、私は言葉を失っている。「手応えがあります。今、幣立の神、地球の中心を司る神がここにいて、その神がヒーリングをしました。僕がやった訳ではありません。僕は身体を貸しているだけです。大丈夫です。もうすぐ退院できますよ。回復しますよ。それにしてもすごい食欲ですね。」信じているけれど、信じられない。嘘のような現実の出来事。病室の壁に近藤さんの手による御札を貼って、邪気が再度浩さんの身体に入り込まないようにと、腕時計にガード役としての波動を与えてくれた。キツネに騙されている気分ながら、私の心に再び希望がやってきた。私は勝てるかもしれない。もう少し様子を見よう。母と息子への連絡はもう少し待ってみよう。
To be continued
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